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008 CODE NAME:DOG 本編とプロット

「ヒューバート!」


 男が叫ぶ。辺り一帯は戦場と言わんばかりのむごい姿に変わっていた。

 辺り一帯は煙が上がり、炎も消えきっていなかった。瓦礫が散乱する中、血まみれで倒れていたのは親友のヒューバート・ブリック――コードネーム・ウォッチャーだった。

既に駆けつけた時には事切れる寸前で、辛うじて声を出せる程度。

 静かに上体を起こしてやると、いつも見る誰もを受け入れる優しい笑顔が返ってくる。こんな時も自分ではなく周りを考えてしまうのだから、天性のお人好しだと彼――コードネーム・ドッグは思う。


「……ゲホッ、ど、ドッグか」

「喋んじゃねぇ! い、今〈スキン〉を呼んでくるから――」

「待て……。俺はもう長くない。手を、出せ」

「……っ」


 血だらけの手。震える指。優しく微笑むウォッチャー。

 秘密組織「センス」に所属している組合員なら、その意味は分かるだろう。

ウォッチャーの能力を、ドッグへと受け渡そうとしていたのだ。


 彼らは人体実験の末、組織が開発した特殊能力の植え付け実験に耐えた被験者達だった。そしてそれら五人で編成された特殊班。

――の、はずだった。


 コードネーム・トーンが裏切るまでは。


 ――組織が開発した特殊能力「ファイブ・センス」は五感を用いた特殊能力で、それらを最大限に強化した超能力とも言える。

ウォッチャーであれば目、ドッグであれば鼻、スキンであれば触覚、ソムリエは舌、そしてトーンは耳。

 それぞれ人間離れした超能力を得た五人は、組織の命令に従って様々な任務を執り行ってきた。それは紛争の解決だったり、重役の暗殺だったり様々だ。しかし全て表沙汰にならない黒に近いグレーな仕事ばかりだった。

 元々死ぬかもしれない人体実験に付き合っている以上、そんな仕事をすることだなんて薄々理解していた。


 だがある日彼らは知ってしまった。

組織が新たな能力――「プラスアルファ」を開発していることを。

 プラスアルファは五感から外れた感覚、いわゆる「第六感」を強化された存在だった。そこまではいい。そこまではファイブ・センスの彼らと同等だ。


 問題は組織が合意もなくスラムから少女を連れ去り、無理矢理その力を植え込んだことだ。正義の味方でもない彼らだったが、それに怒りを覚えたのは間違いない。

元々気の狂った裏組織だと思っていた。いつかは反旗を翻し、帰らを地獄に陥れんと。



 *



「ここが……志野原探偵事務所……」


 不安を胸に、少女が一人。

呟いた探偵事務所が入っているビルディングの前に、彼女は居た。

 簡素で少しボロとも言えるその賃貸ビルの三階ほどの窓に、汚い字で「志野原探偵事務所」と書かれている。人通りの少ない往来で、その汚い字を見る人間は多くない。

 ゴクリとつばを飲んで少女は決心する。ビルの入口に立ち、目的の階層へと足を進めた。


 ビル相応の部屋の入り口は、アルミ製のありきたりなシンプルなドアだ。そこにもチラシの裏地の余白に「志野原探偵事務所」と書かれている。そこは意外にも綺麗な字で、人に大々的に見せつけている窓ガラスに書かれた字とは異なっていた。

 どこか女性らしさを感じさせる字ではあったが、あまりにも上手とは言えない。しかしながら窓ガラスに比べれば十分にきれいな字だった。


 少女が決心して扉に手をかけようとした時だった。扉の方から先に開いたのだ。まだノックもしていないのに、だ。

驚いて後ずさると、中から出てきたのはこんな素朴なビルに似つかわしくない外国人の美女だった。

 長い赤髪にヘーゼルカラーの大きな瞳。顔立ちのはっきりした美しい顔。そして何より目が行くのは――メイド服だった。


「お客サン!? キャー! 入って入って! 今飲み物用意しマス!」

「えっは、はい……」


 美女から繰り出される言葉は片言で、ギャップ萌えというものか不覚にも少女はキュンときてしまう。しかしながらこれから頼ろうとしている相手がこんな格好(メイド)なのはいささか不安であった。


 通された事務所内は小綺麗にされていて、あの適当な文字からは想像できない。


 女性は飲み物と、一人の男を連れて戻ってきた。二人は少女の対面に座ると、女性は配膳をはじめ、男性はじっと少女を見つめている。様子から見てこの男が探偵事務所の志野原という人物であるのは、少女ですら分かった。


「俺が志野原和也だ。こいつは連れのオレンジ」

「石口 マキといいます……」

「で……用件は?」

「あ、兄を助けて欲しいんです」


 思ったよりもだらしない声だったが、聞いてきたあたり仕事はしてくれるのだろう。少女――マキはポツポツと依頼内容を話し始めた。



 石口家は裕福といえる家庭ではなかった。しかしそれでも彼らなりに幸せというものが存在した――一年前までは。

 マキの兄である(ハジメ)は、地元では有名なギャング・ブルーシャドウズに入ってしまった。マキが最後に聞いた彼の言葉には「家族のためだ」という言葉が込められていたが、家族を思うのであれば入らないでほしいという気持ちが強かった。

