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アーセリナ王国と六公爵 後編

「お気づきかと。そう、半島は半分以上が海に沈んだのです。『聖女の神託』は、地震による大地の陥没(かんぼつ)隆起(りゅうき)の予言でした。

 恐らく、沈降だけであったとしても、そのような土地に残ることはできなかったのです。だからこそ、初代様を慕う国民たち全員が一丸となって魔物討伐をし、魔物が退いた土地の浄化を聖女様が行いました。

 徐々に住む場所を広げ、魔物はダンジョン内にいるだけの状況へと封じ込めることができたのです。そして、現在に至るまで王族の聖属性魔法と六公爵のそれぞれの属性魔法が柱となり、各公爵領にあるダンジョンの管理をしているのです」


 説明を聞いて、今まで非難めいた者達が言っていた“魔力や属性至上主義の国の在り方”という偏見が分かった気がした。


「ああ、だから同じ属性系統の者が結婚するのを忌避(きひ)して、国民の魔力平均が下がらないように努めてきたのね。魔力と属性の至上主義なんて揶揄(やゆ)した言い方をしている方もいらしたけど、魔力と属性維持はこの国を維持するには必須条件なのね」


 発した言葉が正しいかどうかは、レイン様とレニ様の驚いた顔が証明している。


「ここまでの話で、そこまで理解されているとは、正直、驚きもありますが安堵(あんど)しています」


 話がしやすいと、解釈しておこう。多分、ここからが本題だと思うから。


「アーセリナ国の現状を維持しているのは、王族の桁外れの魔力による結界と、六公爵の各属性魔法によるダンジョン管理です。同時に騎士道にも似た、心を正しく保ち、一族でダンジョンを国の為に運用できるような状態にすることが課せられています」

「心を正しく・・・課せられている?」


 私の言葉にレイン様がクスクスと笑っている。


「本当にパステル嬢は凄い。課せられているという言葉が何処にかかるか無意識に見抜いている」


 レイン様の言葉を頭の中で繰り返し、本来なら“一族でダンジョンを国の為に運用できるような状態にする”という言葉にかかると考える筈だったと。それが“心を正しく保つ”にかかるならば、意味合いが変わってくる。


「まさか!六公爵は均衡を保つ要石(かなめいし)?!」


 だからダンジョン属性の弱点となる属性を持つ公爵が相対していたのだ。幼い頃、絵本で見た『初代様と六公爵物語』という話を読んで、毎回違和感があった。何故、火のダンジョンに火属性の公爵様が担当されなかったのかと。


「そうですね。絵本の物語には詳しく載っていませんが、

火のダンジョンには水属性の公爵・土のダンジョンには風属性の公爵・

雷のダンジョンには土属性の公爵・水のダンジョンには雷属性の公爵・

木のダンジョンには火属性の公爵・風のダンジョンには木属性の公爵が治められています。

 そして、相対する公爵家は常に心を研ぎ澄ませて、魔物の魔力が高まらないように自身の魔力を注ぎ込むのです」


 心を読まれたのかと焦ってしまった。でも、今の説明はかなり重要だわ。


「では、公爵様の心が伴わないと、魔物は強くなってしまうと?」

「負の心を持った者が特殊な封印を施せるわけもなく、徐々に魔物弱体の封印は無効化していきます。最悪の状態では、スタンピードが起こって魔物がダンジョンから出てきてしまう事態が発生します」

「スタンピードですって?!」

「フフッ・・・すまない。お詫びに、ダンジョンを隔てた公爵家同士の境にある各辺境伯家は、有事の際に救援要請に耐えられるように、様々な属性に特化した者を有している。だからこの国の貴族は、助け合い協力し合うのが本来の姿だと認識していないといけない」


