親友と悪意と聖属性の水魔法 1
「良かったわ、本当に。眠られていた時は分からなかったしから」
授業復帰の前にララ・トーチネス先生に3日間の看病のお礼と、報告が遅れてしまったお詫びを伝えた。王太子殿下から直接連絡が届いて、そのまま出向いてしまった事も含めて差し障りのない部分の報告をした。
「お陰様で、アルフレッド王太子殿の寮の執務室で、魔力測定装置で検査して頂きました。ブリジット・ルーバン子爵令嬢と私、どちらも属性や魔力値に変化はありませんでした」
「ルーバン子爵令嬢は回復されたと聞きました。良かった、貴女も彼女にも異変が出なくて」
「ええ、良かったです。実はお部屋に閉じ籠っていらっしゃると聞いて、護衛の方にお願いしてブリジット様と一緒にすごせるようにして頂いたのです。この様な時は、お互いに心細いものですもの」
泣きながらトーチネス先生は驚いた様に私を見てから、そっと抱きしめてくれた。
「先生、実は私達お友達になったのです。お泊りもして、楽しかったですわ。素敵なお友達ができたので、従姉のアンジェリーナ様に紹介したら夕食に誘われて、とても素敵な時間を過ごせましたの」
「貴女の寛大な心に、私は救われた気持ちです」
私の手を取って、祈るように額を付けて泣いている先生。
「アーノル‥‥いえ、護衛の方、どうかリーナ・パステル伯爵令嬢をよろしくお願いします。どうか慈悲深いこの令嬢を、全ての悪意から‥‥守って下さい」
「トーチネス先生‥‥?」
何か云い知れない程の不安感のような、違和感のような気持が先生から伝わってくる。
「我々は護衛としても、誓いを立てた者としても、必ずリーナ様を守ります。安心して下さい、ララ・トーチネス先生」
「誓いを立てられた、のですか?そう、なら良かった」
レインの言葉が私の思考を遮って違和感がかき消されたけれど、トーチネス先生の持つ雰囲気が何なのか今一つ掴めない。でも、レインとの会話で安心してくれたようで、私も教室に戻ることにした。
「レイン、トーチネス先生と知り合い?」
「何です?藪から棒に」
教室に向かう廊下でレインに話しかけてみたら、今の答えが返って来た。
はぐらかされた?
「兄も私もトーチネス様とは学年が近かっただけですよ」
学年が近いと通っている間に知り合う機会もあるのかもしれない。
「それより、今日の夕食が問題ですね。リーナ様が授業を受けている間に、学院食堂に依頼して夕飯を持ち帰り用にして研究所に行かれますか?」
「レインって凄く細やかに気が付いてくれるのね」
感心したように呟いたら、少し照れた感じで笑顔になっている。
実は、授業中の護衛はレニが主な担当になっていて、私と同じ学生服を着ている。これなら一緒に行動しても違和感もない。
護衛が男女のペアであるのも、状況に臨機応変に対応するためらしい。
ここまで読んで下さって、ありがとうございます。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
読んで頂けることが、執筆活動の励みになります。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




