親友と悪意と聖属性の水魔法 2
「パステル様、回復されたのですね!」
「ごきげんよう、ご心配おかけしました。もう大丈夫ですわ」
「パステル様、これ今までの授業のノートです。良かったらどうぞ」
学院の教室に入っていくと、クラスメイトが寄って来た。身を案じてくれた方、ノートを取ってくれた方など様々だ。
倒れてから1週間は経っているけれど、私が参加できなかった授業は進んでしまっている。
それでも、学院の先生方は、掻い摘んで授業内容のあらましを授業の初めにしてくれた。だから、今日1日でほぼ抜けた授業の穴の部分が分かった。
「来週は精霊契約か妖精契約を行いますからそのつもりでいて下さい。自身の主属性の精霊様や妖精と、契約を結ぶのですから」
この世界の精霊の概念は、前世の妖精や精霊の概念とは全く違う。
確か、前世では万物の自然に宿ったエネルギーを精霊と言っていて、その精霊が実体化したものを妖精としていた。
この世界の精霊様の考え方は、根本的に違う存在で上位に位置している。精霊様は実体の有無に関わらず、在るもの。妖精は人間に近しい存在で在るもの。力の根本が精霊様の方が大きい。
「楽しみですわ!パステル様は水属性が主でしたものね」
目をキラキラさせて、セレスト・アシャール伯爵令嬢が話しかけてきた。
「アーシャル様の主属性は木属性でしたね。来週が楽しみですね」
ハチ精霊様を知っている今では、木属性が主属性だという彼女を羨ましく思ってしまう。
「パステル様、どうかセレストとお呼びくださいませんか?」
「ありがとう。では私はリーナと呼んで下さいませ、セレスト様」
貴族で名前を呼びあう事を許すのは親愛の証。だから、彼女とは友達としての名前呼びを了承した友となったのだ。
「あの、リーナ様。朝の件ですけど、これを‥‥」
そっと本の下から渡された数枚のメモの中の手紙。ありがとうと受け取って教室を出た。
そう、今朝の事だ。私がブリジット様の事を尋ねても、言葉を濁して誰も教えてはくれなかった。
唯一、頼みの綱のアンジェリーナ様は家の用事でお休みを頂いているらしく、不可解なこのクラスメイトの対応が前世の問題行動と似ていて嫌な気持ちになった。
セレスト様のメモに挟まれた手紙の内容を見て、私は彼女と行動を共にするべきだったと後悔した。
「リーナ様、どうかなされましたか?」
「レニ、今日は研究所ではなく、ブリジット様の所に行くわ」
「わかりました」
魔力の暴走は本人の意思に関係無く起こってしまうもの。
そして、被害者が加害者を責めることも多々ある。けれど、今回は2人とも無傷の結果だったのに、何故、ブリジット様がクラスメイトから責められるのか?
当事者以外は外野だし、口出しできる事でもない筈なのに。
「来週は大切な精霊契約の授業。こんなクラスの心理状況で契約なんてできる筈もないでしょうに」
「リーナ様、リアとアッシュに魔法で連絡を取りました。お部屋にいらっしゃるそうです」
「分かったわ。それと、レイン」
「研究所には行けないと連絡しましたよ。夕飯もちゃんと用意してあります」
流石、仕事の早いレインとレニ。言うまでも無く先に動いてくれている。卒なくこなすスマートさに、ドキリとしてしまうわ。
寮へ向かう魔道馬車に乗ってから、2人にセレスト様から預かった手紙を見せた。
「2人とも、これを読んでみて」
「何ですかこれ?!冗談ですよね?」
「多分、これは実際に起きた事とお考えなのですね、リーナ様」
冗談ではない事が分かり、レインの眉間に皺が寄った。近衛騎士の彼が嫌悪するほどの事が書いてあったからだ。
静かな車内に外の喧騒が、嫌なくらいに響いている。
「ルーバン子爵令嬢は無事なのでしょうか?」
「レニ、それを確かめに行くのよ。もしそんな事態なら、私は自分を許せない‥‥」
それ以上は言葉が続かなかった。2人から視線を逸らすように窓からの景色を見つめて、怒りと悲しさに涙した。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




