ハチ精霊とひみつの塔と女王 9
『公爵、今しばらくリーナを借ります』
扉を開けた白のナイトが女王様をエスコートして入っていく。
『手を』
私の目の前に手を差し出した黒のナイトが、もたついている私の顔を覗き込んできた。漆黒の瞳が黒曜石の様に見えて、吸い込まれるように手を重ねると、表れた部屋の中にエスコートしてくれた。
「この部屋‥‥ハチ精霊様の卵?」
大きい卵がハニカム構造の卵部屋に収まっている。
今までと違うのは、螺旋階段で見て来た壁にある小さなハニカム構造の中にあった卵とは、大きさもエネルギーの光も違うということ。
『ここは次代の女王の卵と、その伴侶となる夫たちの卵の部屋です』
「夫、たち?」
『リーナはもう会っています』
いつの間に入って来たのか、部屋には廊下に並んでいたナイトたちが整列している。その先頭に白と黒のナイトが並んで、ニッコリと笑っている。
このナイトさん方が夫なのだと、理解してミツバチの図鑑を見た時の事を思い出した。
ただ、このファンタジックなこの世界にミツバチの生態が当てはまるとは到底思えないし、精霊だから似たような別の感じなのかもしれない。
『そうですね、リーナが思い浮かべているミツバチとは違います。精霊はエネルギーから生まれます』
「エネルギーですか」
『魔力とも言います。この精霊が育つベッドに、夫が自分の魔力を満たしてそこに私が命を吹き込むと属性別のハチ精霊が生まれるのです』
並んだナイトたちを見れば、それぞれに髪の色が属性を表している。
精霊はエネルギー体で、それを体現している入れ物が精霊体。その精霊体を女王様が作り属性をナイトのエネルギーで決めているのだと。
何となく、気が付いてしまった。
「女王様は私の属性のナイトを誕生させたいのですね?」
『精霊王様がローブを渡すだけありますね。そうです、精霊は聖属性を帯びていますが、明確に、揮う魔力が聖属性を帯びた属性のものはありません。皆、修練を重ねては、必要に応じて聖属性と自分の持つ属性を掛け合わせているのです』
「それはハチ精霊様に負担がかかる?」
答えは、2種の魔力を使うから魔力を消費するのと、タイムログがあるということだった。
私は、今までハチ精霊様から手ほどきを受けた時の状況を思い出してみた。確かに、聖属性魔法をかけてから癒しの魔法をかけていたりした。
「最初から聖属性の水魔法であれば、1属性負担が無いのね」
『もちろん、今までの単属性も必要です。ですが、貴女の魔力は新たな属性とも言えるべき尊いもの』
ここまで聞いたら、言わずもがなだ。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




