ハチ精霊とひみつの塔と女王 5
3人が居なくなった後、エマニュエル様が私に手を差し出した。
「アルフレッド王太子殿下は貴女を大切な婚約者だと公言された。あの場だけの事であったとしても、我々に付き従った者の居る中で仰った。この手をお取りください、リーナ・パステル伯爵令嬢」
当主エマニュエル様の声に、エマニュエル様自身とグラン様を除く全てのロードライの者が傅いた。流石にレインもレニも驚きはしたものの、微動だにしていない。
私はそっとエマニュエル様の手に自分の手を重ねた。音も無く現れる王太子印の指輪に周囲が息を呑んでいる。
「さて、皆も目にしたように、私も父もリーナ嬢の指輪に誓った。故にロードライ公爵家はリーナ嬢をアルフレッド王太子の婚約者と認め、その支援をすることに決めた」
緊張した空気にエマニュエル様の凛とした声が響き渡って、グレン様への間違った断罪を正し、ハチ精霊様の命を救って精霊王からの加護を貰ったと説明した。
「正しき行いで、間違った道に進んだ我がロードライ家を救ったリーナ様に、感謝と心からの忠誠を誓ったのだ」
エマニュエル様の言葉に、筆頭執事のゴルディンさんとソートさんが頷き、一斉に使用人の方々頭を垂れて感謝の礼をしてくれた。
「その気持ちは、長くグレン様の中で激痛や苦しみを背負っていた、ハチ精霊様のリンネに向けて下さい。リンネの尊い行いが、グレン様を救っただけでなく、誤解を解く大きな起点でしたから」
リンネが頑張ったからこそ、今があるのだと。私がやったのではなく、グレン様の髪を戻したのもハチ精霊様なのだから。
「貴女は謙虚だな。今後、ロードライ公爵家は貴女の後ろ盾となろう」
当主エマニュエル様の宣言に、私は名実ともにロードライ公爵家の大きな後ろ盾を手に入れた。
「さて、リーナ様。貴女をロードライ公爵家に招いた理由がもう一つある」
グラン様が中庭から見える建物で、ある塔を指示した。
「あそこにはハチ精霊様の女王が住んでいる。実は女王様がリーナ様に会いたいと所望されての」
「女王様が?」
「ブリジット嬢には申し訳ないが、会える者は女王が望まれた方だけ。それ故に、先に部屋に通した。病み上がりだと聞いたから、食事までゆっくり過ごせるように手配してあるから、心配は無用じゃぞ?」
「では行こうか」
エマニュエル様に手を引かれた私を先頭に、中庭の小道を進んで行くと渡り廊下を突っ切って、長い回廊へと出た。幾重にも繋がれた建物を繋ぐような回廊は、エマニュエル様やグレン様が子供の頃走り回ったのだとグラン様が話している。
「この茂みが丁度目隠しになっていての、呼ばれた者と一族の直系だけが通れる」
「リーナ様、我々はここまでの様ですね。此処で待っています」
レインとレニと一緒に、筆頭執事のゴルディンさんと御付きの人たちが立ち止まった。
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