残りのピースと令嬢たちをとり巻く悪意 59
「リーナ様、私たちも所定の位置に参りましょう」
レニに促されて、王太子殿下が座る右側に移動した。丁度、3段ほど高い位置に王太子殿下が座り、2段目にオースティン殿下とアンジェリーナ嬢が並び、その前にブリジットが立っている。
当然、ブリジットを護衛しているアッシュとリアの姿は消えているので、ブリジットが守っている感じに見える。いや、一概にそうでないとも言い切れない。
ブリジットは聖女候補なのだから、規模は小さくても聖属性の結界を扱える。
そして私とグラン・ロードライ公爵は段には上がらず、ブリジットたちの前に陣取った。私はグラン様の左に立ち、私の左にレイン、レニは後ろに。
高鳴る鼓動が緊張を増長させているかの如く、神経がピリピリとしている。それでも柔和な笑顔を保てるのは、淑女教育の賜物だろう。
「あれが現当主のウォノン・サンディスタ公爵‥‥」
見るからに禍々しいオーラが漂っている。
先頭を歩いている現当主は確か68歳なはずだ。
黒っぽい茶色の髪が混ざった琥珀色の髪に、レモン色の瞳の爽やかな色合いの瞳がギラギラとしていて、とても60過ぎには見えない。
「これは、これは、王太子殿下。此度は造血豆の新しい加工法が見つかったとか。試食会に呼んで頂いて感謝します」
恭しく臣下の礼をして、当主としての挨拶をするウォノン・サンディスタ公爵の声だけは、年相応の深みのある声だった。
続いて次期当主のマルス・サンディスタ様は確か、父と同い年で落ち着いた感じの方だと聞いている。琥珀色の髪に金髪が混ざっていて、伏目がちな深い赤の瞳が印象的だ。
マルス様の息子、エルヴィス・サンディスタ様は、琥珀色の髪に金髪が混じっていて、アクアマリンの瞳を持つ近衛騎士に所属している方だ。
タンジー様は琥珀色の髪に紅玉の瞳で、マルス様似なのかもしれない。
その後ろから、マルス様の弟、ヴィンセント・サンディスタ様が入って来た。
本来なら、事前調査で琥珀色のウェーブのある肩までの髪にペリドットのような黄緑の瞳と聞いていたのだけど、濁った色合いに見える。
その後を、薄い茶色の髪に黄緑に近い黄色の瞳のシビル・サンディスタ様が続いて、最後に焦げ茶色のショートヘアーに薄い黄色の瞳したケリー・サンディスタが入って来た。
ああ、あんな顔をしていたんだ。
初めてまともに見た彼の顔は、普通の若者の顔。纏う悪意のオーラがマントの様になっている。
此処までの観察で、直感的に分家になるヴィンセント様の血筋にドス黒い禍々しい何かを感じているのは確かだ。
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