残りのピースと令嬢たちをとり巻く悪意 69
「リーナ様、その者の魂が汚れすぎているからです」
「改心したのでは?!」
「御覧ください。これは禁忌の魔法をした痕。おそらく、この者の細胞を身内の者と入れ替えたのでしょう。その入れ替えた相手が、汚れた魂の者であれば、この娘は祝福を受けられません」
ちょ、ちょっと待って?
体の組織を入れ替えるって、黒魔術的なものなのかしら?
「その禁術を使うと、どうなっちゃうの?」
「そこまでは分かりませんが、ウォノン・サンディスタであれば、分かるかと」
「ああ、ウォノン当主‥‥あれっ?サンディスタ公爵家の人が誰も居ない?!」
試食会場には、ロードライ公爵のグラン様、アンジェリーナ様、ライリール公爵のパトリック様しか居ない。
「聖女リーナ様、先ほどカミーユ宰相の指示でウォノン・サンディスタとヴィンセント・サンディスタの両名は騎士団と近衛騎士に連行されて行きました。恐らく、魔法を封じられた封印牢に入るでしょう」
「パトリック様、封印牢って‥‥」
「我が家系は私の祖父まで宰相を勤めていたのです。そういった内部事情には詳しいのですよ」
なるほど。でも、先ほどまで殿下が居た筈?
「何じゃ、指輪を突っ返したのに気になるのか。アッシュ殿の治癒の為に、聖女補佐を転移させるため執務室に行ったが、あちらで何かやっておるのかもしれんな」
グラン様の変わらない接し方とツッコミに、ホッとしている自分がいる。
ふと、自分の周りにいるナイトたちを見つめて、本当に聖女になったのだと実感していると、アルフレッド殿下が会場に飛び込んで来た。
「リーナ、ケリー・サンディスタが騎士団を振り切って逃げてしまった!学院の生徒が数人怪我をしている。直にここに運ばれて来るから、補佐たちと一緒に治療を頼めるだろうか?」
「ええ。此方に運んでください」
視線は魔法陣が消えかかっているシビル嬢を見ているけど、私の返事は聞こえたようだ。
殿下の状況判断は的確だ。
ただ、あの爆発の中、ケリーはこの部屋から逃げたのだろうか?
「あの者は逃げる切っ掛けを作るために、妹のシビル様の身体を魔力暴発させたのですわ!」
「アンジェリーナ様、彼の心に触れたのですか?!」
「いいえ、強制的に善悪を読み取っただけよ。とても、不快で気持ちが悪くなるような感覚だったけど」
アンジェリーナ様が彼の心に触れていなくて良かった。
「怪我人を運び込んでも大丈夫な様に、この会場を整えなくては!」
そう叫んだ瞬間、ナイトたちが六角形のブロックで出来たハチ精霊のベッドを空間から出し始めた。
「これは、凄いな‥‥」
『我々の使うベッドの方が、リーナ様の魔力と親和性が高いので幾つか用意します』
アルフレッド殿下が、驚きが混じった声を上げ、病室へと変わっていく会場を確認してから、指揮を執る為に出て行った。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
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誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




