複合魔法と魔力映写魔法 1
コンコン。
「グレンですか、かまわないですよ」
「失礼します。ハニエル、急ぎの件とは?」
グレンと呼ばれた男性が部屋に入って来た。くすんだ緑色のサラサラな短髪でヒスイのような美しい瞳を持った長身の男性がハニエル様の横に立った。
「グレン・ロードライ、君達に用があってね。此方はリーナ・パステル嬢だよ」
「パステル‥‥グラン・パステル様のご令嬢ですか」
「父の有能な補佐官様の可愛いご令嬢です」
父の名が馴染み深いのは、ハニエル様の父君が現宰相カミーユ・ウェスティ公爵で顔馴染みなのかもしれない。
「グラン・パステルの娘、リーナ・パステルと申します。グレン・ロードライ様」
立ち上がり、ソファーの横に出てカテーシーで礼をとった。
「不躾にすまない。私はグレン・ロードライ。出来れば“グレン”と名前で呼んで欲しい」
挨拶を済ませて、グレン様はハニエル様の右側に座った。ふと見ると、いつの間にかグレン様の紅茶が出ている。一体、いつ魔法を使ったのか不思議でならない。
「リーナ嬢は豆ゼリーを食べたらしいです」
また、その話に戻るのですか?
「一口だけです」
この件、ずっとされるのではないかと、引き攣りそうな笑顔で釘を刺す。私はゲテモノ食いでも、偏食家でもない。
一応、令嬢ではあるので、このネタを引っ張り出されるのは避けて欲しいのだけど。
「私も悪いけど、豆ゼリーの件を出すならもっと良い話があるよ。昨晩、グレンが兄上から調査するように言われていた話は進んでいる?」
「乾燥させて粉にした造血豆の効能の件ですね。今朝、100kgの豆を乾燥させて粉にしたので、成分分析する分量をこちらで頂いて調査中ですよ。グレン、そっちはどうなっています?」
「今は被験者を募っている。しかし、アルフレッド王太子殿下も凄い方法を思いつきましたね」
お仕事が早い!昨日話したことが、もう着手されているなんて!
「2人とも悪いけど、その方法を考案したのは兄上では無いよ」
「え?では誰が?」
サラサラな髪を揺らして、グレン様が殿下の方へ身を乗り出すようにテーブルに手をついた。
長い沈黙。
「だから連れて来たんだよ。その話も聞きたいだろうから」
視線が私に集中して、少し緊張してしまう。綺麗なお兄様方は、迫力が凄いから。しかも研究肌の熱意とか、物凄く気迫の様なものを感じて、少し怖くなるくらいだわ。
「まさか、リーナ嬢が発案していたとは」
ハニエル様の感嘆するような声に、グレン様が頷いている。
「パンも小麦から直接作る訳ではないので、それを言っただけなので」
発案なんてとんでもない、提案しただけだと言っても2人の耳には届いていなさそうだった。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




