残りのピースと令嬢たちをとり巻く悪意 35
「ベルタ夫人、その2種類の丸薬の効能が実際にどのような働きをするのか、分析にかけても?」
「仰せのままに、アルフレッド王太子殿下」
立ち上がったベルタ夫人はホッとしたように、心が落ち着いた感じだった。
「さて、今ので理解されたと思うが、ベルタ夫人が実家の事を話そうとした時に、命を奪う魔法が体内で発動した。
幸い、精霊王の助力とリーナの力で事無きを得たが、ペンの事件も類似した事件だと思っている」
殿下が話しながら、アデラ様を気にされていたので、傍に行こうとしたら様子が少しおかしい。
「お母様、茶葉はどんな物?薬ってどんな薬を飲まれたの!」
ガタガタと震えて、口元を押さえている。
「アデラ、どうしたんだ?」
「私、タンジー様から茶葉を貰って飲んでしまったわ!」
「ああ、俺にも淹れてくれたあの茶葉か?何ともないし、怠くもなってないが?」
スティーブン様は、アデラ様のパニック状態を、か弱い女性が陥る被害妄想だと思ったのか、安心させるように抱き留めて、大丈夫だと言い聞かせている。
「それだけじゃないのよお兄様。私、シビル様から美容に良いと言われて、丸薬を‥‥っ!」
言い終わる前に、吐血したアデラ様は苦しそうに手を前に出してもがいている。
「アデラ!今直ぐに丸薬を!」
「ベルタ夫人、今のアデラ様に呑ませるのは無理そうですから、それはこれからの予防に使ってあげてください。確かアデラ様の属性は‥‥」
「雷と火と風です!リーナ様、妹を!」
頷いて聖属性魔法を解放する。
『今回は雷属性と無属性でできる』
「ありがとう、ルベウス。聖属性の雷魔法の魔法陣を、聖属性無魔法で発動して人体に害する物質を無効化に!そして、どうかアデラ・ライリールを守る祝福を与えたまえ」
光に包まれるアデラ様の心臓の辺りが強く光っている。同時に光の粒子が炎を生みだして彼女の中に入っていった。
「これは、炎の守護?!」
『へぇ、彼女は火属性を持っているから、炎の浄化の守護を貰ったんだな。これなら、アイツの穢れた土魔法も消し炭になるくらい浄化してくれる』
『ルベウス、ハチ精霊のナイトとして言葉を選びなさい』
「父上、不思議ですね。我が家は雷属性のライリールなのに」
助かった娘を抱きしめるパトリック様は、静かに首を横に振った。
「ハチ精霊様のナイト、ルベウス様が今仰った、炎の浄化の守護だと。アデラに一番必要な祝福が炎だったのだろう」
良かったと、娘を抱きしめ肩を震わせて安堵している。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




