料理大会の決勝戦
「いよいよ、結果発表なのだ!」
「予選はあれだけの人数がいるのに早かったな」
ラバルの予選ナンバーは1847番だったからやはり2000人もの選手が参加していたんだな。
スタジアムの大きさから料理ギルドは結構力を持っているのかな。
拡声の魔道具をしようし、声を拡大した声が響く。
―――それでは時間がきたのでできなかった者は失格とする。
番号を呼ばれたものが本選の出場権ができる。それでは発表する。
――1番、7番、180番、350番、540番、666番、780番、800番、990番、1111番、1212番、1326番、1455番、1560番、1620番、1760番、1847番、1999番、2000番以上20名である!
映像魔道具を転写し、書かれている番号が表示される。
そういえばこの世界の字の識字率はどんな感じなんだろ?
「ラバルが入ってるのだ!」
「やったのです」
『すごーい』
「ワクワクするわね」
「うむ。ラバルならやると思っていた。予定通りだな」
「本選に進めるんだな」
◇◆◇◆◇◆
本選の今回のテーマは『珍しいもの』らしい。
今回も食材は自分達で調達となる。
「これは貰ったな」
「練習の成果が試せますね」
アバリムとバティンが笑みを浮かべている。
今回の調理時間は3時間となっている。
如月夏樹は調達の必要がないから調理を開始しているな。
やはり大きな大会だけあって、アイテムボックスを持っている奴がいるな。
「ん?あれは魚を出しているな」
ストラウス高原で食べた魚を出しているな。もう取って来てる人もいるんだな。
続いて何人かは魚を出している。種類は違うけど魚だらけだな。
「なんか魚率多いな⋯⋯」
「この街は魚を食べることなんてできなかったから、噂を聞いてみんな用意してたのね。珍しいし、話題にならないなんてないもの。冒険者ギルドのクエストの依頼は増える一方よ。報酬額が1匹、2万ドルズになる高級品になってるわ」
「魚は美味しかったのです」
「魚が珍しいものだとは思いませんでしたわ」
「これだけ喜ばれるとは我輩も鼻が高いのだ!」
「魚の味はいまいちだし、ラバルが負けるはずがない」
『お魚やっぱりきれいだね~宝石とどっちが高いのかな~』
朱莉が冒険者ギルドの情報をくれる。
確かにいままで取れなかったものが急に取れるようになったら、食べたい人が増えるもんな。
湖畔ができたあと、魚は魔法袋にいれていたから、料理で日常的に使ったりしたし、バティンが珍しいと思わないのは仕方ないな。
魚はいまいちって⋯⋯アバリムは甘いもの以外は興味ないしな。
ルシファーが自分が作った天然の生け簀を自慢気に喜んでるな。
レオナとベリルは平常運転だな。
如月夏樹はカカオマスとココアバターに砂糖、山羊のミルク混ぜチョコレートを作っている。
カカオの木のクリオロ種がこの世界には存在したのだ。
カカオの木は取ってきて屋敷の庭で温度管理をし、育てている。
如月夏樹に変身した如月夏樹は新しいジョブを使用する。
「『ジョブチェンジLEVEL-3』発動――ショコラティエ
『ジョブチェンジLEVEL-1』発動――『マギ(賢者)』――<冷却霧、フリーズシャワー><熱気流、ホットエアー>」
チョコレートを混ぜ終え、『ジョブチェンジLEVEL-3』のショコラティエの知識を使い、魔法袋から大理石のまな板を用意して、チョコレートをテンパリングをしていく。
ショコラティエはチョコレート菓子職でチョコレート専門の洋菓子を作り、温度管理や型などにいれ形を作っていく職だ。
テンパリングは早くても遅くてもチョコレートの品質が変わってしまうので技術が必要とされる。
マギ(賢者)はダブル魔法を使用するウィザードメイジの上のランクの職業である。
これには審査員が驚き、ざわざわとし始めた。
