残りのピースと令嬢たちをとり巻く悪意 9
不思議と怒りは湧いてくることは無く、冷静に観察できた。
焦げ茶色のショートヘアーに、薄い黄色の瞳がまるで人を品定めするような感じで見ている。隊長ではなく副隊長たちに相槌を入れている所をみると、小物な感じがしてならない。
『今は出るべきじゃないんだよね』
なのに、副隊長の近くの騎士達が変な話を始めた。
「これだけ貢献して下さっているのだし、あのパステル家のご令嬢かぁ高嶺の花だな」
「お前には無理でも隊長や副隊長なら、縁談とかできるんじゃないか?」
「それを言うなら、公爵家のケリーはどうよ?」
冗談じゃないわ!噂話でもして欲しくない相手に振らないで!
「ああ、彼女は魔力値も高いっていうから、父上が動き出すんじゃないかな」
何ですって?!
下品な笑みを浮かべているケリー・サンディスタに、思いっきりアッカンベーとしていたら、グラン様の目の前にいたソレット・タールカ様が吹き出した。
彼と視線が合って、慌てて出していた舌を引っ込めたけど、遅かったみたい。肩が震えて、後ろを向いて声も無く笑っている。
気色悪いケリー・サンディスタに対しての怒りが込み上げていたのに、今はそれどころでは無くなってしまった。
『どうしよう、見られちゃった‥‥』
さっきまで笑っていたのに、ソレット第三騎士団隊長がグラン様の隣に移動している。
「グラン様、可愛らしいハチ精霊様ですね。ああ、隠れてしまわれた」
「ソレット・タールカ隊長は精霊が見えるようだが、相手が隠れた時は見なかった事にするのがマナー。
あくまでも精霊主体で考えねば、姿は現してもらえませんぞ?」
年長者の忠告。
とても温かい威厳のある教えのような雰囲気が隊長たちを包み込んだ。
「申し訳ございません。ロードライ家のハチ精霊様とご縁を頂きたく、気持ちが急いてしまいました」
『そうだったんだ‥‥でも、何でハチ精霊様なんだろう?』
「騎士団の隊長ともなれば、もっと闘いに適性のある精霊様を乞うても良さそうだが?」
グラン様の話し方は、切り返しのテンポと要点を突くような内容の振り方が絶妙だ。
「ソレットとダレンは小さいモフッとしたものが好きだったな」
「クラガット隊長、そういう言い方は精霊様に失礼です!」
第二騎士団のクラガット隊長に抗議しているのはダレン第四騎士団隊長だった。彼があのケリー・サンディスタの上司になるわけだけど、ダレン隊長や第四騎士団の者たちはどうなのだろう?
悪意を垂れ流しているあの者は、普通に会話をしながら呼吸をするようにドス黒い陰湿なオーラを出している。
同じ隊に居れば、少なからずとも吸っている訳で、先ほどの副隊長たちに混ざっていた者たちの会話からも嫌な雰囲気が出ていた。
けど、だからと言って同じ隊の隊長と副隊長が悪意の汚染にあっているかというと、違う気がした。
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