 私の驚き様に噴出したレイン様は、お詫びと言いつつ辺境伯の仕組みについても話してくれた。途方もない話になってきている。でも本題には入っていない。


「この国と主要貴族の概要は兄の補足した話です。このような国の話は、物事への理解を深めた時期に行うのが良いだろうと、学院入学後に授業で教えることになっています」


 なるほど、物心ついた幼少期に教えると、家によって教え方の差や本人の理解度で解釈が変わってしまうから、そうならないように授業で教えることにしたのね。


「付け加えるなら、国民も役割の一端を担っていると言えるかな。ダンジョンに行くのは冒険者や市民で、ダンジョンには資源やドロップアイテムがあるから、それをギルドに売って生活費にしている。また、ギルドの売り買いには税金が引かれ国に納められている。簡単に言えば、王族と六公爵は国とダンジョンの安定を図って、国民はダンジョンで稼いだその一部を税として国に納めている。

 例外としては、我々近衛騎士や騎士団、魔法士団の鍛錬もダンジョンの奥で演習という形で行っているけどね」


 素材を売る方も買う方にもダンジョンからの恵みには税をかけて徴収することによって、経営が成り立っているのね。このシステムは、国民や冒険者と魔物の力関係が強すぎても弱すぎてもダメだということになるのでは?


 騎士団所属のレイモンドお兄様が言っていた気がするわ。そう・・・ダンジョンの魔物が弱すぎるとドロップアイテムに良いものが出ない。だから、魔物は程よく強く、良質のドロップアイテムを手にするには六公爵の持つ意味合いは大切なのだと。

 確かに、スタンピードを起こさずに、必要とされるドロップアイテムを生み出すようにするには線引きが難しいわね。


「今、ダンジョンの安定が崩れるような、六公爵のお心が負を背負うような変化があるのですか?」


 嫌な感じがしたから、少し不安に感じた部分を素直に質問した。2人が押し黙ったので、それが今回の本題なのだと思えた。


「ダンジョンと六公爵の力が拮抗しているか、もしくは六公爵が上回って安定しているのが平常時なら、下回ることは不穏な動きがあるということかしら?」

「聡いですね、パステル嬢は」

「レニ、難しい問題だがパステル嬢なら理解してくれるさ」


 溜息を吐きながら、レニ様は悲しそうに笑った。その横で、レイン様が話を進めろと促している。


「学院が王太子殿下の直轄で行われているのも、害意を持つ者を出さないためです」


 先ほどまでの話を理解できれば、国全体を魔物から守るためだと分かる。


「ダンジョンの均衡が崩れつつある場所があります。そして、それに連なる者達の敵意が聖女候補に向けられることが度々起こっているのです。実際に聖女になれる方は20年に1人ほど。なので、大切な聖女候補を潰される訳にはいかない!」

「度々って、昔から‥‥だから、護衛なのね。被弾という状況が隙になるから」


 自分で言って答えを見つけてしまった。全くもって嫌な図式だわ。


「ごく一部の貴族が、家と家の確執のような形で被弾した方を貶め、被弾させた方を糾弾する。そんな感じかしら?」

「!」


 レニ様の綺麗な目が大きく開いて、驚いたように私を見ている。


「学院は社交界の箱庭。王太子主催の疑似的社交界のようなものと考えれば、そうなるけれど。

 ブリジット・ルーバン子爵令嬢のルーバン子爵は、風属性のウェスティ公爵の庇護下にあって、カミーユ・ウェスティ公爵は現宰相。しかもカミーユ様の父君のロバート前宰相は、母の願いを聞いて父と引き合わせて下さった御方。父も母もルーバン子爵令嬢を糾弾なんてしません。

 当事者を差し置いて、騒ぎ立てるような愚かな貴族がいるのですか?」

「本当に聡いな。そう、パステル嬢の見立て通り、今回は他から声が上がっている。その者達は、昔から被弾案件に首を突っ込んでは、被弾させた方、被弾された方、双方を吊るし上げようと動く厄介な輩だ」

「過去には、仲違いをさせようと作為的に陽動し、協力関係を壊すような者がいました。中でも、婚約などされている場合、盗聴などの魔法が行使され、その変化を晒すような悪質な動きをする者が複数存在して処分されています。大体が、婚約破棄に陥れて成り代わろうとするのが目的のようです。過度な嫌がらせをして、学院退去を促すような輩もいたらしいですから」

「なんて悪辣(あくらつ)な」


 当事者でないのなら、完全に蚊帳の外にいて欲しいと思う。何のメリットがあってやるのかしら?


