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二人での初陣

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 魔獣討伐は建前は正規の騎士団の仕事であるが、彼等だけでは手が回らないため、実際は冒険者ギルドが仕切っている。

 国家に必要な組織のため安定した地位が与えられているが、反面冒険者やギルドに要求される水準も高い

 怪我人や死亡者の遺族への弔慰金を出したり、原始的な保険を扱っていたりと、冒険者の支援全般を行う組織。

 ブラッドハウンドの群れがこっちを見た。無数の視線がこっちを射貫くのを感じる。


「覚悟はいいか?」

「問題ない……それより気づかれているな」


「まあ不意うちはあまり期待してなかった」


 魔獣は用心深く感覚も鋭い。寝ている間に魔法で一撃、なんて都合のいい展開はそうはありえない。


 風司の剣を抜く。いつも通り周りに静かに風が流れた。

 風の文様が刻まれた青い両刃の刀身。

 一度は冒険者を続けられないかと思った。どんな形であれまたこれを使えるのは嬉しい


「風司の37番。【風よ流れて我に知らせよ。掌が鋼に毛並みに木の肌に触れるがごとく】」


 風が木の間を吹き抜ける。魔剣の力を借りて使う探査の風だ。

 周囲の状況が伝わってくる。ブラッドハウンドがいるのは正面だけだ。側面をつかれることは無い


「正面だけだ。倒せるか」

「任せろ」


 ふわりと杖が彼女の前に飛んだ。

 

「【我はテレーザ・ファティマ。四天の書庫の司書の名において命ず、封じられし書架の鍵を開けよ】」


 彼女の周りに光の線が走って大きな書棚のようなものを形成した。その中から一冊の本が出てページがめくられる


「【書架は東南・想像の五列。壱百五拾弐頁五節……私は口述する】」

「風司の29番【薙ぐ風よ、そびえよ。かつて栄えし王城の壁より更に高く】」


 ブラッドハウンドがうなり声をあげて飛び掛かってくる。三頭。

 剣を振ると同時に風の壁が立ち上がる。ブラッドハウンドが吹き飛ばされた。

 ブラッドハウンドが着地してまた飛び掛かってくるが。この風壁はブラッドハウンドの突撃くらいでは破れない。


 だが、テレーザの詠唱はまだ続いていた。次第に風壁が薄くなってくる

 何度も突撃しては弾かれていたが、一頭のブラッドハウンドが強引に風の壁を押しのけて飛び掛かってきた。

 が、一頭だけ真正面から来るだけじゃ脅威じゃない。剣を振り下ろして切り伏せる

 短く悲鳴を上げてブラッドハウンドが真っ二つになった。

 

「まだか?」 


 けた外れに詠唱が長い。

 今まで組んだ魔法使いは何人もいるが、彼らならこの詠唱の間に2回は魔法を発動させているだろう。

 

 壁の向こうのブラッドハウンドがうなり声をあげてこっちを見る。

 この効果がもう少しで切れることが分かっているな。

 もう一度使うか。 

 

「風司の37番【薙ぐ風よ……」

「待て、必要はない」


 遮るように後ろからテレーザの声が掛かった。


「【天空にて燃ゆる火が地に下りることあらば、世界は遍く黒き灰と化す。其が彼は天頂に縛られる由】術式解放!」


 詠唱が終わると同時に赤い光が一瞬閃いた



 夕焼けの様な赤い光と同時に巨大な赤い塊が膨らんだ。炎だ。

 一瞬遅れて風の壁を押しのけるように熱風が吹き付けてきた。熱さに思わず目を閉じる。


 目を開けると渦を巻く赤い炎が目の前にあった。

 触れた木が黒い炭のように変わり、木の葉が火球に飲み込まれて消える。

 

 何回か呼吸するくらいの間を経て。

 赤い炎が消えた時には目の前の森に広々とした空間ができていた。



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普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ/僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。
元サラリーマンが異世界の探索者とともに、モンスターが現れるようになった無人の東京の探索に挑む、異世界転移ものです。
こちらは本作のベースになった現代ダンジョンものです。
高校二年生、魔討士乙類7位、風使い。令和の街角に現れるダンジョンに挑む~例えば夕刻の竹下通りにダンジョンが現れる。そんな日常について~
― 新着の感想 ―
[気になる点] 森で炎系の魔術を使わないのは、お約束では?
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