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呪われ英雄騎士 国が理不尽な目にあっているので、報復することにした  作者: 柊遊馬


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第134話、柱を黙らせろ


 ピラミッド手前の溝に、俺たちは身を隠していた。

 光線魔法を放つトラップ――いや、ゴーレムのような柱によって、合同攻略パーティーの冒険者七人がやられた。


「この溝がなかったら、全滅していたかもな……」


 撤退は不可能だろう。ピラミッド自体、窪地にあって、入り口に向かうためには高い斜面を下ってきた。下りはよいよい、上りはそれなりの傾斜だから、登ろうとすれば柱に狙い撃ちにされる。


「つまり、オレらはあの柱をぶっ壊すなりして、ピラミッドに入るしか生き残る手はねえってことか?」


 シガが首を横に振れば、ジンが言った。


「あの四つの柱さえ潰せれば、撤退もできる。……まあ、そこまでしたなら進んでも同じことだが」

「突撃しますか!?」


 カミリアが力強く言った。リチャード・ジョーが溜息をつく。


「柱の的だ。食らえば盾すら溶けて、やられちまう……」


 彼のパーティー『鉄血』のメンバーである重盾持ちの騎士が戦死している。頼りになるはずの盾すら貫く柱の光線である。


「複数、あるいは全員で突撃は?」


 カミリアは言ったが、周りは失笑した。


「何人が犠牲になるんですかね……」


 シガが皮肉げに言えば、アルカンのリーダー、ベガが事務的に言った。


「我々冒険者は、カミリア殿ほどの勇気を持ち合わせていないのですよ」


 冒険者は騎士ではない。正々堂々とか、正面からの突撃に執着はしない。命あっての物種である。


「勇気? 蛮勇の間違いじゃないか」

「貴様っ!」


 シガの言葉に、カミリアがいきり立つ。俺は口を挟む。


「やめないか。……今は身内で争っている場合じゃない」


 視線を転ずると、グラムの魔術師が鳥型の使い魔を飛ばした。高速で飛ぶそれで、ピラミッドに近づこうというのだ。


「――!?」


 光線が俺たちの頭上を飛んでいった。一本、二本――


「やられました! 撃ち落とされた」


 使い魔を使った魔術師が報告した。右手からベルデが身を低くしながらやってきた。


「鳥ですら撃ち落とすなんて、正面から挑んでも、階段に達する頃には蜂の巣だな」

「……」


 カミリアは何も言わなかった。先ほどの会話を聞いていたわけではないはずだが、ベルデの言葉は痛烈な批判に聞こえたのだろう。


「どうだった? そっちから来たということは――」

「ああ、空堀はピラミッドの周囲をグルリと一周してる」


 左から偵察に堀を進ませたベルデらが右から戻ってきたということはそういうことだ。


「あの柱は、各方向にあった。正面を避けて裏に回っても、狙い撃たれる」

「この溝から攻撃魔法をぶつけるというのは?」


 一同の視線が、ベガやリルカルム、グラムの魔術師らに向いた。


「やってみましょうか」


 堀から僅かに頭を出して、リルカルムが唱える。


「サンダーボルト!」


 斜め上から強烈な電撃が走り、ピラミッドの中ほどにある柱四本に炸裂した。ベガが驚嘆する。


「凄い。正確かつ強力な一撃!」

「伏せろ!」


 柱から光線が返ってきた。リルカルムも、様子を見ていた面々も頭を下げて、堀に伏せる。地面に激突し爆発する光線。


「今さらだけど、熱だけで爆発するって、相当な威力よ!」


 リルカルムが声を張り上げた。まあ、そうだよな。可燃物でもないのに爆発させてしまう熱なんて、盾も溶けちまうわけだ。


「どうやら、カウンター機能も持っているようですね」


 ジンが指摘した。


「一撃くらうと反撃しないと気が済まないようです」


 そっと頭を出した弓使いが、様子を確認して素早く身を引っ込めた。


「ダメです。柱は四本とも健在です……!」


 リルカルムの攻撃魔法でも効かないとか。魔法防御もかなり強力なやつが施されているようだ。シガが口を開いた。


「弓で狙撃できるか?」

「ここからでは難しいですね。距離がある上に、こちらより高い場所にあります」


 ウルティモの弓使いは首を横に振った。


「カウンターされるとなると、こっちも落ち着いて狙うのは難しいですし」

「――空から仕掛けますか?」


 ソルラが提案した。


「私、飛びますよ?」

「さっきの使い魔がどうなっていたか見てただろう、お嬢ちゃん」


 シガはやめとけ、と言った。ソルラより的が小さい使い魔でさえ、撃ち抜かれた。


「スピードで振り切るのも無理だろう。鳥で駄目なら、うちのニンジャも、大公様のシヤンでも無理。鈍足の騎士は論外」


 カミリアへの皮肉を忘れないあたりシガである。当然、ムッとするカミリアである。こうなると――


「提案、よろしいでしょうか?」

「何だ、ジン?」

「使い魔で囮をやってくれるなら、その間に狙撃できます。――ラエル」


 ジンの声に、弟子のラエルが、呼ばれていると気づいて、姿勢を低くしてやってきた。


「狙えるか? 柱の目――光線の発射口への狙撃だ」


 言われて、一瞬だけ顔を出して、すぐに引っ込むラエル。


「一つずつなら、できます」

「よし。……マルダン、頼めるか」

「よかろう」


 グラムのリーダー、マルダンは頷いた。ラエルは背負っていた狙撃銃を引っ張り出すと、銃弾を装填する。


 使い魔が飛び立つ。それが上昇しながらピラミッドへ飛び、ラエルは空堀を下がって、射線を確保した。

 光線が飛翔する使い魔を直撃する寸前、ラエルは引き金を引いた。発砲、一番右端の柱、その目のように発光しているレンズに銃弾が吸い込まれた。一発撃つと、カウンターを警戒して堀の死角へと飛び込む。


「当たりました!」

「こっちもやられた」


 魔術師が、使い魔の消失を知らせる。ラエルの攻撃に対して反撃はこなかった。柱を一つ、叩いたと考えよう。


「ようし、ラエル。今の要領で、一つずつ刈り取っていけ!」


 光明が見えた。今のが通用したなら、ピラミッド侵入を阻む柱は、全て沈黙させられる!

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