残りのピースと令嬢たちをとり巻く悪意 72
「これから貴方方は、多くの人に後ろ指を刺されることになります。そして、酷い扱いを受けるかもしれません。それでも、ダンジョンを守り、国を守って六公爵としての責務を果たしてもらわなくてはなりません」
マルス様、エルヴィス様、お2人に非が無いとは言い切れない。ただ、2人には希望になって欲しい。
「国を守る六公爵として、要石の責務を果たせるように、マルス・サンディスタ、エルヴィス・サンディスタ、2人に祝福を与えたまえ」
一陣の風が舞い、マルス様の首に土属性の琥珀のチョーカーと、そこに雷と火の属性の守護が内蔵された祝福が与えられた。
同じ様に、エルヴィス様の首にも土属性の琥珀のチョーカーに、そこに雷と風と水の守護が内蔵された祝福が与えられた。
祝福は時間と共に体の中に消えていったか、1つだけ驚いた事が起こった。
「マルス殿、エルヴィス殿、儂らが近づいても何も起こらんが、殿下が近づくと首に祝福が出るようじゃな。精霊王も粋な計らいをしてくれたもんじゃ」
王族が近づくと、2人の祝福が現れる。目に見える精霊王からの贈り物。これは、彼らの心が王家にも精霊王にも向いている証だ。
「成程。人々は、貴方方サンディスタ公爵家が王に拝謁する度に、今回の件を思い出しつつも、貴方方の忠誠がある事を確認するわけか」
「これ以上の忠誠の証はありませんね」
チョーカーというと聞こえは良いけど、今回の件に精霊王もかなり怒っている事を知ってしまった。2人に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「いろいろ配慮出来なくて、ごめんなさい‥‥」
「祝福とはそういうものですから、お気になさらないでください。それに、我々は祝福を与えて貰っただけでも有難いのです」
深々とマルス様とエルヴィス様が頭を下げた時だった。
『これで、そちらは一件落着しましたね』
「スフェーン?」
『まだ、元凶が残っているでしょう』
風のスノウが木のスフェーンの横で話しかけて来た。
『レイン、レニ、交代だ。我々はこれからヤツを仕留めに行く』
火のルベウスの言葉に、驚いて危ないと止めると‥‥彼らの姿が!
『聖女リーナ、少し目を瞑っていてください。戦闘態勢に入った我々は美しくは無い』
『こんな姿、本当は見せたくないけど、アレを放置する事はできないから』
水のアクアと土のコハクが言い終えると、彼らの身体に赤黒い甲冑の様な物が現れた。
そのフォルムは可愛いハチ精霊様を大きくした感じに見えなくはないけど、人型の彼らが纏っているハチを象った甲冑は不気味な感じだ。
伸びる赤茶の羽、彼らが頭に被った兜は、どう見ても‥‥赤茶のスズメバチのマスクそのもの!
「す‥‥スズメバチ?しかも、攻撃性が一番高いチャイロスズメバチ?!」
手に持った赤黒い槍には、多分、猛毒が仕込まれているのだと分かるような独特な光がある。
怖っ!怖すぎる!
周囲を見たら、顏を引き攣らせているアルフレッド殿下や、グラン様にカミーユ宰相、パトリック様までは何とか理性で保っているみたいだったけど、マルス様とエルヴィス様はガタガタと崩れ落ちている。
「お願い、精霊様は人間を死に至らしめてはダメなのでしょう?!スフェーン、ルベウス、スノウ、ライト、アクア、コハク、お願いだからそんな事をしないで!毒針を刺したら死んじゃうなんて嫌よ!」
6人のナイトを引き留めようと抱きついたけど、多分、スフェーンだと思われる個体から頭を撫でられ、トンと‥‥殿下とレインの方へ押されて、意識を失ってしまった。
フェードアウトする視界に写ったのは、6人の武装したナイトが飛び立つ姿。
後日、猛毒で瀕死の状態になったケリー・サンディスタが王城の門に吊るされていたという報告を受け、人々は決して精霊様を怒らせてはいけない、仇を成す事をしてはいけないのだと心に誓ったという。
魔力被弾で覚醒した令嬢は精霊様と悪意を摘み取る ハチ精霊編 完
ここまで読んで下さって、ありがとうございます。
ハチ精霊編、此処で一旦一区切りです。
この物語はまだまだ続きます。
まだ、精霊王の元で回復している子もいますし、
アルフレッド殿下との恋も、どう育っていくか。
ブリジットや他の人たちと、どう絡んでいくのか。
話は次の舞台に移りますが、ハチ精霊はまだまだ活躍します。
次の精霊登場を楽しみにしていてくださいませ!
これからも、この「魔力被弾で覚醒した令嬢は精霊様と悪意を摘み取る」を
どうぞ、よろしくお願いいたします。
真白 歩宙
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
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