精霊と妖精 15
「リーナ様、私もよろしいでしょうか」
「アデラ様?」
「私、雷属性の家門なので雷の精霊を望んだのですが、名を付けてみよと言われてしまって」
「普通にアデラ様が思う名ではダメなのですか?」
どうやら、アデラ様の下へ来た精霊は、駆け引きや謎解きをするタイプではなく、名前から直接イメージする精霊になるような高位の精霊ぽかった。
「この子がリーナ様の記憶の中に雷に関する名があると言うのです」
ああ、なるほど。私の前世の記憶の中に存在する神様の名前を付けて欲しいのかな。
「男神名なら雷帝、インドラ、ゼウス、アルゲース、サイクロプス、ユーピテルとか。女神名ならアストライアーとか」
「アストライアーに反応しましたわ!」
「アストライアーという名は、星の如く輝く者という意味合いがあります。星乙女という名ですね」
「まあ!なんて素敵な名前なのでしょう!決まりましたわ。リーナ様、ありがとうございます」
美しい光から雷光の様な細い光がピカピカとして雷を纏っている。
精霊の本質によっては、アデラ様のように名前を付けて終わりになる試練もあるらしい。
『そなたの記憶には沢山の神の名があるのだな』
「私も部屋に戻って、あなたと話さないとね」
幸い、この課題が行われている期間は、授業は休校になる。早く終わった者は、助けを求める友の手助けをしても良い事になっているらしい。
それだけ、この授業が大切なのだと分かる。
「パステル伯爵令嬢、そこを退いて下さるかしら」
「貴女は‥‥確かシャフラン侯爵のグラリア様?」
通り道でもない場所で退いてと言われるとは、ここで何かをするのかと一応レイン達の方へ行こうとしたら、足を引っ掛けられてしまった。
盛大にすっころぶと思いきや、スフェーンが出てきて支えてくれた。レインとレニを見ても慌てる事も無いから、ここでも対応の区分けがされていると分かる。
「はっきり言っておきますわ。私が聖女になりますの。だから、王太子殿下には近づかないで下さいませ!」
たまにこうやって、聖女の肩書は自分の物だと豪語する者がいる。聖女になりたいのか、王太子妃になりたいのか、はたまたアルフレッド殿下が好きだからなのか、貴族的な意図が絡んでいるのか、個人的思慕の念なのか全く分からない。
『何とも、珍妙なものよ』
シマエナガに扮した精霊なのに、言葉が妙に年配者風なのが奇妙な違和感を作り出している。
でも、こういったご令嬢の相手はしないに限る。
「そうですか、私は課題がありますので、失礼させて頂きます」
「ちょっと待ちなさい、侯爵令嬢の私の言う事が聞けないの!」
「すみませんが、今は授業中であり学院の生徒である以上、私が貴女の言葉に従ういわれはありません」
「私が王太子妃になる者だとしても?」
「然るべく発表がありましたら」
妄想令嬢は放っておいて、さっさと部屋に戻ろう。ブリジットもセレストも気になるし。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




