残りのピースと令嬢たちをとり巻く悪意 5
「我々だけじゃなく、女王様のナイトが協力してくれるなら、リーナ様の無茶振りを止められますね!」
ん?コホン!私の無茶振りとか何とか言っているけど、レインとレニが、本能的に仲間が増えた事を喜んでいる。
「そうか、リーナの新しい属性のナイトを女王様と誕生させたと解釈して良いのだろうな。悪意への対抗策として、ハチ精霊様も進化する必要があったと。
今回の件、人間のした事に関して、改めて女王様に詫びる気持ちも込めて、このアルフレッド、犯人の起こした事件解明をする所存だ」
『そちらの法で裁きが決まるだろうが、この犯人の狡猾さは承知している。もしもの時は我等が出る』
アルフレッド殿下とロナルドお兄様が頷いているのを見て、さっきの説明でこの2人だけが理解できていたのだと納得した。
物凄い理解力と知識力だと思う。
2人の事を考えていたら、いつの間にかナイトたちに明日の騎士団への試食会の説明をしている。
「あの説明はリーナ様も私も聞かない方が良いでしょうな」
情報を知る事が最善な時もあるけど、知らない方が自然に振舞えるし機転を利かせる事が出来るのだとグラン様は笑っている。
年長者としての経験値が高い分、余裕が感じられる。
騎士団の試食会を控えた今、いろいろな情報のすり合わせが必要なのは確かだけど、心のどこかに何か拭えない焦りの様な何かを感じている。
手が小刻みに震えて、意識していないと強く手を握ってしまう様な逸る気持ち。
「数時間後に相まみえるであろう犯人への武者震いとは、リーナ様は勇猛果敢な心を持っておりますな」
「え?!」
これが、この手の震えが、今の焦りとも思える気持ちが、武者震いだと笑って告げるグラン様。驚いていると、歯までカチカチと震えている。
頬を押さえて、気持ちを落ち着けさせようとしても、どうにも震えが止まらない。
「もしや、こういった敵との対面は初めてですかな?」
「父上、リーナ嬢はまだ15歳。社交にも出ていない身ですし、ましてや敵と相まみえる様な場面など無いのでは?」
穏やかなエマニュエル様の声に、息が上がっている自分に気が付いて深呼吸する。
『今からそれでは、本番で倒れてしまいます』
水属性のアクアが心配してくれたけど、どうしても、心が逸ってしまう。そんな状態の私を見かねてスフェーンがニッコリと笑いかけて来た。
『今しばらく、ハチ精霊に扮してください。心が落ち着きますから』
そう言うと、私の頭を撫でてローブのフードを被せてきた。此処は甘えた方が良いのかもしれない。
頷いて、ハチ精霊の姿になると‥‥スフェーンは私をグラン様に預けてしまった。
ナイトたちがアルフレッド殿下に何かを話している。
途中、驚く声と項垂れる殿下の姿があったけど、小さくなったナイトたちが指輪に消えていったのを見て、兄が殿下を慰めるように肩をポンポンとたたいていた。
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