残りのピースと令嬢たちをとり巻く悪意 70
魔法陣の光が消えると、シビル嬢はストレッチャーのような物に乗せられて、騎士団が運んで行った。
その後から運ばれて来た人達の処置で、会場は野戦病院さながらの状態となった。ベッドに寝かされた者の肌がドス黒く変色している。
「ケリー・サンディスタの属性は土・雷・風ですわね。落雷魔法と風魔法の鎌鼬を使ったのかしら、いいえ、あの時何かを隠し持っていたわ!」
最初はペンの様な魔道具をぶつけられた生徒が運ばれ、時間が経つにつれて剣で切られた生徒が運ばれて来た。
どちらも雷と風の複合魔法に悪意の塊が付着して、普通の治癒魔法が効かない状態になっている。
私は全ての属性を解放して、試食部屋自体に全聖属性の属性魔法陣を細かく具現化させて、負傷者が入ってくると自動的に治癒するまで、あらゆる属性魔法が働きかけるようにした。
「まるで、リリアンヌ様のお部屋の中みたいですね、リーナ様」
「ブリジットにはそう見えるのね。このイメージはハチ精霊の女王の卵部屋のイメージなの」
6角形の小さな属性の魔法陣を組み立て、この部屋自体を癒しの魔法陣で囲んだ結界の様な物に仕立て上げた。魔力供給だけして治療に専念するためだ。
「だから切られた傷がこの部屋に入って来た瞬間から塞がってゆくのですね」
感心した声を出したのは、聖女補佐たちだった。
「アンジェリーナ様が、ケリー・サンディスタが何かを隠し持っていたと教えて下さったから、怪我人は増えると思ったのです。
大勢に対応するには1人1人に長い時間をかけられないので、この部屋自体を集中治療できるような魔法陣の結界で覆ってしまおうと」
「思っても、中々出来る事では無い。さすが今代の聖女様は違う」
パトリック様は目覚めた生徒に試食会場の料理を食べるように言っている。
「この試食の場にあるのは造血豆の料理。とても、理にかなった配置に思えてしまうのは、リーナ様のお力が素晴らしいからだ。いやはや、無駄にならなくて良かったが、傷ついた生徒は可哀想じゃのう」
「それでも、聖女が居るか居ないかで、傷の治りも全然違いますわ。これこそ、不幸中の幸いです」
流石、第二王子妃になる方は違うと笑うグラン様とパトリック様。
そこへ騎士団やマルス様、エルヴィス様に抱き上げられた、一般の貴族女性や貴族男性が運ばれて来た。
「すまない、学院の外へ逃走しながら道すがら出逢った人を無差別に攻撃しているため、止む無く追跡はハチ精霊様のみで行われている!」
「見える追跡はヤツを煽る結果になりかねんということか。どうも、嫌な感じがするのう。ほう、殿下はシールドを張ったか」
まるで学院と寮の2箇所を中心に幾重にも広がるシールド。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




