ヴィラーゴ救出作戦
「ベリルすまないが出来るだけ早く飛んでくれ」
『ご主人様わかったよ!飛ばすね~!』
ベリルがスピードを上げ始める。
「ヒイィィ」
あまりの速さにエバークラインが悲鳴を上げている。
おかしいな?この中では重力操作や空気抵抗を魔法で補助してるし、体感が遅くなってるはずだから怖くないはずなんだが⋯⋯
ルシファーいわく、船乗り達も船の中で拝んでいたり、縮こまっているみたいだ。
船乗り達にとっては空を飛ぶこと自体初めてな上に、凄い勢いで飛んできた魔物が、船の上で息絶えるのを見ていたのだから若干トラウマに近い感じになっている。ルシファーも外に出て魔物を次々に爆散させている。
普段、エバークラインと船乗り達が航路に出て、水棲魔物がこんなにも出てくることもないのだ。
安全な航路を確認するために出たのに、夏樹達が航路を安全にするためにまさか移動をしているとは思わなかったようだ。
◇◆◇◆◇◆
ルシファーにパイモンの気配を辿ってもらいながら飛んでいくと空中に銀翼の翼を広げているパイモンが沈みかけている船の近くで何かしているな。
ルシファーがパイモンを見つめて状況を確認する。
『マスターどうやら相手はまだ、パイモンを攻撃してるみたいなのだ。相手の力量も計れないとは馬鹿な奴なのだ』
「パイモンが怒らないうちに早く止めよう!」
パイモンは攻撃を軽く受け流している。魔法障壁も張らず風魔法で弾道を変えて反らしているみたいだ。
「パイモン!もう見てないでくれて大丈夫だ!」
パイモンに叫ぶが聞こえてないのか船から離れようとしないな。
ベリルがパイモンに近づくとパイモンがベリルに罵倒する。
「おいトカゲ!これ以上こっちに来るんじゃねぇ!流れ弾が主殿に当たるかも知れんだろうが!」
『ルシファー何か海運ギルドに、声が届く魔法とかできないか?なんとか攻撃をやめさせたいんだ』
『なら風魔法で音波を飛ばして拡声するのだ。』「音よ轟け!『サウンドウェーブエクステンション』」
ただの言葉なら攻撃をやめてくれないかもしれないからジョブチェンジして相手を惹き付けるようにしよう。
「『ジョブチェンジLEVEL-1』発動――吟遊詩人――『魅了のフィナーレ』」
魔法袋からリュートを取り出し旋律を奏でる。
旋律を聞いて魔法や攻撃をしていた船乗り達が攻撃の手を緩める。
――直ちに攻撃をやめてくれ!それは俺の仲間だ!俺達は救援に来たんだ!助かりたい奴はこちらの船に移動してくれ。
ゆっくりと竜車に繋いであるピンネースの船を海に下ろす。
夏樹の拡声した声が船乗り達に届き騒ぎ始めた⋯⋯。
「このままだと沈んでしまうぞ」
「攻撃をやめれば助かるのか⋯⋯」
「救援だと言ってるぞ」
「馬鹿野郎!飛んでる奴を見ろ!一撃でこのヴィラーゴを破損させたんだぞ!そんな奴がいる状態で無事ですむはずがねぇ!攻撃を続けるんだよ!積み荷が山程載ってるんだぞ!」
1人騒がしい奴がいる⋯⋯シュフランって奴だな。
シュフランが攻撃の指揮を取っていたみたいで、船乗りたちを撹乱させてるな。
『魅了のフィナーレ』にも効果をしめしてないし、状態異常を受けないアクセサリーでもしてるのかもしれないな。
――繰り返す!それは俺の仲間だ!助かりたい奴は攻撃をやめて
船に乗り込め!
ほとんどの船乗りが攻撃をやめてエバークラインの船に乗り込み出した。
「まて!お前ら!」
「では諦めのつくようにしてやるよ!『アルタイルフロンド』」
パイモンが片手を天にかざすと、周囲の岩が浮遊し、一斉に船に向かって飛んでいく。
投石された岩が鷲の姿に変化して沈み込んだ船の装甲を貫く。
ズゴゴゴ⋯⋯
船に岩が当たったのもあって、船が船首を残し海に沈んでいく。
「助けてくれ~!降伏するから命だけは~!」
シュフランが船の船首で必死に捕まっている。どうやら船にのこっているのはあいつだけみたいだ。
「バティン頼む!」
バティンが船首に向かって勢いよく飛んでいく。シュフランをしっぽで捕まえるとゆっくりとピンネースの船に下ろしてやった。
ピンネースの船に降り立ったシュフランは少しだけ顔が蒼白になっている。
◇◆◇◆◇◆
ルシファーとベリル、パイモンが船を引っ張り、凄い早さで街へと戻ってきている。
「⋯⋯助かった」
船乗り達が泣いて喜んでいるな。余程帰れたのが嬉しかったのだろう。
「これに懲りたら無闇に攻撃をやめるのだ」
ルシファーがシュフラン達に忠告をしている。
「手加減も大変だった」
パイモンさん⋯⋯商船潰したのに手加減したって⋯⋯
「今回はエバークラインに救われたわね。貴方達」
「しかし結局、航路をもう一回行かないと駄目みたいだな」
エバークラインがその言葉に勢いよく反応する。
「いえ!大体の航路の安全は確保されてるようなので大丈夫です!」
「そうなのか?」
「はい!後はオルガ・トゥーレ島付近を通れるか、確認するのですが⋯⋯あの後、シュフランさんが海運ギルドの航路に乗ってもいいと申し出て頂けたので少し間はその航路が使用できるのです」
エバークラインの言葉にシュフランが答える。
「どのみちうちのメインの商船は海の藻屑になっちまったし⋯⋯借りを作りっぱなしじゃうちのメンツが潰されちまう。新しい商船が出来るまでの間だけの約束だがな」
そうなのか⋯⋯。なら俺達だけでオルガ・トゥーレ島に戻ることにするかな。
「ただ商品の引き渡しはどうするんだ?」
「冒険者ギルドを通じて、商品の引き渡しをお願い出来ないでしょうか?」
「まあそれでもいいけど⋯⋯契約は引き渡しが終わるまで出しな」
「ありがとうございます!夏樹さんには感謝の言葉しかありません」
こうして夏樹達はオルガ・トゥーレ島に戻ることになったのだった。
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