ベルサイズの街でレース参加③ ケンタウロスレース
さて、ルシファーはどうなってるかな?
ケンタウロスレースは人の言葉を話す分、癖の強い集団の集まりらしい。
酒を好み他の種族間では喧嘩ぱやいが、集団での活動を好んでしている。
この世界のケンタウロスは半人半馬以外に、色んな種類がいるみたいなんだけど知らなかったよ。中にはレオントケンタウロスの半人半獅子やドラコケンタウロスとか半人半竜のやつまでいる。
予想屋がいてレースの予想を押し付けようとしてくるんだよね。
ケンタウロスレースは3000メートルの土魔法で砂を固められたダートコースである。
ルシファーは運がないから、賭け事はダメそうだけど、相手は半分は人の形をしてるし、少しは可能性があるのかな。
大穴でレオントケンタウロスがいるのね。さすがにドラコケンタウロスはいない。
レオントケンタウロスは気性が一番荒く確実に振り落とされ、レースに参加するやつを蹴散らしてきたみたい。中には重症者も出ているとか。
ケンタウロスたちは協力して振り落とす事をしていく。そして落馬した奴等を踏み倒していくのがケンタウロス達の遊びかたらしい。
レースが荒れるのが楽しいから、ただそれだけ。ただケンタウロス達の報酬は酒や肉類が出てるみたいだから真面目にレースをする奴も中にはいる。
しかし大概は人族のいうことを聞く気がないからだ。
「ガハハハ!今日も大したことない奴等だぜ!」
レオントケンタウロスのヒューゴは上機嫌に他のケンタウロス達と笑いあっている。
ん?ケンタウロスのそばにルシファーがいるな?
「やはり我輩が乗りこなしてこそ楽しみがあるのだ!」
「ああ?なんだおめぇは?」
ルシファーがレース参加者と一緒に入場してきたのだ。
どうやらルシファーは一万ドルズを払い参加してるみたいだ。
しかしどうやって参加したんだろう?同伴じゃなきゃ駄目だったはずなのに⋯⋯。
会場の観客はケンタウロスとのやり取りを見つめている。ここで対象を決め賭けるのだ。
ルシファーはケンタウロスに近づいて行ってる。
ルシファーがケンタウロスに近づくと何頭かは泡を吹いて倒れてしまった。
「むぅ⋯⋯なんて脆弱なのだ。ん⋯⋯あそこに少しはマシな奴がいるではないか」
レオントケンタウロスを見つけたルシファーはずかずかと近付いていく。
「おい!あの子供殺されるぞ!」
「ヒューゴに乗ろうとするやつは、大概相場は阿呆に決まってる。どうせ振り落とされるのがオチさ」
観客がヤジを飛ばしながらレオントケンタウロスの様子を見守っている。
ルシファーが少し空中に浮き、そっとヒューゴの頭に触れる。
「⋯⋯」
ルシファーが何か言ったみたいだけど、ここからじゃわからない。
「ん?なんかヒューゴの様子おかしくないか?」
レオントケンタウロスは小刻みには震えているようにもみえる。
「まわりのケンタウロスも静かになったぞ」
「あのヒューゴが大人しいぞ!いつもと何か違うな」
「どうなるんだ?このレース想像がつかねぇ」
◇◆◇◆◇◆
――トラブルが発生しましたが、まもなくレースが開始致します。
スタート地点に到着し、レース開始の合図が鳴り響く。
「よし!ライオン丸!行くのだ!」
「イエッサー!力の限り頑張りますぜ!」
レオントケンタウロスはルシファーを背中に乗せ、駆け抜けていく。
周りのケンタウロスは脇に避け、道を大きく開けてレオントケンタウロスが行くのを待っているようだ。
「うおぉぉぉ~!!!」
「なんだあの速さ⁈」
「なっ?ヒューゴが真面目に走ってるぞ!」
レオントケンタウロスは一心不乱にゴールを目指し、全速力で走っているのがわかる。
初めからフルスピードでケンタウロス達が走る事はないらしい。
ただしレオントケンタウロスに続けてケンタウロス達が追従していく。
「なかなか気持ちが良いのだ!その調子なのだ!」
「ぜぇぜぇ~」
レオントケンタウロスはヒューヒューと少し荒く呼吸を繰り返しながらそれでもペースを落とさずゴールに向けて走っていく。
「おめぇら気合い入れろよ!無様なレースになってみろ⋯⋯俺たちは潰されるぞ!」
「へい!ヒューゴの旦那!解ってます!」
顔を真っ赤に染めながらケンタウロス達のレースは終盤をむかえようとしている。
ルシファーなに言ったんだろ?
そんなことは露知らず、レースを楽しんでいるルシファー。
「これならあとでドラコケンタウロスを、捕まえて来るのも面白そうなのだ!」
ヒューゴがその言葉にギョっとする。
「野郎共、死ぬ気でかかってこいよ!」
「「「おおっ!」」」
ケンタウロス達がスピードをあげレオントケンタウロスと並んで走り始めた。
「凄いレースだ!」
「こんなに白熱した戦いが見えるなんて⋯⋯」
1頭のケンタウロスが足がもつれて崩れ落ちる!
乗っていた冒険者ごと倒れてしまった。
幸いケンタウロスと冒険者を避けるように飛び越えたり、かわしたりと最悪のケースは避けれたようだ。
あとで回復薬でも提供してやろう。
ラストのストレートは圧巻だった。
ブライアンと呼ばれる黒毛のケンタウロスとレオントケンタウロスのヒューゴの一騎討ちで、両者譲らずデッドヒートを繰り広げ、僅かの差でヒューゴがゴールを勝ち取った。
――今、ヒューゴがブライアンを抜きゴールです!
ゴールするとケンタウロスたちは力を使い果たしたように、座り込んでいる。
一番前の客席に移動してルシファーに声をかける。
「あっ!マスター勝ったのだ!」
「ああっ見てたよ。今回はルシファーは何かをしたりしなかったな」
「もちろんなのだ!レースに水を差す行為は無粋なのだ!」
「あんた?この人のマスターだと?」
「まあ最近は保護者みたいなもんになってきてるけどな」
ヒューゴが少し驚いたような表情をする。
「そうなのだマスター!ライオン丸が頑張ったから褒美にあれを出してやってほしいのだ!」
「じゃあ控え室で渡そうかな」
回復薬も渡したいし、あとで移動だな⋯⋯。
まあルシファーが楽しそうだから参加のことはとやかく言うまい。
こうして回復薬と酒を渡してやりバティンのところへ向かうのだった。
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