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004:ラザリアの街に到着

さっき気がついた、お金の単位がギルダンって....

まずい、むせる。

まあ、ばれないよね?

***【佐藤 啓太】***

「なんか、これ、大事になってないか?」


干上がった川を見て、啓太はそうつぶやいた。


まあ、実際大事になっている。

南のラザリアの街は滅亡の危機だし、北のキルシュの街は連続しての騒ぎで収拾が着いていない。


「まあ、大丈夫っしょ。

 とりあえず、川の水が干上がってくれたから今のうちに魚を捕っておかないとね。」

「ただなぁ、誰か料理してくれないかなぁ…」


そう言いつつ、数匹の魚を確保する啓太であった。



***【ラザリアの街】***

「ひどいものだな。

 完全に水が干上がっている。」


干上がった川を見つつ、代官のシリウスはそうつぶやいた。

実際、ひどいものである、完全に干上がった川底、わずかに残った水たまりに集まる魚達。

この魚達も、しばらくすると酸欠で死んでいくのはほぼ確定であった。


「これでは、水位が戻ったとしてもしばらく漁は無理だな。

 まずは、農業用の水の確保が最優先だ。畑のそばに井戸を掘ることを検討せねばならん。

 やれやれ、どれほどの費用が必要か……。最悪、いや、やめておこう。」

「下流の街の状態も確認しておけ、早急に領主様にご報告せねばならん。

 とはいえ、この状況で街を離れることも出来ん....やむを得ないか、娘を、マリーベルを呼んでくれ。

 あれに伝令役を頼むしかあるまい。」



***【佐藤 啓太】***

さて、とりあえず、晩ご飯も食べましたよ。

というか、魚を焼いて食べている間に日が暮れてきましたよ....

どうしよう.....


「とりあえずは、寝床だよなぁ

 ホテルとは言わないけど、せめてファミレスか漫喫くらい無いのかね」


とまあ、希望を述べたところで異世界には無いんだろうね。

ホテルは街に戻れればあったんだろうけど、5000ギルダン。...ありません。


このまま川沿いに南下したら他の街に出るのかな?

と呑気なことを考えていると、啓太の回りに徐々に狼が集まり始める。


あれ、さっきから犬が集まってきてるけど.....

迷子かな? 成犬ぽいから違うかもね。

どちらかというと猫派だけど、犬も嫌いじゃ無いよ。

家は両親が共働きで色々うるさかったからどちらも飼ったこと無いけど、ペットショップに居たチワワとかかわいいよね。


「チィチチチチ」


手を出してみるけど、こっちに来るそぶりは無いね。

なんか、うろうろしている。


もしかしてですけど、おなかがお空きになっている?

それに犬かと思ったけど、なんか大きくない?

体高1mくらいありそうなんだけど.....地面から頭の高さだよ?

こんなに大きな犬って居たっけ?

まあ、異世界だからこんなサイズなのかな?

ちょっと、これって、軽くやばい?

念のためにエクスカリバー抜いておくか、って襲ってきたよ。


まあ、エクスカリバーで一刀両断出来るんですけどね。



はい、お犬様に襲われました.....

エクスカリバー一撃で撃退しましたけどね。

これって、寝てたら襲われるって事だよね。

寝れないじゃん。


しかたが無い、寝ないで歩くか.....

街にたどり着ければ良いなぁ。



***【ラザリアの街】***

深紅のドレスにきつめの顔立ちの娘がラザリアの領事館を歩いていた。

そして、その最奥、代官の詰める執務室まで来ると、娘はノックもせずに扉を開き中に踏み込んだ。


「お父様。お呼びとお聞きしたのですが。

 川が干上がった件と何か関係が御座いますの?」


「マリーベル、いつもノックをして入るように言っているだろう」


執務室の中ではちょうど、シリウスが渓谷の偵察より戻ってきた騎士から報告を受けているところであった。


「まあ、ちょうど良い。

 マリーベル、領都まで行き領主であるライツベルグ伯爵にこの書状を届けてくれ。」

「ああ、すまんがキース、渓谷の様子をもう一度マリーベルに聞かせてくれないか。」


「は、渓谷の様子ですが、

 渓谷の中腹、南側より1kmほどの位置にて両脇の崖が崩れており、この崖崩れによって川が完全にせき止められている状態です。

 崖が崩れた理由は現状不明ですが、崖上の周囲を確認しましたところ、大量の土砂があたりにまき散らされていることから、渓谷内より崖に対し何かしらの魔法攻撃が行われその衝撃により崖が崩落したものと推測されます。

