ベルサイズの街でレース参加④ マーメイドレース
少し遅くなってしまった⋯⋯。
バティンはどうしてるのかな?
熱狂している参加者と観客が騒いでいる。どうやらレースは終盤のようだ。
「レースは終盤ですので見学のみですよ」
受付に説明を受け、観客の合間を縫って前に入っていく。
「マーメイドと意思疎通ができる奴なんて初めてみたっぺ」
「凄まじいやり取りだ!あのおなご凄いんだ~サイコロの数字がまるでビシッとプラスステージにつくのは圧巻だぞ」
受付の人の話によると、マーメイドレースはプラスステージとマイナスステージとエクストラステージがあるレースである。
サイコロの数字により、各ステージがあるのだがマーメイド達に試練を与えるコース割りになっている。各ステージは、壁で仕切られており普段は通ることが出来ない。
比較的にプラスステージは簡単な課題になっていて、突破しやすい。マイナスステージはマーメイドにとって非常にやりにくい課題が多い。エクストラステージはマーメイドと参加者両方に影響を及ぼすステージだ。
始めに指定した金額がなくなるまでレースは続行される。
プラスステージでは所得ドルズが増え、マイナスステージではドルズを追加徴収される。
エクストラステージは失敗すると2倍徴収される。クリアすれば2倍貰えるのだがリスクのほうが大きい。
すごろく式一体型体感レースとなっていて、マーメイドと一緒に水槽から海を目指していく。
進む先には人間の救助から、魔物の障害物や沈没船の財宝発見など様々なイベントをこなしていく必要がある。
まず選んだマーメイドが歌を歌い、シンクロすることでレースがスタートをするのだが、痛みや感情などがシンクロするため、精神的に耐えられずリタイアすることも屡々だ。
マーメイドは年をとったのはいない。というか、みんな若い女の人魚だ。
実際は年を取らないといったほうが正しい。
純血を守ることによって若いままの状態を維持するのだ。
生まれて間もないということもあるが、若い人魚はレースをする上では都合がいいのだ。
ここの人魚たちは拐われてきたもの達で、レースで本当に海に行けたものは自由になれると言われている。
経験が少ない人魚を使い、レースを長引かせ、自由をなくす。
いつしか諦める人魚も出てくるのだが、今回はひと味違うようだ。
「またエリアを抜けたっぺ」
「ふふふ。よろしいですわ!ルチルミーナ!この調子でいきますわよ」
「うん!バティンお姉ちゃん頑張る!!」
ルチルミーナと呼ばれた人魚は、バティンを姉と呼び、エリアをクリアしていく。
「くそう⋯⋯このままではせっかく捕めーときた人魚が逃がされちまうっぺ⋯⋯おいっあくだれを仕掛けろ」
1人の男が観客の中に小声で声をかける。
「へい!わがった」
男が奥へ入っていく。なんか悪いことを考えてるのはわかるがバティンの手助けをどうやってするべきか⋯⋯
常時発動スキルで何かいいのがなかったかな?
覚えてないから、天地万有の声に検索をしてもらう。
『―――検索を開始。 常時発動スキル⋯⋯⋯⋯。検索を完了しました』
⋯⋯これか?まあ騙されたと思ってつけてみよう。『傀儡師』の常時発動スキル《遠隔操作》。
効果範囲は片手だと3メートル。両手を使用すると5メートルまで届く。
遠隔操作は対象を操作することができる常時発動スキルで物や人、魔物に適用する。
操作できる期間はその傀儡師の精神力の数値が影響する。
操作できる数は指の数だけでき、操作すると視界が共有される。生き物の場合は、操作中はレム睡眠状態になっていて、夢を見ている状態になる。
傀儡状態になると身体的リミッターを外れるため、魔法で身体強化をかける必要がある。術者によっては身体強化をかけず捨て駒のように使うやつらもいるのだが、俺がやる上にはそういうことはちゃんとしないといけない。
奥に入って行った男との距離は4メートルだから効果は発動できる。
人魚の水槽は移動式で、2つづつ水槽が動き奥と手前に移動して見ることができる。
手前の水槽に人魚が来ると、5メートルの効果範囲にはいるから、手前の水槽であれば最悪なんとかできるかもしれない。
バティンや参加者の位置はその中央に椅子があるのだが、そこで人魚と会話をしたりする。
バティンは少しだけ此方に目を向けるとアイコンタクトをしてきた。何かあっても大丈夫そうだけど⋯⋯。
サイコロの数字が微かにぶれてバティンが少し表情をしかめる⋯⋯サイコロの目はエクストラステージのマスにつく。
エクストラステージのマスで水槽にゴライアスピラニアが数匹投入される。
ゴライアスピラニアは一匹がメートル級のピラニアで獰猛な肉食魚である。
しかも群れの行動をして獲物を追い詰め、食い荒らす海の災害である。
そんな災害が人魚がいる場所にいたらどうなるかは、結果はわかるとおりである。
襲いかかるゴライアスピラニア。
逃げようにも追い詰められているので覚悟を決めたのかルチルミーアはゴライアスピラニアに突進していく。
夏樹も岩を遠隔操作でゴライアスピラニアに当てるがものともしない。
そこにルチルミーアが突進して尾を使い華麗にゴライアスピラニアを弾き飛ばす。
「な⋯⋯⁈」
「魔眼ですわ」
ルチルミーアが魔眼によって鋼の肉体になり、人魚ならではのスピードを生かし攻撃をくりだしたのである。
防御はもちろんのこと、攻撃は人魚のスピードは海の生物の中では1位、2位を誇る力があるのだが、そのスピードによって繰り出される攻撃にはゴライアスピラニアもひとたまりもなかった。
こうしてレースは見事バティンによって完全攻略をされたのだった。
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