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白井由紀の場合①





「白井さんのことが好きです。付き合ってください。」





高1の春休みに入る直前、1通のメールが来た。

うーん好かれてしまったみたいだ。ちょっと弄りすぎたか。

ごめんよ三上。君に悪気はない。ただ、私は学校生活を楽しみたかっただけなんだ。ちょっと大人しい君のことを興味本位で話かけただけなんだ。



自分で言うのもアレだが、高校3年間、私はクラスで注目を集める存在だった。せっかくの高校生なんだからと常に明るく笑顔で、誰とでも仲良くしてみんなを巻き込んで楽しく過ごしたかった。まあ何より目立ちたい願望があった。

容姿、成績もそこそこ問題なくイケてると思っている。故に私みたいな明るいキャラに話しかけられて好かれてしまうこともまあある。ちなみに高校1年間、三上を入れて、5人に告られた。



恋愛に関して思い返せば、まだ子供だった。クラスで1軍でかつイケメンと付き合いたい。誰から見てもお似合いカップルになりたい。そう思っていた。だからごめん。君とは付き合えないんだ。




「告白してくれてありがとう。でも三上とは友達でいたいです。ごめんなさい。クラス離れても会った時に話しかけに行くね!」



春休み入って少し経った頃に返信した。






三上春馬。同じクラスだった人、入学してすぐの席替えで私と三上が前後の席になった。三上は物静かでクラスとの距離が少しあったように感じた。



そこで私の出番。当時調子に乗ってた私は毎日後ろの席の三上に話しかけまくった。



「ねえ、数学なんだけど、ここわかる?」

「学校終わった後何してるの?」

「三上〜、先生来たら起こして〜〜」

「三上って話すとほんと面白いね!意外と毒舌なんだね!」

「はいはーい!学校祭実行委員に三上推薦しまーす!」



徐々に私が三上の存在をクラスに広めていき居場所を作ってあげた恩人なのである。(厚かましい)




三上はなんだかんだ優しいから私のペースに飲まれながらも合わせてくれたのだ。私みたいな自己中心的にしか考えてない人に恋に落ちちゃだめだよ。その気にさせた私も悪い。





話を戻して、その後三上とは同じクラスになることはなかった。三上はクラス内でも飛び抜けて頭が良く、2年生からは上級大学を目指す進学コースに行った。

会った時話しかけるとは言ったものの、その後一切会うことはなかった。








まあ人生なんやかんやあって、私こと白井由紀は26歳になった。普通の会社員、特に目立つこともせず、普通の暮らしを心がけているところだ。私も恋愛やら友人関係やら色々経験してあの頃のような目立つキャラはやめることにした。



4月から新しい勤務地で働くことになった。それで3月に新しいマンションに引っ越した。部屋の片付けをして、ごみ収集カレンダーを見て「あれ、今日燃えるゴミの日じゃんか!」と急いでゴミをまとめて捨てに行くところだった。私の隣の人と家出るタイミングが偶然あってしまったのだ。




「あっおはようございます。お会いできてなかったので挨拶まだでしたよね。あの、先週から引っ越してきたーー」




わー、すごいイケメン。芸能人みたい。

あっこっち見た...なんかめっちゃ目開いてるけど...あれ、どうした?



その人は私の顔を見た後、表札を見て



「ああ...ども」



とだけ言って先に行ってしまった。

その後、隣に住んでいる人とは特に会うことなく、忙しい日々を過ごしてきた。







あちゃーやらかしてしまった。

このマンションはオートロックなのだがどうやら鍵を家に置きっぱなしで出てきてしまった。

5月半ば、夜の11時。仕事に追われて遅い時間になった挙げ句、鍵を忘れる失態。

うわ、どうしよう、この時間人全然居ないし...

ほんと、最悪。一か八かで隣の人に開けてもらうか...



隣の人、一度しか会ったことないけど、家に帰れないのは困る。今日頑張ったご褒美にコンビニでケーキまで買ったのに!

仕方ない、一度しか会ったことないけど隣の人に助けてもらおう。そう思って勇気を出して隣の部屋のインターホンを押した。



「...はい」



あっよかった、でた。



「あっ夜分遅くにすみません。隣に住んでいる白井です。実は鍵を忘れてしまい玄関入れなくて困ってます。...すみませんが開けてもらえないでしょうか」



「......」



沈黙が長いな、もしかして私のこと忘れてて不審者だと思われてるかも...ダメか...



「...わかりました。今開けます」

「...!!すみません本当にありがとうございます。失礼しました」



そして、ドアを開けてくれた。よかったー。本当に助かった。





次の日、昨日ドアを開けてくれたお礼にと菓子折りを渡そうと思った。

またインターホン押したら不審がられるかも

そう思って菓子折りをドアに掛けようとした時、ちょうど隣の人がドアを開けた。



「あっすみません。昨日助けていただいた隣の者です。お礼にと思いお菓子買ってきました。よかったら食べて下さい。それじゃあ」



タイミングが悪い、ドアの前でゴソゴソしすぎたか。不審がられる前にと思いすぐ声をかけ、立ち去ろうとした。



「...わざわざありがとうございます。...あの、意外と量があるので、よかったらうちで食べて行きませんか」



えっとは思ったが、昨日助けていただいたのにここで断るのは違う。



「あっじゃあ......すみませんお邪魔します」



こうして隣の人の家にお邪魔することになった。



「どうぞ、空いているところに座ってください。コーヒーは飲めますか?」

「あっはい。コーヒー飲めます。ありがとうございます」



部屋に入ったがとても片付いている...というか物が少ないからかあまり生活感が感じられなかった。

とりあえず言われて、ソファに座って待ってると私の謝罪のお菓子とコーヒーが出てきた。

男の人はテーブルの横にコーヒーを置き、床に座った。




「あの、いきなり家に呼んですみません。単刀直入に聞きます。俺のこと覚えてますか?」



ボクノコトオボエテマスカ???

