退廃芸術文化祭
ナチスドイツの指導者で第二次世界大戦を引き起こしたアドルフ・ヒトラーは若い頃、画家になろうとして失敗した。美術学校を受験するのに必要な課題であるデッサンを提出しなかったため不合格になったらしい。芸術の才能はともかく、出すべきものを出さないで合格しようと思ったのなら、判断力に難ありだろう。
そんな輝かしい芸術性と判断力の持ち主がドイツの政治家となり、美術の分野に口出しするようになる。
自分好みではない美術品を退廃芸術と決めつけ、それを破壊したのだ。
文学や言論においては焚書という派手な演出で弾圧したヒトラーが美術業界で行ったのは退廃芸術の文化祭だった。ポジティブな意味合いで作品を展示するのではない。最低最悪の駄作を晒し物にする意図で展示会を開催したのだ。
そのイベントで公開されたのは、ヒトラーが嫌う前衛芸術やユダヤ人芸術家の作品だった。ヒトラーは、これらの作品を貶める目的で退廃芸術文化祭の開催許可を出したのだが、彼の予想に反し展示会は大盛況だったそうだ。
美術学校に合格できなかったヒトラーの芸術性と判断力は、ここでも過ちを繰り返したのである。
ヒトラーが現代日本に転生し「小説家になろう」の作品群を読んだら、これらを退廃的とみなすだろうか? という疑問が湧いてきた。ヒトラーに認められるのも困りものだが、自分の作品が高評価を頂戴したとしたら、やはり感謝すべきなのだろうか? これは難問だ。私の頭では到底、判断できない。