複合魔法と魔力映写魔法 20
「私はハチ精霊様に嫌われてしまったのでしょうか」
涙腺崩壊の如く泣いていたグレン様が、小さな声で私に聞いてきた。
「ハチ精霊様、あの装置は精霊様にとって体に負担がかかったのでしょうか?完成したら怪我をしているハチ精霊様も試すので教えて頂けますか?」
もう、ここは素直に聞いてみるしかない。力んで聞いたのに、すんなりと手で丸を作って『影響はない』と教えてくれた。そして、怒っているのか聞いてみたら、物凄くお茶目な答えが返って来た。
「えっ、いきなり装置に連れられて驚いたから、そのお返しで言葉かけに無反応でいた?」
それを聞いてガックリと項垂れたグレン様と心配した周囲。
「リーナ嬢はだんだんハチ精霊様の言葉が分かる様になってきたんだね。ところで、どうして気付いたのかな?」
エドワード殿下の質問に、無属性のハチ精霊様が元気だと分かったのはグレン様の髪の色に変化が無く隠ぺいされた状態だったからと答えた。
これは確率の消去法だ。
もし何かあれば隠ぺいした髪はエメラルド色に戻って長くなっていた筈。何もなかったからこそ、短髪のままだったのだから。そう考えるとレインもエドワード殿下も何も言わずに慌てなかったので、最初から気が付いていたのだろう。
「殿下、それは?」
「これが魔物に付けた短剣の物。こちらが、フェンが持っていた同じ短剣の物。どちらも同じ波形だね。そして、この37枚に渡る波形がグレンの耳に残った魔力波形の動き」
「ブレの有るように見えますね。これをどう捉えるか」
「リーナ嬢、精霊様に害が無いなら、このままハチ精霊様の羽も1体ずつ見たいのだけど平気かな?」
できればフェンの手の上に乗せて装置を通ってもらいたいと提案された。
実験物は多くても、実験補助は多すぎると混乱を招いてしまうための提案のようだった。
「では、此方のハチ精霊様からお願いします」
傷ついたハチ精霊様へのエネルギー共有は離れていても出来るから心配ないけれど。1体1体の名前を付けて固有判別をすることになった。
5体の羽を怪我したハチ精霊様の名前をマオリ・リカ・カオリ・カベルネ・メルロと名付けてみた。
どれも前世のワインやお酒関連の名前で申し訳ないけれど。いきなり名付けと言われても、前世で思い出すのは此方で飲めないであろうお酒だったりする。他にも少しだけ思い入れとかあるけれど、真っ先に思いついたのは、この5つだった。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




