親友と悪意と聖属性の水魔法 6
「ブリジット様、その痛みの原因を取り除きますね」
焦点の合わない瞳に私達は映っておらず、痛みを堪えている身体が小刻みに震えている。
魔力回路を視たら、聖属性の回路を持っていたお陰で大事に至らなかった事が分かった。彼女の持つ聖属性が悪意の浸潤を食い止めていたからだ。
腕の落雷の痕には、今も悪意が範囲を広げようと攻防が続いていて痛みの原因になっている。
どうして分かるかというと、聖属性の魔力回路の流れが腕の方に集中していて、黒い悪意を押しやっている様に見えたからだ。
しかも、その悪意のモヤ自体が広がろうと聖属性の力に抗っている様にも見えて、攻防という表現になった。
失敗は出来ない。するつもりもないけれど、ブリジット様が痛みを感じている限界の状態で、負担を増すような失敗はしたくない。
そう思うと、身体に震えが走った。
怖い。
家族も知り合いも多くの人を治してきたのに、初めて恐怖が心に芽生えた。
「少し落ち着きませんか?」
「レイン‥‥」
「ハチ精霊様が見ていますよ」
彼の視線の先には、私の肩に乗った水属性のハチ精霊様が首を傾げている。
「ごめ‥‥レイン。早く助けたいのに‥‥力を使う事がこんなにも怖く感じるなんて‥‥」
焦る気持ちで魔法行使をしてはいけない。これは学院に入った時に教えられた。魔力暴走や被弾の原因になるからだ。
友達の辛い姿を見て平常心を失うほど、私は正常な判断が出来ていないのかもしれない。
「聖属性は私に無いものだったの。酷い状態のブリジット様にいきなり行使するのは‥‥」
レニが私の身体を抱きしめて、背中をポンポンと掌で優しく叩いて落ち着かせてくれた。
「大丈夫ですから‥‥、落ち着きましょう、リーナ様」
レニの声に力が抜けていく感じがした。その横で私に視線を合わせて微笑むレイン。
「怖いですよね。でもリーナ様はアッシュを回復させ、リアの目を治した。成功しているんですよ」
ちゃんと段階を踏んで行使されていたと、レインが勇気づけてくれた。2人の後押しで、徐々に恐怖心が和らいでいく。
人間って生き物は、存外に自分の事は見えていないもので、此処一番という時に心も体も足も竦むものなのだと思い知った。レインとレニが共に行動して支えて、見えていない自分自身を見ていてくれる。
この2人が大丈夫と言っている自分を信じようと思った。
「レイン、レニ、今から治療魔法を行使するから、何が起きても支えていてくれる?それと、髪留めのハチ精霊様を預かっていてレニ」
「分かりました。レニ、交代しよう」
「ではハチ精霊様は此方に。リーナ様、兄の方が驚かずに支えきってくれそうなので交代します」
レインによろしくと伝えると、彼は私の後ろに立った。
「リーナ嬢、私達も居る。レイン、何か連携をとらなくてはならないなら、君が私達に指示してくれ」
横を見ると、回復したアッシュ様とリア様が控えていた。
「レイン、何かあったら皆で対応してね」
お願いをして私はレインに寄りかかり、聖属性を開放して自分の中の属性に語りかけた。
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