「大丈夫です。全てから守るために我々がいるのですから。私達はリリアンヌ様の隣の空き部屋の使用許可を頂きました。パステル嬢が部屋から外に出る時は、常に我々がお守りします」


 レニ様の瞳には強い意志が宿っているように見えた。


「ブリジット・ルーバン子爵令嬢は、どのような状況なのでしょうか?」


レニ様が何か思い出した様に唇を噛みしめている横で、レイン様が代わりに話してくれた。何かあったのは、2人の態度で分かるけど・・・。


「パステル嬢が倒れている3日の間に、ルーバン子爵令嬢は簡易的な検査を受けて魔力が著しく減ったと仮判定されています。顕現した聖属性が消えてしまったようです」

「え?」


 辛そうな2人を前にして、嘘でしょう?とは言えなかった。この方たちは、今までの警護でこう言った事例を多く見てきたのだと分かったから。


「ブリジット様は、今はお部屋?」

「部屋に籠って、パステル嬢に申し訳ないことをしたと泣いていると」


 私が倒れている間にそんなことになっていたとは。彼女に護衛が付いているか聞いたら、辞退されたため部屋の外で護衛が見守っているとレイン様は答えてくれた。


「提案なのですが、私はこれからトーチネス先生から連絡が来るまで部屋から出ずに、自主学習させて頂きます。なので、食事の手配をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「それは構いませんが・・・?」


 2人が承諾してくれたので、話を続けた。


「部屋から出る時には、伝達魔法でお2人に連絡を入れますから。レニ様には、できるだけブリジット様に付いてもらえませんか?私からの護衛の勧めなら断られることも無いと思いますし、今、お1人にさせてはいけない気がするのです」


 レニ様は小さく頷いてくれたが、レイン様に困ったような顔をされた。


「私は近衛騎士なので、レニと共に部屋に入ることは出来ますが、本来は部屋から移動される間だけの護衛なのです」


 なるほど。これは貴族ルールの1つが適用されたもの。近衛騎士はマナーもしっかりしている。“令嬢と2人きりになる場面は避けなければいけない”と言ってくれている。


「私が出かけるのは、この寮の図書室だけです。本を選んだら、部屋で読むか執事や給仕係がいるサロンで本を読むことにします。できれば、ブリジット様に手紙を書きますので、明日届けて頂けますか?」


 自分の部屋以外は図書室で、レイン様と2人きりになることは無いのだと行動を伝えてみた。こちらも、貴族ルールは承知しているのだと伝えるために。


「断る理由が無くなってしまいましたね。分かりました。我々もルーバン嬢のことは気になっていたので、手紙を書いて下さるのなら従います。レニはルーバン嬢の所へ私はパステル嬢の護衛に着きます」


 レイン様は砕けた口調と真摯で丁寧な口調を使い分けているようだ。私の我儘に付き合わせてしまう2人に、心からありがとうと伝えた。


「では、一晩ほどお時間をくださいませ。いろいろ頭を整理してから書きたいので」


 2人は納得して、リリアンヌ様の隣の部屋へと戻っていった。


 1人になった部屋はとても広く感じる。きっとブリジット様も心細い気持ちではないかと思った。感傷に浸っていても仕方がない。


「先ずは魔力と属性を確かめないと」


 気合が入り過ぎて、言葉に出てしまった。困ったことに、前世の記憶を思い出してから独り言が多くなった気がする。独り言は・・・令嬢としては、あれよね。直さなくちゃ。

 私室兼寝室でもある部屋に移動して硝子棚の中に入れていた、簡易型の魔力測定装置を取り出した。これは一年前の誕生日の時に、8歳上のロナルドお兄様からお祝いで渡されたもの。

『学院での魔力上昇は著しいものがあるから、研鑽(けんさん)を積んで常に己の魔力値と向き合え』と厳しいお言葉付きで、かなり怖かった。あの時は、楽しい学院生活を夢見ていたから仕方なかったけれど、今思い返してみると、ロナルドお兄様に大感謝ね。

