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呪われ英雄騎士 国が理不尽な目にあっているので、報復することにした  作者: 柊遊馬


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第114話、あっちもこっちも


 隣国の軍隊が越境してきた。だが、そのガンティエ帝国が特に宣戦を布告するでもなく、無言でやってきたことから、ヴァンデ王国側は国境の守りを固めつつ、事態の静観に務めることとなった。


 これで帝国側が戦争の通告をしてきていたり、ヴァンデ王国側の集落などが襲われていれば、報復や反撃という機運にもなっていただろう。

 しかし、現実問題として、ヴァンデ王国側の被害は、警備軍の騎士二名のみ。それを以て――まともに戦えばほぼ負けると思われる――帝国との全面戦争は、貴族たちは内心では嫌がっていた。


 人間、戦争するにも大義名分、復讐するに充分な動機が必要なのだ。


 帝国の中枢である帝都は、いま戦争どころではない騒ぎなので、すぐには動いてはこないだろう。


 俺はその間に王都の魔の塔ダンジョンの攻略を進める。帝国が再度侵入してきたならば、レヴィーに乗って国境まで駆けつければいいのだ。陸路では十数日かかる道中も、空ならひとっ飛びである。


 次は44階だが、行く前に先行情報を確認だ。さすがに40階を超えてきた辺りで、軽く事前情報を入れた程度だと、初動にまごつく場面が出てきた。それまでも調べてはいたし、現地に着いた時に聞いても間に合っていたが、とっさの遅れが本当に致命傷になりかねない厳しさになってきているから、しっかり準備するのだ。

 頼もしき先行者であるシヤンとジンから説明を受ける。


「やること自体は、43階と同じで、足場を飛んでいくのだぞ」

「ただし、今回はでかい川を渡ります」


 ジン曰く、激流を流れる足場をピョンピョンしていく階らしい。ただ前回と違い、足場が川によって流されていくので、とっさの足場の確認、コース予想などかなり忙しいらしい。


「前回は空を飛ぶ魔獣との鬼ごっこでしたが、あれはまだ足場は動かなかった。ですが今回はかなりのスピードで流れる足場を飛び移るという都合上、流れの予想や足場の選択を間違えれば、激流に飲まれて――」

「滝つぼにドボン、だぞ」


 激流の先は、巨大な滝らしい。シヤンは、下がどうなっているかはわからないと言ったが、ジンはスタート地点から川の終着である滝を見てきたという。


「底が見えない大きな滝でした。川を渡るのを失敗して落ちたら……飛べない限りは、まず戻ってこれないでしょう」


 足場として流れてくるものは、建築物だったものの破片やら木材、(いかだ)のようなものも流れてくるという。その数は結構な数になるらしく、足場の選択に迷うほどなのだそうだ。ただ足場を間違えると、重量を支えきれずに川へ沈むらしい。


「人工物が流れてくるなんてね」


 リルカルムが笑った。


「誰が流しているのかしら?」

「誰が、どうやって流しているのかはわからない」


 ジンが言うには、岸にそって上流へ向かったが、途中見えない壁に阻まれて、それ以上進めなかった。


「正攻法は、足場を選んで進むことですが」


 ジンは、ちら、とソルラを見た。


「空を飛べるなら、その方が安全です」

『もっと簡単な方法がある』


 レヴィーが念話で話した。


『私が元の姿になれば、私の背中をつたって反対側へ届く』


 リヴァイアサン、その長大な体を持つ蛇竜である。確かに、彼女の大きさを考えれば、橋のようにして渡ることもできる。


「名案です」


 ジンは頷いた。


「向こう岸は見えている距離なので、レヴィーが飛ぶまでもなく、届きます」

「何だ、案外簡単に行けそうじゃないか」


 ベルデがニヤリとした。シヤンは肩をすくめる。


「あれだけの苦労したのに……」

「楽ができるのはいいことさ」


 俺は小さく首を振った。


「まだその先があるんだからな。温存できるならそれにこしたことはない。……ジン、それで44階のモンスターは?」

「川にはモンスターはいません。ただし、足場に止まっている飛行型昆虫系モンスターが近づくと、突撃してきます」


 トンボやハチ型のモンスターらしい。人間サイズのそれが矢の如く突っ込んでくる、というのは、足場伝いに移動する方としては危険極まりない。


「レヴィーの体は大丈夫かな?」


 そんな昆虫系モンスターが突っ込んできたら。


『おそらく大丈夫』


 淡々とレヴィーは返した。人間サイズの昆虫系モンスター程度の攻撃で、ドラゴンの鱗に傷はつけれられない。そういや、呪いは通したけど、それ以外の攻撃はほとんど効かないんだっけ。

 とれあえず、レヴィーの上を渡る時にモンスターに注意するくらいだな。44階はそれでよしとして。


「じゃ、45階について」


 王都冒険者ギルドが、今のところ開拓した最深部について。これについて、シヤンは渋い顔をし、ジンは苦笑した。


「ぼんやりした話しかできません。何せ、まだこの階層は辿り着いた、というだけで突破はされていないので」


 そういえば、45階で会おうって、志願してきた冒険者たちに行っていたんだっけ。そう声をかけた手前、ちょっと中途半端だな。44階を突破し、45階についたら、今日は離脱かな? 44階が割と早く攻略できそうってんで、余力あるなら挑戦したいけど。ここは、周りとの足並みを揃えるべきか。


「そういえば――」


 リルカルムが口を開いた。


「45階で待ち合わせできる冒険者って、今どれくらいいるのかしら?」

「確かに」


 もし魔の塔ダンジョンを攻略してやろうって気概があって、俺たちが到達するまでに自力で45階に到達している者もいるかもしれないし、挑戦しようとしていたが、俺たちが来るまで待っている者もいるかもしれない。


「未開の階を突破しようと思っている者たちがどれくらいいるのか、確認しておくべきか」


 今後、パーティーは別でも、同じように挑む仲間ということになるわけだし。


「よし、ちょっとギルマスに確認してみるか」


 ついでに、44階とか、あと一歩のところまで来ている者がいるようなら、そいつらも俺たちに便乗して突破させてもいいだろう。40階を超えるレベルの者なら、少なくとも未熟者はいないだろうから。


 ということで、魔の塔ダンジョンに向かう前に、王都冒険者ギルドに行って話を聞くことにした。

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