 また、崖崩れにより川がせき止められ、上流側には徐々に水がたまってきております。これにより、うまくすればこのまま上流側に湖のようなものが出来て来ている状態です。

 ただ、その湖の水圧に土石が耐えられるとは思えず一両日中有に、土砂が水圧に耐えきれず崩壊すると考えられます。」


渓谷の状態は余談を許さない状況になっていた。最悪鉄砲水になってしまえばこのラザリアの街は土砂と共に流されてしまう。

とはいえ、打てる手は少なく、時間も限られている。


「現在、土木工事の人員を集めているところだ。

 集まり次第渓谷に向かい、土砂をなんとかする。

 時間との勝負になるが。上流の水がたまればたまるほどその水圧はものすごいことになり、土砂を排除することすら出来なくなるだろう。

 可能なら今晩の内に水が流れ出る程度の水路を確保する予定だ。」


「その旨を伯爵に伝えてくれ。

 詳細は先ほどの書状に書かれているが、水路の確保に失敗した場合、最悪ラザリアは放棄する必要が出てくる。

 急いで向かってくれ。

 避難できる住民には既に避難勧告を出している。

 追って、母と弟も領都にたどり着くはずだ。跡のことは頼んだぞマリーベル。」


「お父様、それでは….」


シリウスは立ち上がり、マリーベルト一時の抱擁を交わす。


「それでは向かってくれ。

 夜通し駆けさせることになるのは済まないとは思うが、おまえなら出来ると信じているぞ。」


「は、もちろんです、お任せください。」


こうして、ラザリアの命運をかけた土木工事が始まったのだった。



***【佐藤 啓太】***

おおう、なんか、物々しい一行がこっちに来ますよ。

思わず隠れちゃったけど、何だろうあれ?

武器なのかな?ツルハシとかクワとか色々持ってるみたい。

一揆とかかな?でも、先頭に居るのは馬に乗ったなんか偉そうな人だし、良く分からない。

そして、何というか、殺気立っているんだよね。

なんか怖い….

とりあえず、やり過ごして南下しよう。



***【ラザリアの街に入れない佐藤啓太】***

街に着きましたよ。

と言うか、門が閉まっているのね。

夜中だもんね。

門に近づいても誰も出てこない。

どうなってんですかね?

まあ、かがり火?なんかたき火がたかれてますからこの辺明るいんだよね。

たぶん、あの犬とはこの辺までは来ないでしょうから、門のところで横になることします。

明日の朝には開くでしょう。



***【ラザリアの街】***

「あんた、どうするんだい。」


すっかり夜もくれて、普通なら寝静まっている時間。

普段はもったいなくて使わないろうそくの明かりの中、夫婦が話し合っていた。


「どうするたって。どうしようも無いだろう。

 領都に逃げたって頼る当てがあるわけじゃ無い。

 せっかくこの街でここまで頑張ってきたんだぞ。

 それをいきなり、退避しろと言われても逃げるところなんか無いじゃねぇか」


「確かにそうなんだけどさ、鉄砲水が来ちゃうと何もかも流されちまうって言うじゃ無いか。

 それなら、一か八かあんたの実家を頼っちゃどうだい?」


「馬鹿行ってんじゃ無いよ、俺はあのとき勘当された身だぜ。

 都合の良いときだけ頼ったって助けてくれるわけねぇよ。」


「俺は、俺たちはこの街に身を埋めようって決めたじゃねぇか。

 今、力自慢の男衆が全員渓谷で作業をしている。

 明日の朝一でなんか食えるものを作って持って行こうじゃないか。

 渓谷さえなんとかなれば、今まで通り暮らせるんだ。

 おれ達は俺たちの出来ることで街のために頑張ろうぜ。」


男は無理に作った笑顔を浮かべそう妻に語りかけた。

実家を勘当され流れ流れて、ようやく受け入れてくれたのがこのラザリアの街だ。

夫婦はこのラザリアの街の片隅で小さな大衆食堂を営んでいた。

川魚をメインの食材にしていた関係上、川のすぐそばに建っている。

鉄砲水が来れば全てを失う事になる。それでも、明日を向いて生きていくことを誓うのだった。



***【ラザリアの街】***

お、門が開きますよ。


朝まで門の脇でウトウトとしていた啓太だが、日が昇り始めて程なくして街の門が開いた。

開くと同時に中より、荷物を満載にした馬車や荷車が次々とでてくる。


「なんだ、これ?」


門から逃げるように出ていく街人。

その勢いは留まることを知らず、逆らって街には入れるような状態では無かった。


「なんか、慌ただしい街だなぁ

 とりあえず、落ち着くまでまって街に入ろう。」


うん、そろそろ、落ちに向かわないと発散しちゃうね。

今月中には終わらせよう。

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