 添えられた説明書を読みながら、机の上に装置を置いて彫られた文字を確認する。


『装置に魔力を注ぎこんでください。

装置の魔石が使用者の魔力に応じて変化します。

聖は光の金色と闇の瑠璃(るり)色に発色。

雷は黄色に発色。

木は緑色に発色。

火は赤色に発色。

土は琥珀色に発色。

風は乳白色に発色。

水は水色に発色。

無は透明に発色。

魔力値の測定結果が最後に表示されます。

終了時にリセットの魔力石(グレーの石)に魔力を流して測定装置のリセットを行います。

一日の使用回数無限。』

 

「ロナルドお兄様、これ本当に簡易魔力測定装置なのよね?学校のブローチよりも詳しいなんて」


かなり細かく書かれているので、とても簡易的とは思えない。

ただ、王族の聖魔法に光と闇があるとは知らなかった。これは私が知っても良いことなのかが気になるけれど。


「まずは本来の能力値ね」


 自分に課した隠ぺい魔法を解除した。ブローチに全ての魔石が現れて光を帯びている。先にブローチで確認してから、魔力測定装置に魔力を通した。

 装置が光って、綺麗な光が全ての魔石に灯っている。魔力値を見ると∞とだけ記されていて、私本来の魔力値が表示されていない。


「魔力無くなった?でも、魔力を装置に通しているのだし?」


 異常な事態になっているのだけは分かった。それでも、今は次を確認するしかない。リセットの魔石に魔力を通して最初の状態に戻す。

 次に隠ぺい魔法でブローチの雷・木・土・水の魔石以外を見えなくした。再び魔力測定装置に魔力を通した。装置が光って、ブローチと同様に雷・木・土・水の魔石だけが発色している。そして驚くことに、魔力値が18000と表示されていた。

 これは本来の私の魔力値が表示されたことになる。ホッと胸を撫で下ろしたが、発色している魔石の色合いが違って見えている。


「さっきよりも光っていないわ」


 聖属性を隠ぺいしたことで、聖属性が他の属性に関与して光っていた光が消えたということになるのかもしれない。

 そこでコップを取りに行き、そこに水魔法を唱える。コップに注がれた水は、医務室で見たような光は放っていなかった。普通の水を魔法で出せたことにホッとする。

 偶然覚えることができた無属性の隠ぺい魔法の凄さは、この装置によって立証された。


「これで、自分に対しての憂いは解消されたわね」


 ただ、無傷だった理由が必要な気がする。これは普通に考えるより、資料から見つけようと本棚にある『属性による魔法の可能性』と書かれた背表紙の本を取り出し、無属性について読んでみた。

持つべきは文武両道の長兄ロナルドお兄様と兄レイモンドお兄様だわ。学院に入学する時に2人の書物を譲り受け、それを持ち込んでいて良かったと、心底、良い兄に恵まれたと思った。


「普段は厳しいけど、頼りになるわ。さて、あの状況だと・・・」


 被弾した時を思い返せば、セガール・ラリー先生が防御魔法を行使してくれていた。だから、無傷の理由を考えるなら、あまり知られていない無属性の可能性を見つけた方が良い気がした。


「無属性魔法の相殺術?」


 本には他者が放った属性魔法に対して、相殺する魔法が行使できる術が書いてあった。これは良いかもしれない。あの時、ラリー先生が行使した魔法は確かに相殺魔法だった。ただ、規模や威力は分からないけれど、無属性所有は王族の証でもあるので魔力量は大きいと考えて、あの状況でラリー先生の相殺魔法が私を救ったと理由はつく。


 無事だったことへの理由付けも見つけ出し、次にやることを考えた。


「ブリジット様に私が無事であると知らせる。そして、外への対応。それと、ブリジット様の魔力がどうなっているか知りたいわ」


 私とブリジット様の魔力暴走は事故で故意ではない。それを口さがない者が断罪するなど、どうかしている。レイン様は“他から出ている”と言っていたわ。なら、私達が敵対していないことのアピールを対外に示すことは、自分たちを守ると同時にブリジット様の心も守ることになるのね。後は、ブリジット様の魔力が本当に喪失しているか。


