レニとリアの願い 6
つつがなく報告を終えた私たちは、聖女の部屋に戻って来た。
全員が集える居間のサロンで、リアがお茶を淹れて帰りを待っている。
「丁度良かったです。お茶を淹れましたから、どうぞお寛ぎください」
「リア、ありがとう。レインは?」
「リーナ様とブリジット様のお部屋の前で番をしてらっしゃいます」
チラリと廊下を見れば、気付いたレインが手を振っている。
リアが淹れてくれた紅茶と、レインが出してくれたお菓子を摘まみながら2人にアルフレッド殿下との話し合いで、私だけではなく、セレストやブリジットの精霊も希少性が高く、他の貴族に知られない様にする事が決まったと告げた。
「精霊の秘匿ですか。王族でもないですし、ブリジット様は子爵令嬢ですから秘匿できるか心配なところですね」
「そうね、学院生は貴族階級に拘る子も多くいるので、自分より下の階級の者がどんな精霊と契約したのか知りたくなる者もいます」
実際、どのような余波が出るのか分からなかった私にとって、学院の先輩であるレインとリアの率直な意見は情報として大きかった。
「リーナ様、他にも子供を使って貴族が情報を得ようと画策する者も多いのです」
「そうなの、レニ?」
「そう言えば、貴族達は自分の一族に有益な者との結婚を考えるので、レニ殿の精霊が決まった時に多くの求婚が殺到しましたな」
「そうだったの?!」
驚く私に、自分の精霊を召喚したレニ。
「豊穣を約束してくれる精霊ココです。この子はとてもお話好きで、楽しい事や各地の話を持ってきてくれます。ただ、話し出したら止まらないので、ストップさせてあげないとずっと続きますが」
『お初にお目にかかります、オイラはココ。旅好き楽しい事好きお喋り好きの精霊さ!酷いなぁ、オイラは出逢ったり見て来た事を話しているだけなのにさ!』
まるで前世の風来坊のドラマの主人公のような感じの口調だわ。しかも豊穣の精霊ってネイティブアメリカンのココペリの様な感じなのかしら?
「初めまして、ココ。私はリーナよ、お菓子は如何?」
『良いのかい?あ、ちょっと待って!精霊王様にご挨拶申し上げます!じゃ、頂きやす‥‥』
最後の方は、クッキーを齧りついて語尾がおかしくなっているココ。
「このココの能力が豊穣を約束し、訪れた土地を豊にするんですよ。牧場では多産に恵まれて、農場や牧場の多い生産地区の貴族がこぞってレニに婚約を申し込んできましたっけ」
「あら、でもレニは魔法士団に所属しているわよね?」
「はい。結婚には興味ないので、兄の結婚が先ですと断っていたら、いつの間にか釣書が減りました」
「私が独身なのは、妹を守る為でもあるんですよ!なーんて、我が家系も恋愛結婚の家系なので、今まで心から思える方に会えていなかったというところです」
茶化しているレイン、あら、でも‥‥今までって‥‥。
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