一瞬、頭の中に宇宙が広がった。

えっ、出会ったことないよね...?こんなイケメンなら忘れることないだろうし...



「いえ...覚えてないです...?」

「...やっぱり覚えてないか」

「...あの、どなたかと間違えてませんか...?」

「いや、白井由紀さんのこと間違えることはないです」



!?!?私の名前まで覚えてる、だと...?!

えっどうゆうこと?私がパニクってる中、男の人は笑い出した。



「ごめん、困らせるつもりはなかったんだけど...三上春馬っていう人覚えてない?高1の時、同じクラスの」

「えっ......三上...?三上春馬...?」

「そうそう。三上春馬」



まさか...あの物静かで私がたくさん弄ってたあの三上......??



「......思い出しました。...オヒサシブリデス...」

「なんで片言なの」



そう言って三上は笑った。



「本当に三上なの...?...全然わからなかった、です」





だって三上は...特に前髪が長くていつも邪魔そうにしてたし、そもそも男の子にしては髪の毛長い方だったような、、、

今の三上は髪短めでサッパリとしている。オフだからか4月に会った時と違って前髪は下ろしてるけど、それでも顔全体がちゃんと見えて、かつ顔がはっきりと見える...これが本来の姿なのか。なぜ隠していた。



「まあ、分からなくて無理ないよな。当時と違うってか」

「あの、本当にすみませんでした...」

「いいよいいよ」



と言いながら笑ってた。




「まさか、今回家に呼んだのって高校の時のわたしが三上のこと弄りすぎたから復讐ってこと...ですか?」

「いや、違うよ。当時、俺がクラスに馴染めてなかったから気を遣ってくれたんだろ?白井さんのこともよく知れたし、感謝してる」

「...そうですか。それならよかったです」

「敬語じゃなくていいよ。前みたいに三上って呼んでよ」



いや、あなたがわたしの知ってる人じゃないから困ってるんですよ。



「じ、じゃあ、三上」

「ん、何?」



うわ、めっちゃいい顔。いいボイス。くっこれだからイケメンは...

なんかこっちが恥ずかしくなるわ。

 


「いや、なんかわたしの知ってる三上じゃないから緊張してる。」



もういいやと思い、素直に言った。

心を開いてくれたと思ったのか三上は当時のことを語り出した。




「高1の時、白井は雲の上の存在だと思ってたよ。ずっと好きだったからダメ元で告白してなんてしたけど、やっぱり見てくれないかって思って。」



ギクっ や、あの三上は決して悪くないんです。当時のイキってた自分が悪いんです。

そう思って目を逸らしてしまった。



三上は話を続けた。



「当時は振られたけど、やっぱり諦めきれなくって変わろうと思ったんだ。容姿とか、あと白井さんみたいに人から頼られる存在になろうと思って色々努力したんだ。」

「そ、そうなんだーー......」

「白井さんに会うつもりはなかったんだけど、偶然隣に引っ越して来た時はすごいびっくりした。俺、すぐに白井さんだってわかったよ。当時と変わらずキラキラした顔してた。」

「そ、そうかなーー......」

「本当は海外出張が多くてあまりこっちにはいないんだけど、ここにいたら白井さんに会えるかもと思ってちょっとこっちでできる仕事を増やしてるんだ。会えて嬉しいよ。」



三上はキラキラした顔で私の方を見る。

くそっこれだからイケメンは。

でも、わたしはそんな会う価値のある人間じゃない。



「...あの、私、三上が思うほどいい奴じゃないよ。三上に話しかけたのも私の勝手な都合でだし、それにあの頃の私はもう居ないよ。だから三上が憧れるよう存在じゃないよ。」





私は自分が目立ちたいからと自己満足で他人を振りまわし、クラスでの地位を作った。注目される反面、妬み嫉みも多かった。特に恋愛はカースト上位と付き合って碌なことがなかった。高校2年の時に当時カースト上位にいる人と付き合ったがその後浮気が発覚した。そして浮気相手がわたしの知ってる人で、寧ろ向こうからすればわたしの方が付き合ってる歴が短く、浮気相手だったみたい。そこから人間関係が崩れていった。

私が目立ってたからか噂がすぐ広まって悪者にされて、クラスでも白い目で見られた。もうあんな思いしたくない。そう思って目立つことをやめて、あんなに勉強も頑張ったのにやめて、なあなあに生きてきたのだ。



「...私は本当に最低なんだよ。当時のことは謝る。三上ごめんね。私のことはもう忘れて...。もう会うのはやめよう。」



私に憧れてそして恋をした三上がきっと今の私を知ると幻滅しちゃう。そうなる前に離れないと。



「...コーヒー、ごちそうさま。昨日は本当に助かったよ。それじゃあ帰るね」



ソファーから立ち上がって、帰ろうとした瞬間、腕を掴まれた。



「...じゃあ当時の俺を自分の都合で振り回して置きながら今回俺に助けてもらった白井さん。俺、白井さんから何かしらのお礼貰ってもいいってことだよね?」

「...えっ?」

「これから俺のこともっと知ってほしいし、今の白井さんのこと知りたい。だからこれからも俺と会ってほしい」

「...あの、このお菓子だけじゃ、ダメですかね。」

「ダメです。てか、再開してみて思ったけど、やっぱり俺、白井さんのこと好き。これからアタックしていくから覚悟して。」



三上は真剣な顔で言った。




これは立場の違う2人が過去と未来と向き合う話である。







初めての作品です。よろしくお願いします。

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