王太子殿下の告白 10
「私のペンが落ちていたのもサンジェスタ様の座っていた足元近くでしたわ」
「だからと言って、彼女が犯人と決めつける訳にはいかな。証拠固めしないと、言い逃れされるから」
「サンジェスタ‥‥」
苦い顔をするグレン様は、少し暗い表情。
「グレン様、どうかしました?」
耳を押さえ顔色が悪くなって震えていたので、グレン様に声をかけながら耳を押さえている手に自分の手を重ねて治癒魔法をかけた。
「耳の奥底が痛いのですね?」
「すまない。サンジェスタと聞くと‥‥今みたいに痛むんだ。今のは、治癒魔法?」
「根本を治す魔法ではないけれど、ロナルドお兄様が得意なリラックス魔法です」
「幾分か、痛みが和らいだ‥‥それ‥‥は?」
「リーナ様?そのゆ‥‥!」
彼らの視線の先に、王太子印の入った指輪が出現している事に気が付いた私が手を引っ込めるよりも早く、ハニエル様とグレン様が私の足元に跪いた。
片膝を立て、臣下の礼をとる二人にアタフタしていると、レインとアッシュに『不用意すぎます』と怒られてしまった。
「リーナ・パステル様、よろしいでしょうか?」
「えっ、は‥‥い?」
しどろもどろになってしまうのは、仕方ないと思う。でも、臣下の礼をとった二人に失礼な事はしたくない。
「はい」
もう一度、しっかりと応えると、ハニエル様は私のスカートの裾にキスを落とした。
「私、ハニエル・ウェスティは、臣下としてエリク王、アルフレッド王太子殿下に心から仕え、王太子印の指輪を持たれるリーナ・パステル様に、新たに親愛と臣下の忠誠を誓います」
「私、グレン・ロードライも、臣下としてエリク王、アルフレッド王太子殿下に心から仕え、王太子印の指輪を持たれるリーナ・パステル様に、新たに親愛と臣下の忠誠を誓います」
レインが手を差し出すようにジェスチャーをしている。
その通りに、手を差し出すと、ハニエル様が指輪にキスを落とし、グレン様もキスを落とした。二人の誓いが終わると、自然に消えてしまう王太子印の指輪。
「驚かれるのも無理ありませんね。王太子印の指輪は上位貴族の直系なら誰もが知っている事ですが、女性には伝えられていないのです。グレンは次男ですが、私に習って誓いをたてたのでしょう」
女性同士の熾烈な争いを避ける為に、王太子印の指輪の話は一人にしか話せないという。不特定多数に話すと、その場で記憶が抜け落ちるらしい。誓いを立てた者同士ならば話せるという制約がある不思議な指輪なのだそう。
例外として、近衛騎士や魔法士に関して、花嫁候補の護衛に着任した者だけ教えられるという。その話を聞いて、私が知らない筈だと変に納得してしまった。
「ある意味、今ので、耳の痛みが吹っ飛んだみたい」
「せっかくアッシュが触れない様にしていたのに、リーナ様から触っちゃうから」
「レイン、今夜のご飯は造血豆ゼリーにしておく?」
物凄く嫌な顔をするレインを見て、皆が肩を揺らす。
「リーナ様、ぞうけつ豆って何ですの?」
一人だけ分からない顔をするブリジットが聞いて来た。その横で、嬉しそうにエドワード殿下が食べる?なんて聞いている。
「ブリジットにはキツイから却下ですわ、殿下」
後から、アッシュに説明してもらったブリジットが、目をキラキラさせていたのは見なかったことにしようと思う。まさか、ブリジットも大丈夫な方かしら?
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