造血豆と魔法士団研究所 6
「提案があります」
私はハチ精霊様に治癒魔法をかけた。その命が消えない様に。
そして、ハニカム構造の小さな家に魔力を通していく。かなり、ごっそりと魔力を持っていかれたけれど、5体のハチ精霊が休める場所が、魔力の補給場所になったようだった。
「これで当面はハニカム構造の家が癒される場になります。3日後と約束しましたが、開発されるまで羽に残った証拠を保持してもらえる状況です。後、呪いのような傷に張り付いた物も、なるべく影響が出ない様に、私の魔力で覆いました」
「良いのか?!魔力で覆うなんてことをすれば、身体に反動がでないか?」
「今までハチ精霊様が背負われたのです。犯人逮捕は私達も望んでいること。今度は私が背負います」
5体分の痛みが身体の箇所に出てきたけれど、これくらいなら筋肉痛と思ってやり過ごせる。あまりにも心配するレイン達に、騎士団との1年に比べれば全く大丈夫だと言ったら苦笑いしていた。
「開発って魔力士団の研究所だろうか?」
「ええ。王太子殿下からハニエル・ウェスティ公爵子息がその手の研究を進めていると聞いたので、朝食を食べてから伺ってみようかと思っています」
「そうか。ならまた、伝達用のハチ精霊様を連れて行く?伝達先はアルフレッド王太子殿下とロナルドと私にしておけば、連絡を入れた相手にはリーナ嬢の状況が伝わって直ぐに対応できるからね」
それは有難いと思った。護衛はレインとレニがいるけど、状況判断が付かない時に王太子殿下と連絡が取れるのはチートな伝達手段な気がする。
「良いのですか?」
「リーナはハチ精霊様の為に動くのだから、私利私欲ではないし痛みを背負ってまで私達の願いを叶えてくれようとしている。私はリーナに危ない目にあって欲しくない」
「ありがとうございます」
お礼をいって髪の毛に隠れたハチ精霊様と部屋を出ようとしたら、怪我をしているハチ精霊様が何かを訴えている。その言葉を聞いていたリリアンヌ様の表情が曇った。
「リリアンヌ様、精霊様が何か?」
「“ハニエル・ウェスティに会うなら自分達を連れていけ”と言っている」
「今の状態で守衛室の結界から出るのは、お身体が辛いのでは?」
ハチ精霊様は分かっているのだ。目の前に被害を受けた精霊がいるのといないのとでは、話の進み方が違うことを。
たとえ私が痛みを請け負っていたとしても、外界から受けるいろいろな刺激でハチ精霊様は苦しむ事になってしまう。それでも、協力する道を選んでくれたのだから万全を期して対応したい。
「リリアンヌ様、何か良い方法はありますか?」
考え込むリリアンヌ様に、レニが耳打ちしたようだ。
「リア、確かにハチ精霊様を結界で守ったまま運べれば、あまり支障は無いが目立ってしまう」
「結界って、このお家のままですか?」
ハニカム構造できた家を手に取ってみた。中々軽くてそれだけを見ていると可愛らしい。
「その結界の家ごとだったら安全ではあるけど、目立たない様にどうする?」
「リリアンヌ、ポケットとかじゃダメなのか?」
「ハチ精霊様は物じゃない、そんな狭いところになんて‥‥」
レインのポケット案は却下されてしまった。近くの姿見に映る自分の姿に、何処か安全で目立たない場所は無いか探した。
「あっ!」
「リーナ様、どうかしました?」
「レニ、リリアンヌ様、これはどうかしら?」
髪から外した髪留めを2人に見せた。白いフワフワしたレースと金色の帯状のリボンがついた髪留め。
「こうやって白いフワフワしたリボンで囲んだら、ハニカム構造の小さなモチーフに見えない?」
「可愛いバレッタに見えますね!」
「雰囲気も良い感じに見えるし、ハチ精霊様が喜んでいる。早速、木属性魔法で縫い留めよう」
木属性の術式で、蔦の様にバレッタに留められるハニカム構造の家。仄かなハチミツの香りがリラックス効果を生んでいる気がする。
「ハチ精霊様、ご飯を多めに持って出発しましょうか」
念のため、リリアンヌ様がハチ精霊様のご飯を巾着に入れて持たせてくれたけど、落ち着いたところであげたいので、多めに家に仕舞ってもらうことにした。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