 実は、パステル家は水属性の治癒術に長けた者が多く輩出されている。王家と似た銀髪に近い髪質を持つのは、数代前の先祖に王族の王子が養子に入られパステル家の娘と婚姻したからだと言われている。王女ではなく王子が。

 いろいろ知った今では、当時の結界対策で王族を増やしたものの、分家だらけでは内乱の原因になりかねないと、高位貴族ではない伯爵家に養子に入られたと推察してしまう。

 その王家の血が、パステル家の水属性に大いに関与していて、私の治癒魔法は5歳年上で騎士団所属のレイモンドお兄様に騎士団治癒士として誘われている。絶対行きませんが!


 ある日、庭のガゼボで本を読んでいると、騎士団の方々と剣の鍛錬を終えたレイモンドお兄様が、私の名を呼びながらやって来たので、私も本を置いてレイモンドお兄様の元に走って行ったの。

 そこで見たのは、死屍累々の騎士団の方々。慌てて治癒魔法をかけて治していったのだけれど、それがいけなかったみたいで。次から、私の近くで剣術の鍛錬をしては、治癒魔法をかけるように言われ、魔力枯渇するまで続けられること1年あまり。結果、15歳で魔力量18000という数値をたたき出した。


 魔力枯渇は、気絶できれば楽になれると思うほど、身体と心に打撃を受けるほどの倦怠感と頭痛に苛まれる。長兄のロナルドお兄様が私の体調不調に気がついて、やっと解放されたのよね。それから、レイモンドお兄様は、申し訳ないと言って甘やかしてくれるけれど、あの悪夢の1年間を繰り返す気にはなれない。


 あの1年で学んだ事は多くあった。だからこそ、魔力枯渇で魔力が無くならないのなら、被弾したり、被弾させたりしたくらいで魔力が無くなるなんて考えられないのよ。理論的におかしいでしょう?


「まずは、私の雷・木・土・水の属性で何ができるか?」


 自分に流れる魔力を感じてみた。『魔力の流れを観る魔法』は知っている。以前、骨折した騎士を治した時に“手の感覚が無い”と言われて血流・神経・魔力回路を観たことがある。神経と魔力回路の道筋は似ていて、治癒魔法で分断されている部分を治癒したら感覚が戻ったことがあった。


「被弾なんかで、誰も傷つかせない」


 決意のような気持が沸き起こった。でも、今は手紙が先ね。

“どうか、ブリジット様に気持ちが届きますように。”そんな願いを込めて書いた手紙。


 夜になって、レニ様とレイン様が夕食を運んでくれた。


「手紙を書いておきました。明日、渡して下さいますか?」

「早いですね」


 レイン様が笑顔で受け取って、手の塞がったレニ様のバックに入れている。


「レニ様、もしもブリジット様がそれを読んでも、まだ信じられないようでしたら、私の部屋にお連れ下さい」

「いくら心配されているとはいえ、当事者同士ですよ?」


 レイン様の心配も無理ない。でもこれは次に進むための一歩。


「だからこそ、です。レイン様」

「何か意味があってなさるのですね」


 レニ様に頷いて、ニッコリと笑った。


「証拠をお見せします、と。心配でしたらレニ様とレイン様も一緒に立ち会ってください。それに、私にはブリジット様に起こっている異変の方が気になります。レニ様に付き添ってもらうのも考えましたが、やはり見てもらった方が、話しが早いと思うから。治癒魔法に長けたパステル家が力になりたいとお伝えください」


 驚いている2人から夕食のトレイを受け取り、お願いしますねと念押しして部屋の中に入った。匙は投げられた。乗ってくるかは、ブリジット様次第なのだから。


「ええ?パステル嬢?!」

「お兄様、今!」


 2人の少し大きな声が聞こえたけど、空耳ということにした。

 治せる確証は無いけれど、力になれる気がした。無責任だと思われるかもしれない。

 でも、今の属性だけで解決できなかったら、たとえ周知される危険があったとしても聖属性を開放して挑みたい。だから、ブリジット様が歩み寄ってくれることを信じて待つことに決めた。


読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。



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