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001 dirty,bloody,CINDERELLA(女主人公、異世界、戦闘)

連載が終わった魔王アリスの原型みたいなもの。

20話くらいかいて放置した。

最終更新が三年前なので、もう動かないかも。

◆あらすじ

 主人公であるルースフェリア・リヒトホーフェンは、母子家庭で、母親が死んだところを王族に引き取られる。昔、母が王族に対して多大な借りを持っていたため、それを返すために引き取った。

 だがそれを知らない他の王族貴族達に妬まれ、いじめの標的にされる。呪いを受け、体は魔に取り込まれていく。

 魔の力に魅入られたと、魔女として斬首刑にされる。その後、浄化の炎という名のただの火葬を受ける。

 ……が、灰から生き返る。そこで完全なる魔となる。不死。

 力を安定的にかつ完全に扱えるようになるため国を出ることに。その際、唯一慕ってくれていた義理の弟に「五年後にまた会いましょう」と言って去る。

 しかし、実際帰還したのは、十年後。戻ってきた国は、崩壊寸前。

 魔王とも言えるルースフェリア――ルースは、国を再建するべく動き出す……。



◆本編(2話目)


 ――この力が恐ろしいものなのは、ルースフェリアはよく理解できた。

 斬首台に乗って瞳を閉じた後、物凄い激痛が首へ走った。ごとり、と自分の視界が動き、首の切れた体がそこにあるのが見えた。

 ……これが最後の記憶。


 ではない。


 そのあと民衆が、遺体を殴る蹴るなどしたときも覚えている。あまりにも長い時間遊ぶうえに、子供まで参戦するものだから、見かねた衛兵が回収したのも覚えている。

 なんなら胡散臭い神父が「浄化の炎に焼かれ、次産まれた時はまっとうな人間として――」なんて馬鹿げたことを言っていたのも、覚えている。

 もちろんめちゃくちゃな高火力で、灰にされたことだって忘れていない。

 ルースフェリアは処刑されてからずっと記憶があった。多分その気になれば喋れたと思うが、化け物にはなりたくなかったのでずっと黙っていた。


 そして火葬されたあと、教会裏の墓地に適当に撒かれたのを覚えている。あの神父だけは絶対に許さない。……が、土に埋めないでくれたのは感謝したい。


 今夜、ルースフェリアは灰から新たに産まれた。灰が固まり人の姿を生成したのだ。衣服までは生成出来なかったが、ルースフェリアにはそんなこと関係はない。

 魔女のような指を鳴らせば、一瞬で服装が身を包む。

 癖で町娘のようなワンピースに着替えてしまったが、これは今の自分には似合わない。もう一度指を鳴らすと、今度は様相が一転した。


 灰に汚れたような七分袖のインナー、足のラインがよくわかるタイトなパンツ。黒いショートブーツ。

 前々からずっと興味があったが、やはりスカートとは違って動きやすい。トントン、と靴の調子を確認して、問題なさそうだなとルースフェリアは感じた。

 だがこれだけでは何か物足りない気がした。パッと見た感じでは、騎士の訓練中に着るような運動服みたいだし、街の少年みたいだ。


「あぁ、これだ」


 両腕を夜空へと掲げた。すると、その空の闇を食らうかのように腕や肩、背中と衣服をまとっていく。最終的に闇を孕んだかのような漆黒のコートで包まれた。

 膝まであるそのロングコートはまるで命を持っているかのような感じがした。


「まずは神父に礼を言わねば」


 ごきり、と首を鳴らした。首には、切られた痕が濃く残っていた。



 目の前の教会に入る前に、城下町の中心にある時計塔を一瞥する。あそこも下は教会なのに、あの場所に埋葬されなかったのは、やはり元が町娘だからだろうか。

 向こうのほうが神聖な場所だしなぁ、とルースフェリアは思った。


 教会には案の定、施錠がされていた。一度死んで目覚めたせいか、妙にはっきりしている。死ぬ前よりも鮮明に、魔法の使い方がよくわかった。生まれ変わった効果だろうか、とルースフェリアは考えた。

