料理大会の見学に行こう!
朱莉の武器を作り終えて、予選の大会の日になっている。
ラバルはルシファーに地球の情報を教えられ、菓子作りを集中的に覚えようとしていた。もちろん日本の料理なども覚えている。菓子の試食はアバリムが買ってでていたようだ。
腕輪を渡している時間は俺も自由には動けないため、ゲートをくぐれる工房ギルドか料理大会会場内にいなければ、行動を制限される。
屋敷にいると完全に身動きできないからな。
ラバルの活躍や料理大会の掘り出し物があるかもしれないし、大会の予選を見ようかな。
「『ジョブチェンジLEVEL-3』発動――探偵」
やはり変装といえば探偵だよな。
忍者とかもあるけどやはり現代風にサングラスに帽子を被って見ようかな。
サングラスは異世界じゃ目立つかもしれないが、同じ人が2人の方がだいぶ違和感があるかもしれない。
腕輪で双子というのも言い訳にはならないしな。
サングラスは工房ギルドで朱莉の武器を作った後に作っておいた。
「この世界では眼鏡も珍しいのに、サングラスなんて悪目立ちもいいとこよ⋯⋯」
朱莉が夏樹の行動に呆れたように夏樹にため息をつく。
「この辺は気配遮断を使ったりと⋯⋯」
朱莉の言葉に焦りながらも、しかしロマンは優先しなければ!!
気を取り直してみんなと一緒にラバルの活躍を見に行こうかな。
◇◆◇◆◇◆
―――料理大会会場―――
「かなりの人数が集まるんですね」
『広いね~』
「圧巻なのです」
「これだけ大きな大会なんだな」
「料理は美味しくないのに出る人は多いのね」
「ラバルはかなり腕前が上がっていたのだ」
「うむ!我もあやつの成果を見届けた。きっと素晴らしい成績を修めるだろう」
大会会場はスタジアム型で2000人規模の人数が集まっている。予選だけでもかなりの人数が出るようになっているな。
この都市の大会の決勝はランキングランクの上位がゴールドクラスがいつも独占をしている。
ちなみに俺の今のランキングランクはシルバーランクにちょうど入った辺りだ。
レオナはブロンズランクの後半にいる。
朱莉はなんとランキングキラーをやっていたため、プラチナランクにいるらしい。
仕事柄、初心者潰しをしていたため、ランキングランクの少し上がった者を、相手にしていたから大会などにはほぼ出てないとのこと。
「私のことはいいのよ。さっ!ラバルを探しましょ」
「これだとラバルを探すのも大変そうだ⋯⋯」
「ラバルの格好は目立つのだ!だからおのずと料理も目立つはずなのだ」
「彼処にいるみたいだぞ」
アバリムが目線を向けて如月夏樹を見つける。
ラバルの服装は気合いを入れてかシェフの格好をヒュージバァグワームの糸を使い作っていた。白いロングのコック帽とコックコートを用意し、形から入っている。
「カッコいいのです!」
「似合ってるわね」
「私しも次回出るときはあの格好をしましょう」
そうこうしていると開会の宣言がおこなわれている。
競技内容は制限時間付きで30分で料理をつくるみたいだな。
会場内には至る所に火の魔石を埋め込んだコンロが並んでいる。
ただ道具と食材は持参らしくそれぞれが背負ったものから鍋などを出したりしているな。
審査員はエリア毎にいてそれぞれの場所で歩いたり、立ってみたりしているな。
ラバルの料理道具、食材は渡しているが出すときに目立つため、ルシファーにお願いして範囲瞬間移動を使い空間から出したように見せている。
「どうやら予選のルールは手軽に食べられる物を作るらしいのだ。ラバルはひよこ豆のコロッケを作るみたいなのだ」
「ひよこ豆のコロッケか⋯⋯」
手軽に手に入る食材でなおかつ美味しいもんな。
もともとはフランス、オランダの(クロケット)が由来のホワイトソースベースをパン粉で揚げたものが発祥なんだよな⋯⋯。
ひよこ豆も中東料理でファラフェルってのがあるけど、あれは香辛料が沢山はいってるんだよね。日本に来てコロッケって呼ばれるようになったんだよ。
「『ジョブチェンジLEVEL-3』発動――コロッケ屋」
ラバルは火を沸かしたものにひよこ豆をいれて沸騰させている。
茹で上がったらペーストして塩と胡椒をふりかけていく。
小麦粉に水を入れて混ぜる。堅さは天ぷらの衣くらいになる様に水を調節して、丸めたタネを作ったところでさっき作った小麦粉の水の中にくぐらしてパン粉をつける。
『ジョブチェンジLEVEL-1』――『魔法使い』を使用し、少し『氷魔法』で冷却魔法を使い冷しておく。フライパンの底から1cmの深さまで揚げ油を入れ、180℃に熱し、タネを入れてきつね色になるまで5分ほど、揚げていく。出来上がったら油を切って皿に盛ってできあがりだ。
小麦も少量のために手に入るし、卵は使うと手軽く無くなるかもしれないから、水に代用した。
油は菜箸を入れて泡が勢いよく出てくる状態が180℃以上、細かい泡がフワッと菜箸全体から出てくる状態が中温(170℃前後)の目安だ。
「よし!いい感じになったぞ。熱いから火傷に注意してくれ」
如月夏樹はにこやかに審査員に持っていく。
「これは?見たことのない料理だが⋯⋯」
審査員がフォークをひよこ豆のコロッケに突き刺し、一口噛みきって口に頬張る。
「熱っ⋯⋯!?ハフゥ⋯⋯旨い」
審査員の瞳から涙が零れ落ちる。思わず次のコロッケに手が伸びる。
「おい!食べ過ぎだぞ!まだ他にもいるんだから、審査が公平じゃなくなるぞ」
別の審査員に言われて審査員がはっとして、フォークをおく。思わず3つも食べてしまった。
手元にある羊皮紙に如月夏樹の評価をつけていく。
「それでは予選結果は昼過ぎに発表となる。1847番、評価の参考にするため、この皿は預かっておこう」
いそいそと皿にあった残りのコロッケを確保し、ホクホクとしている審査員の姿があった。
◇◆◇◆◇◆
「ふぅ⋯⋯」
如月夏樹は控え室に戻ると椅子に腰かける。
人前で料理するのは緊張するものがあるけど少し楽しいな。
上手くやれた自信はあった。あとは結果を待つだけだ。
予選を通れるのはわずか20名。そこから5ブロックに分けられ点数の高いものが5名決勝に上がる。
その5名のうちの一人が優勝となる。
しばらくして審査の終了の合図が流れ如月夏樹も会場へ向かうのだった。
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