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魔力被弾で覚醒した令嬢は精霊様と悪意を摘み取る  作者: 真白 歩宙
ハチ精霊編

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造血豆と魔法士団研究所 8

「あれ?かなり急がせてしまった?」

「いえ、そんなことありません」


 ハンカチで口元を抑えて、息を吐いたのを見られてしまったけど笑顔で返した。

 スッとエドワード殿下は立ち上がり、着いて来るように目で合図すると食堂を出て行った。


「流れる手捌(てさば)きでサンドイッチが消えていましたね、リーナ様もレニも」


 レインに笑わないでと、軽く彼を睨みつつ、傍に控えていた執事にお礼を言ってからエドワード殿下に続いて食堂を後にした。

 南の玄関を抜けて数段の階段を降りると、少し大きめの魔道馬車が横付けされている。


「リーナ・パステル様、此方へどうぞ」


 侍従の方の案内で魔道馬車に乗り込むと、エドワード殿下が奥に座って手招きしている。殿下と護衛2人と私達3人を乗せて馬車は走り出す。

 木漏れ日が続く道を馬車の窓から眺め、湖に面した道を進んでいる事が分かった。広大すぎる敷地内の端に有るとされている魔法士団研究所。

 その近くの敷地外にある魔法士団の大きな施設と繋がっているらしいと、レイモンドお兄様が言っていたけれど定かではない。そして、研究所には魔道馬車で30分ほどかかるとロナルドお兄様が教えてくれた。


 私も少し考えをまとめた方が良いのかもしれない。転写の技術は前世で何種類か見かけている。

 1つは、熱転写方式。インクリボンの文字や図柄の部分を熱で溶かして紙に転写する方法があった。

 もう1つは、水圧転写技術。絵柄を印刷した特殊なフィルムなんかを水圧によって凸凹(でこぼこ)した物にでも柄を転写する技術で、後から表面をコーティングして剥がれない様にして定着する方法だった。

 後は、思い出せない。ウィキペディアや検索で調べられた前世が羨ましい。


「リーナ様、殿下が質問されていますよ」

「‥‥」

「何か考えているのかな、凄い集中力だね。そっとしておこう」


 私は考えの中に没頭していた。何か掴めそうな気がして、前世の記憶を1つ1つ順を追って応用できるか魔法と照らし合わせた。

熱は火と光。水圧は、水と圧力‥‥?


「今、何か閃いたような‥‥」

「着きましたよ。リーナ様、戻って来て下さーい」


 水に圧力で転写・・・。


「リーナ嬢?」

「エドワード殿下、ご令嬢に触れては!」

「ひゃっ!冷たっ‥‥殿下?!」


 頬が冷たくなった事に驚いて、思考モードから現実に戻された。目の前には可愛い顔で、手の温度だけを下げたエドワード殿下の姿があった。


「思考に入るのは良いけど、周りが見えなくなるのは良くないよ?移動中に何が起こるか分からないからね」

「すみません、エドワード殿下。私、失礼な事を」

「違うよ、集中は安全な所ですると良いよって話だから」


 にっこり笑って馬車を降りていく、寛容なエドワード殿下に感謝。横でレインがクスクス笑っているのが気になって、失礼な事をしてしまったか聞いてしまった。


「殿下が質問されたのを、リーナ様が思考中でスルーしただけですよ」


 聞かなきゃ良かったと後悔する私に、レインが『寛容な殿下で良かったですね』なんて言うんだもの。ちょっと意地悪したくなっちゃうわよね。


「そう、レインには造血豆ゼリーをオヤツにあげるわ!」


 冗談めかしに言いながら馬車を降りたら、顏を引き()らせていたわね。

読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。



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