 しかしそれに抗えないのは、地元に根を張るブルーシャドウズに逆らえば兄の始はおろか家族まるごと消し去られてしまうのだ。


 始は地元でも数少ないハッキングのセンスに長けた人物であった。彼にとってこの技術は善行に捧げるものだったが、ギャングのボスにとってはそんなことは関係ないのだ。

敵対勢力に引き抜かれる前に、自分の手元に置いておきたいとブルーシャドウズは彼を取り入れた。

 半ば脅しに近いものであった。だがその力は絶大で、彼らのような一般人が逆らえるはずもない。


「ふーん。で、お嬢ちゃんはギャングから兄貴を取り戻してほしい、と」


 ぷち、ぷち。マキが喋っている間、ポケットから新品の薬――鎮痛剤を取り出して、アルミ箔から一個ずつ出しては小瓶に移し替えている。鎮痛剤一箱が空になると、またポケットから新しい薬を取り出して同じことをする。


「そいつはつまり、俺らに死んでくれっつってんのか?」

「……っ」


 ブルーシャドウズに歯向かった人間の末路なんて、子供ですら知っていることだ。いくら依頼とはいえ、それを探偵に頼むのだ。極端に言えば死を望んでいるようにも見れる。


「もうここしかないんです! 色んな方を回りましたが、断られてしまって……」

「そりゃそうだろーよ。この街で生きるにはブルーシャドウズ様の顔を伺って生きなきゃいけねぇ」


 和也が薬の箱を逆さにして振る。それ以上アルミ箔に包まれた薬の束が出てこないのは、もうこの箱全部を小瓶に移し替えたということだ。

ポケットに再び手を入れるが、はたと手を止める。もう薬がないのだ。


「チッ……。おい、マキ。いくら出すんだ?」

「へ?」

「金だよ金。まさかタダで仕事してもらおうなんて思ってないよな?」

「あ、そ、その……」


 マキが取り出したのは分厚くなった紙袋。中を覗けば百万弱は入っている。裕福な家庭でもないのにこの金を用意できたのは不思議である。しかしこれは両親がこの兄妹のためにコツコツためてきていた将来のためのお金。

 兄が居なくなった今妹である娘に渡すはずだったが、その存在をしったマキは兄のために使いたいと借りることにした。これはいずれ、彼女が大きくなったら必ず返すと約束して。

 和也はそれを受け取ると、中から数枚取り出してマキに渡す。


「え……?」

「二つ隣の町の薬局であるだけ鎮痛剤買ってきてくれるか?」

「ドラッグストアならすぐそこに……」

「昨日買い占めたから多分置いてないんだよ。で、頼めるか?」

「あ、は、はい!」


 来た時とは異なる足音。軽快なパタパタという音が遠のいていくのを確認して、和也はソファに体を更に沈める。

力なく上げられた右手が、宙をくるくるとかき混ぜるジェスチャーをすれば、合点が行ったオレンジが動いた。

 オレンジは慣れた動作で換気扇を付け、窓を開けて空気を逃がす。ついでにその足で和也の部屋へ行き、残りの鎮痛剤とハンカチを持ってくる。


「柔軟剤きつい子だな……金に余裕がない割には外国産のやつ使いがやって……うっ……」

「カズヤ! ハイ!」


 オレンジは持ってきた鎮痛剤をテーブルに置く。その際にいれたコーヒーが既に消えていることに気付いた。

そしてハンカチは彼の鼻を覆うようにかぶせる。ニオイが遮断された和也は少し表情を和らげた。


「ぉぇっ……しっかし、ブルーシャドウズか。やっと潰せるな」

「チマチマ情報を集めたカイがあったネ」

「悪いな巻き込んじまって」

「イイノイイノ。ワタシは一生カズヤに付いていくって決めてるカラ!」


 無邪気な笑顔を見せるオレンジに、ふと微笑み返す。この女はどんな地獄でも本当に付いてくるのだ。それが頼もしいと思えたことが微笑ましくなった。


「だが俺達だけじゃ限界がある」

「ウフフ、そう言うとおもッテ」


 オレンジがポケットから取り出したのはスマートフォン。そしてその画面に書かれているのはラファエル・ギャルニエと、スヴェトラーナ・カルボフスカヤの名前。久々に見るその懐かしい名前。素直に和也が喜べなかったのは、オレンジが知らない間に連絡を取り合っていたからだ。

 不機嫌そうに画面を見つめれば、愛おしそうなオレンジの視線が降ってくる。


「大丈夫、ウワキしないヨ」

「スヴェトラーナはまだしも、ラファエルは口説いてくるだろ。俺がムカつくんだよ」

「ウフフ。ジャア早速二人に、すぐにでもこっちに来れるか聞いてみるヨ」

「あぁ、頼む」





【以下、思いついたプロットのみ】


ラストバトル付近

ビルの上 夜


ギャングのボス、人質になっているマキ


「約束通り一人で来たようだな、志野原ァ!」

「どーも」

「ごめんなさい、志野原さん……」


なんやかんやあって、遠方からスナイパー弾が吹っ飛んできて、ボスの側近がぶち抜かれる。


「ひ、一人と言ったはず……!!」

「あぁ、ここに居るのはオレ一人だぜ」


1500m先のビルにオレンジ。




「それにお前らここに居ていいのか?ボスの娘に電話は?」

「なに!?」


電話すると泣いてる娘。

電話をかわってでたのは、スヴェトラーナ。


「こんにちは、いいお日柄ね。飛び散った血液が乾くにはいいお天気よ」

「貴様……、何者だ!」

「スヴェトラーナ・カルボフスカヤ。闇に足を踏み入れているあなたなら、聞いたことあるでしょう」

「…………じ、純白の悪魔……!」

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