谷いつの間に、勇者たじたじ
勇者は魔王城までの道を歩いていた。しかし、なんだかいつもと違う雰囲気がある。なにせ、いつのまにか道の両端は高い崖になっていて登れず、また岩壁であるので脇道もない一本道なのだ。魔王がこの短期間で何かしでかしたとしか思えない。勇者のおつむでも何か起こりそうだとわかるくらい、いや、バk…人より野生の獣に近いような脳の勇者だからこそ嫌な予感をよく感じ取れるのだろう。
魔王城の方から雷の音が聞こえる。ちょっとビクッとする勇者。雷ももちろん魔王の演出である。カラスまで大量に飛ばしていて暇でついつい演出に凝ってしまったのが伝わってくるようだ。前回勇者がダンジョンに行ってしまって退屈だったのだろう。暇つぶしが壮大過ぎて部下も呆れていたのだった。
さて、しきりに辺りを見回しながら歩く勇者の前になんだか香ばしいポーズで立つスケルトンの集団が立ちはだかった。別の意味で怖いので勇者もたじたじである。
「フハハハハ!俺はアンデッド第一部隊カルシウム騎士団のスカ・スカルだ!騎士団名も俺の名前の由来も知らんが、魔王様が微笑みながら(実際は吹き出すのをを堪えながら)名付けてくださった名前なのだ!響きがかっこいいだろう!」
「なるほど、スケルトンの名前なのになんかかっこいい気がする。」
※勇者は流されやすい性格なのである。
しかしこの狭い谷のような地形でこの道を塞ぐほどの敵がいるからには避けて通れないし攻撃を避けるのもなかなか難しそうだが、相手は相手で詰まってて集団だと動きにくそうだ。
先ほどの団長らしいスケルトンが前に出る。
「来い!勇者!」
「じゃあ行くぞ、スケルトン。そーい!」
勇者は聖剣を投擲した!
スケルトンは腕を弾き飛ばされた。
「え?」
つい素に戻ってしまうスケルトン。
「オラァ!」
勇者の聖鎧アタック!
あわれ、スケルトンは砕け散った。
「「団長ーっ!!」」
「そらそら!貧弱!貧弱ゥ!」
叫ぶスケルトンたちにもタックルをかます。
ついでで聖剣も拾っておく。
スケルトンたちはすぐに壊滅してしまった。
「ハハハハハ!この程度片手で捻り潰せるぜ!」
片手では捻り潰せていないが兎にも角にも悪役のようである。
勇者が珍しく無双して調子に乗っていたその時、砕けた散ったスケルトンの破片が音も立てずにどんどん集まり何かを形作っていった。スケルトンは瞬く間に複数の人型になると雄叫びを上げた。
勇者が錆びた機械のような動きで振り返ると、そこには2メートル余りの身長の腕が複数あり、ゴツく棘が生えた新たなスケルトンが誕生していた。それぞれの手には骨でできた剣が握られている。結構鋭そうだが聖剣ならば斬れるはず…
勇者は素早く回れ右してダッシュした。落とし穴があったが仕掛けが作動した時にはすでに通り抜けていた。逃げる時だけ素早さが数倍になるのだろうか。勇者はもはや一陣の風になっていた。
振り返ると追ってきていたスケルトン(?)は落とし穴に落ちたのか、いなくなっていた。
冷や汗がまだ止まらないようで、雨に降られているかのようになっている。女性100人に聞けば100人が近寄って欲しくないと答えるだろう。空から遠巻きに様子を伺う魔物たちもさらに距離をとった気がする。
突然勇者の足元が盛り上がった。
ゾンビAが現れた!
ゾンビAは勇者の足を掴んで這い出ようとしたが滴る汗を見て手を引っ込め、地面に手をついて這い出てきた。
(※勇者の汗が聖水のような効果を持っているわけではありません)
ゾンビの攻撃!
勇者は避けた。
勇者は鼻をつまんだ。
ゾンビはショックを受けている!
「あらぁ、ひどいわ!勇者ちゃん!鼻をつまむなんてレディー《漢女》にしていいことじゃないわよん!」
今回の魔王はキャラが濃い魔物を選んで楽しんでいるようだ。
「勇者ちゃんもすごい汗じゃない。そんなんじゃ女の子にモテないわよん!」
「キャラが濃すぎるオネェゾンビに言われたくねぇわ!匂いをどうにかしてから言いやがれ!」
勇者の聖剣アタック!
勇者は聖剣の腹を叩きつけた。
ゾンビは倒れた。
剣の使い方を忘れたのだろうか?だんだん類人猿に戻っているのかもしれない。というか勇者は聖魔法とかを使えないのだろうか?
何も考えていない人間《勇者》の思考を読むことは難しいものなのである。
・・・・・・・・・
勇者がゾンビを倒して進んでいるとして落石注意と書かれた看板があった。落石とは一定時間ごとに石がいくつも落ちてくることだったか?
勇者は時に避けつつ、時に殴って石と自分の骨にヒビを入れ、時に石にぶつかりつつ落石地帯を抜けていった。
落石地帯を抜けるとまた看板があった。
|強風・火矢・崖・泥水注意|
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情報がこれほどに多い注意喚起の看板があるだろうか?世界中を探してやっと数個見つけられるくらいではないだろうか。そもそも強風や崖や泥水はいいとして、火矢が飛んでくるとはどこの戦場だろうか?いやまあ、戦場ではあるか。さて置き、勇者は看板を見て明らかに嫌そうな顔を兜の中でした後、前方を見た。
そこは微妙に長く、人が一人だけ通れるほどの細道で両サイドは穴が空き、、強風がそこにだけ吹く中、時々火矢が飛んでいた。もう少し近づいて道の両サイドの穴を覗くと、泥水のプールがあった。勇者の無駄にいい視力の目が点々といるヒルを捉えて身震いした。
勇者は引き返そうか、進むか、小一時間悩むことになるのだった。
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