残りのピースと令嬢たちをとり巻く悪意 53
静まっていく聖属性魔法の光。今ので、多くの者の中に潜んでいた悪意の闇が消し飛んだ。
代わりに、その者を守護する加護に近い主属性の強化がされた様だった。
「先ほどの光が聖属性魔法‥‥」
感心した声で私を覗き込んでくるカミーユ宰相は、何かを言いたそうにしている。
「大丈夫です。これくらいで倒れたりしません」
「ええ。どうやら私が予想した以上の魔力をお持ちの様ですね。しかし、いくらハチ精霊様のナイトが付いているとは言え、政治的な意味合いでの安全性を堅固にする必要がありそうです」
政治的な安全性?
私が頭を少し傾げると、カミーユ宰相はアルフレッド殿下を見て自分も立ち会うと言い出した。
「何が起こるか分からないのですよ?!国の重鎮であるカミーユ宰相に何かあったら、とても恐ろしいことです!」
「リーナ様、そして王太子殿下、サンディスタ公爵家は狡猾で抜け目のない者が多い家門です。政治に介入していない貴方方が太刀打ちできるのですか?」
「私が王太子として対応することができないと?」
またもや、アルフレッド殿下とカミーユ宰相の間に、不穏な空気が漂い始めた。
「ただでさえ、魔力値が低くなっている家門の衰退を、どう食い止めるかで必死のサンディスタ公爵家が狙う人物が誰だか分かって言っているのですか?」
「リーナならば、私が守る」
「分かっていませんね。貴方が王太子であるから守れないのです」
どういうことなの?
「王族は六公爵家に、この国のダンジョンを守らせる要石の役目を与えている。たとえ、王太子印の指輪をリーナ様がしていたとしても、まだ婚約の儀の前なのです」
アルフレッド殿下の表情が険しくなっている。
「魔力値が低くなっている事で、スタンピードやダンジョンブレイクを理由にリーナ様を要求されたら、それこそ取り返しのつかない状況になってしまう」
うそでしょう? 怖っ!
危ない家門だって分かっていながら、要求されたら嫁入りしなくちゃならないなんて、絶対に嫌なんですけど?!
カミーユ宰相に言われなかったら、私はとんでもない身の上になっていた事になる。
「私、サンディスタ公爵家にお嫁入りするぐらいなら、貴族籍を捨てて冒険者になります」
「リーナ、君がそんな事をする必要が無いし、私が守ってみせる」
真剣な眼差しで守ると言ってくれるアルフレッド殿下。
自分にとって、殿下は憧れの様な感じで、愛や恋する相手なのかと問われたら、少し戸惑ってしまう。好きなのだと、好ましく思っている部分もあるし、少し強引な部分すらも受け入れている事もある。
王太子印の指輪が自分にある事で、意識し始めたのも確かだけど。
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