 黒い指先で扉の取っ手を撫でると、ガチャン、と解錠された音が聞こえる。そして歓迎するように扉が開いていく。静寂が包む教会へ足を踏み入れた。

 神聖な場所であるからして少しは苦しくなるのかと思ったが、何も感じない。どころか、不法侵入だというのに、ルースフェリアは楽しそうだった。

 コツコツ、ブーツを鳴らしながら教会内を歩いていると、「誰だね?」と声がかかる。あの〝クソ神父〟だ。少し物音を立てすぎたのかもしれない。

 年寄りの癖に敏感なんだな、と煩わしさを感じた。


 微笑みながら振り返ると、神父は酷く驚いた顔をした。というか、青ざめていた。

 教会内は薄暗かったが、ちょうど月の光が天窓を伝い、ルースフェリアの顔を照らしていた。


「今晩は、神父様。罪を告白しに参りました」


 神父は驚き――否、恐怖のあまり、手に持っていた燭台を落としてしまった。だがそれは、地面に着くことはなかった。

 ルースフェリアが空中で止めたのだ。

 人差し指を上へと動かすと、神父の目線の高さに燭台が戻る。勢いよく動いたのにも関わらず、灯る火は消えぬままだ。


「お前は……お前は死んだはず!」

「えぇ、そうです。神父様に火葬され、裏庭に雑に捨てられましたとも」

「悪魔め……!」


 傍目に見れば悪魔だろう。だがルースフェリアに数々の所業を行ってきた他の人間達のほうが、よっぽど悪魔である。

 それにしても先程神父に燭台を差し出したのに、神父は何故か受け取ってくれないので、ルースフェリアは嘆息する。

 代わりにルースフェリアは教会内のろうそくを全て灯すと、燭台の火を消した。だいぶ力には慣れてきた様子だ。

 神父はそんなルースフェリアを見て、腹を決めたのか、横にあった長椅子に座ると深呼吸をして話し始めた。


「……私を殺すのか」


 殺す。確かに雑に扱われて腹は立ったが、脅かす以外に何も考えていなかった。というか、殺したい相手は他にいるのだ。

 ルースフェリアはその白金の髪を揺らしながら、ブーツを鳴らし、神父の横へ座った。


「殺すなら殺せ。どうせこの教会は()()()()()()()。」

「切り捨てられる?」

「あぁ――」


 斬首刑の翌日、城からお触れが出回った。よりよい国のための、ふるいをかけると。若い男女は国のために働き、不要な人材建物、その他諸々は期日内に退去。それに従えない場合は極刑に処される。

 この教会もまた、それに含まれる。地域に密着した地元の教会なんぞ、大手の教会に比べたら潰されてしまう。都市開発が進めば、ここは市街地になるだろう。

 魔女を嘲笑い焼却した翌日に、そんなお触れが出回るのだから、たまったもんじゃない。そう思ったのは、あの斬首の日、ルースフェリアを馬鹿にした人間のほとんどがそう考えただろう。

 あの忌々しい義姉は自分の気に入らないものは、徹底的に排除する主義だ。しかも庶民となれば不要なものは簡単に切り捨てるだろう。


「あの女が全てを握っている。ダレン王子は王の座についたが――」

「ダレンが?」

「あぁ。前代国王が何者かに毒殺されたのだ。」


 何者かに、とはいうが多分誰もがその存在が義姉だとわかっているはずだ。それを口にしようものならば、ルースフェリアと同じ道を辿る羽目になるだろう。ただし、生き返りはしないが。

 どうやらこの短い間に色々なことが起きていたらしい。いちいち口から聞くのを煩わしく思ったルースフェリアは、神父の頭を両手で掴んだ。神父が抵抗しなかったのは、ルースフェリアに硬直する魔法を掛けられたからである。

 ルースフェリアはその長く伸びた黒い指先を、神父の頭へ突き刺した。神父は痛みこそ感じはしなかったが、何かを吸い取られているような気味の悪い感覚に襲われていた。

 見た目こそ不気味だが、ルースフェリアはこうして神父の知識をコピーしていた。そしてある程度網羅したところで、手を離した。神父の頭からは血が出ることもなく、髪型も崩れてすらいない。


「これで貴方を赦します」


 ふと教会内の全てのろうそくが消えた。

 ルースフェリアの体はふわりと宙へ浮いた。天窓がギギギ、と重たい音を立てて開いていく。漆黒の様相の彼女ではあるが、月に照らされたその姿。神父の目には天使に見えた。

 完全に居なくなるのをボーッと眺めていると、足元で火のついていない燭台が転がっているのに気付く。月が雲に隠れ、教会の中は暗闇に包まれた。



 ルースフェリアはあのまま空を飛びながら、城へと来ていた。テラスに降り立つと、部屋の中を覗き見る。カーテンで覆われた暗い部屋を外から見れるのは、ルースフェリアが出来る所業。透視だ。

 夜だからかやはりベッドで眠っているようだ。近くに使用人も側近もいないのを確認して、そっと扉を開けて入った。夜風がカーテンを遊び、ふわりと舞う。まだ起きる様子はない。

 彼をどれだけ見ていないだろう。二週間は会っていないかも知れない。執行日にも部屋にこもっていたし、この姿を見てルースフェリアだとわかってくれないはずだ。


「起きていますか、ダレン」


 そっと声を掛ける。反応はない。当然だ、今は深夜である。

 誰も聞いてはいないのに、ルースフェリアは懺悔するかのように話を続ける。


「私は魔の力を手に入れました。この力を完璧にするために旅に出ます。五年……五年後、また会えたら、一緒に国を直しましょう」


 起きているか聞いているかなんてわからないのに、ルースフェリアは言葉を続けた。そんな叶うかわからない約束をして。

 小さく「さようなら……」といって、ルースフェリアは窓へと足を向けた。

 その時だった。


「姉様! 置いていかないで!」

「……ごめんなさい。もう貴方に姉様と呼ばれていいような()()ではないの」

「……じゃあ、じゃあ。待ってるから。絶対」

「ええ」


 必ず、戻りましょう。

 そう言って、ルースフェリアは夜の闇へ消えていった。

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