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1話:オカマ、誘拐、Vtuber
Vtuberのコスプレをしたオカマが女を車のトランクに押し込んでいた。
福岡最大の繁華街、天神の外れ。
西鉄天神駅から十分ほど歩くと辿り着く、ビルの隙間の路地。
俺、和白弦は息を殺し、そこで行われる犯罪を盗み見ていた。
「……ちょっと! アンタも手伝いなさいよ!」
オカマがしびれを切らしたように声を上げた。
その言葉に反応するように、何者かがゆらりと車の影から姿を表す。
「えぇ~、それオッサンの仕事でしょ」
「誰のせいでこんなことする羽目になってると思ってんの!?」
「……突然V始めるって言い始めたオッサン?」
「あぁ、そうだったわね! ごめんなさいね!! いいから手ぇ貸せや!!!」
「急に怒る……更年期障害?」
「こちとらまだアラフォーよ! くらすぞ! 腰が限界なので手伝ってください」
「即落ちじゃん」
俺はそいつを知っていた。忘れるわけがない。間違えるわけがない。
手の中の物を握りしめ、俺は少し前のことを思い出していた。