「なんだ⋯⋯1847番のあの魔法は!? あの周りだけ気温が違うぞ」
「あの茶色い物はなんなんだ?見たこともないが食べ物なのか?」
「とてもいい香りだ」
この街ではチョコレートなど甘いものなど存在しない。
しかも、甘い匂いが多くの審査員や料理人たちに香りを届けて、思わずうっとりと、リラックスしている。
チョコレートの香りはリラックスするし、記憶力と集中力高める作用があるんだよな。
なんか1111番のフードを深く被った料理人が作業止め如月夏樹をガン見しているな。
「マスター、あの1111番はエルフなのだ」
「ん?エルフなのか?フードを深く被ってるから顔はわかんないけどラバルの作業を穴が開くぐらい見ているな」
「あれって作業を見ているより、材料をガン見してるわね」
「なんかすごい目が光ってますね」
「ラバルは全然気にしてない⋯⋯むしろチョコレート作りに集中しているな。まあ、あの程度のエルフなど一捻りだな」
『見つけたって言ってるの~』
「何?ベリルには何か聞こえたのか?」
『ラバルねぇちゃん見て、口が動いてたよ~』
あの1111番何を見つけたんだろ?
如月夏樹がチョコレートを型に入れて冷却を始めたな。もう少しで完成なようだ。
「くぅ~あれを見ると我も、審査員の席に座りたいものだ⋯⋯」
チョコレートを羨ましそうにみているアバリム。
しょうがないので魔法袋から1つ一口サイズのチョコをアバリムの口に放り込む。
「んん!!これは!なんとまろやかで舌の上でワルツを踊っている!」
うっとりとしながらアバリムがこちらをみてくる。
「ちょうど人数分しかないけど俺が作っていたものだ」
ここはカズノコールさんが気を効かして審査員席に近い場所なんだよ。
だから香りが漂ってくるからアバリムにとっては苦行に近いんだよな。
「私たちの分もあるのね」
朱莉も目を輝かせながら言ってくるので1つを渡してやる。
「わーい!なのです」
『やったー!』
「さすがマスターなのだ!」
◇◆◇◆◇◆
3時間が経過し、結果を聞くために、如月夏樹が控え室から戻ってくる。
審査の結果は魚の料理を出した1番、666番、1111番、2000番とチョコレートを出した1847番のラバルだった。
審査の結果が終わると審査員に如月夏樹が呼ばれていく。
何かをお願いされたみたいだ。
「どうやら決勝でもチョコレートを出してほしいと、懇願されたみたいなのだ」
ルシファーが呼ばれてた内容をラバルに聞いたみたいだな。
ラバルのチョコレートを食べた後、審査員たちは評価をするために入っていったんだが監査役の審査員たちはあの匂いを嗅いで決勝の審査を自分が立ち会うと譲らなかったのだ。
審査員たちは全員で20人いたのだが本選の評価をするのは10人だったみたいで、不正を行うのを防ぐ目的で後10人もいたらしいのだ。
そして、食べた10人の審査員の顔を確認し、審査表の確認、皿に残っていたものが1つもなかったので皆怒ってしまったというのが懇願の理由だった。
決勝には食材は料理ギルドから提供された素材も使用することが可能なのだがもう必要がなさそうである。
こうして決勝でも如月夏樹はチョコレートを作り、それを見ていた1111番のエルフができたチョコレートの1つをつまみ食いし、審査員に料理の妨害という理由で追い出されていた。
また666番の料理の中に微量に毒が仕込んであるのを、ルシファーが見破り666番も衛兵に連れていかれていた。
1番と2000番の2人も戦意が喪失しており、料理の腕前を魅せることはなかった。
如月夏樹はこうしてアクアシティの入場権をゲットしたのだった。
続きが読みたい、面白いと思った方評価、ブックマークをお願いします。つまらないと思った方でも星評価ひとつでもいれていただくと励みになります。よろしくお願い致します。