冒険者ギルドへ戻ろう
朱莉のおかげで『シャイニングセイバー』を説得でき、ギルド野営地区まで戻ってこれた。
「無事に帰ってこれたんだ⋯⋯」
感極まって涙を流すシュトラウス。
「ありがとうございました。
途中の湖で水も補充もできてよかったわ。私たちが来たときは湖畔なんてなかったのに、あんな透き通った水はなかなかないし、毎日の生活やクエストのときにも役立つわ」
クリスが不思議そうに水を持って、湖ができたことにたいして驚いていた。水がたくさん手に入るようになることで喜んでいる。
この世界での水は濁っていたりして濾過をしないと飲めないものだったりと冒険者たちにとって、貴重なものなのだ。水の魔石もかなり高めになっている。
ルシファー達のお陰で毎日の水は困ることがなかったので気にすることはあまりなかったのだが、毎日の風呂などもとてもできるものでもないのだった。
水や酒も高い上に商品は品薄、品質も悪いものが多い⋯⋯
強くなれる要素があまりにもなく、弱肉強食の世界なのである。
「俺たちはここでリタイアして冒険者ギルドに戻るがお前たちはどうするんだ?」
リンが夏樹に聞いてくる。
「俺達のほかにあと一人狩りに出ているからそれを待って戻る予定だな」
パイモンが何処に行ったのかわからないが朝には戻ってくるだろう。バティンをも狂わした光りに、パイモンがなにかされるのかわからないが、一応ルシファーが連絡を取ったときには、予定通り朝には戻るとのことだった。
「そうか⋯⋯俺たちはお前たちが狩った魔獣の森の中の魔物は、僅かしか狩れなかったし、結局のところこの気力じゃ魔物を狩るなんて危険なだけだしな。俺達が勝てないのは目にみえてるな」
ゼルトが話を聞いて改めて小さくため息をはいた。
「⋯⋯」
魔獣の森から帰る時からオリバ・グレートは沈黙を貫いている
。なにか思うところがあるのだろう。
「じゃあ夏樹、私は野営地区の護衛任務があるからまた朝にね」
野営地区も明日の朝までそこで野営をし、昼には撤収を開始する。
今日はギルド野営地区で野宿をしようかな。
「夏樹様、野宿をするなら私しの御借りした魔法袋の中に魔物を従えて帰ってきましたの。きっとお役にたつと思います」
バティンの言葉を聞いて魔法袋の中を確認する。
どれどれ⋯⋯こいつは!簑虫の大きいのが入ってる!糸を使うには持ってこいの虫じゃないか。⋯⋯ん?他にもアルパカみたいなのがいるな。
「ほぅ⋯⋯ヒュージバァグワームとセイントアルパカがいるのだ。マスターこいつらの糸と毛はなかなかいい素材なのだ!非常に大人しい魔物なのだが滅多にいないから珍しいのだ」
これで服や布を作ることができるようになるな。こいつは嬉しい。
さっそく大きな簑の中にいるヒュージバァグワームに糸を出してもらう。
こいつの糸は撥水し、とても伸縮性に優れ弾力性のある糸である。
さっそくこいつの糸を使ってテント生地を作ろう。
「『ジョブチェンジLEVEL-3』発動――テーラー」
テーラーは衣服を裁縫し、または縫い直し、継ぎはぎなどの修理をする職人といった職業である。
魔法袋からナイフを取り出し生地をにしていく。⋯⋯ハサミも欲しい所だな。今度作ろう。
ルシファーとレオナに手伝ってもらいながらテントを完成させていく。
バティンはもう少し動けないと言っていたのでホーヴヴァルプニルのそばで休んでいる。朝には回復するとのこと。
セイントアルパカは毛布だな。セイントアルパカは魔物ていうか聖獣である。セイントアルパカもなにげにでかいな。うっすら光ってるし。
セイントアルパカは毛がりをしても、翌日にはすぐふさふさになるらしい。ある一定を越えると生えるのが止まるらしいのだ。
超便利なアルパカである。地球でもアルパカは毛も最高品質だしな。まあ褐色が高級品みたいらしいけど。
バティンは何処までいっていたのだろう⋯⋯狂乱状態になったりしたのにそんな時間あったの?
「おかげで魔物狩りはほとんどできませんでしたよ」
といいながらも魔法袋の中には魔物が沢山はいっている。
バティンはできる女(悪魔)であった。
◇◆◇◆◇◆
「できたのだ!」
「できたのです」
『わーいできた~!』
ベリルは出来上がったテントの中に入っていく。
「素晴らしい造りですね。やはり連れて帰って正解でした」
「バティンのおかげでいいのができたよ。これなら快適に過ごせるな」
テントは2つドッキングしたものがウーノーピークのラウンドシェルを見立てた作りでテントの真ん中に火を起こせる場所を造ってあるものが完成した。男性用と女性用だな各6人づつ入れるようになっている。
なかなかいい作りである。
自分たちで作っただけあってとてもいいな。やはり外といえばアウトドアだし、テントはロマンだよな。
家とはまた別の楽しみがある。
毛布も2つできたので男性用と女性用にひとつづつわけることができた。
「毛布もふかふかで気持ちいいのです。これは最高です~」
レオナが毛布を抱き抱え、顔を埋めているな。
セイントアルパカに野菜を与えてテントの端にホーヴヴァルプニルと一緒にいてもらう。
バティンは見張りを兼ねて火の番をかってでてくれた。
ほとんど手伝いをできなかったからそのくらいはさせて欲しいと、願ってきたのだ。
「すまないな。バティン頼んだぞ」
「バティンよろしくなのだ!」
「バティンさんお願いするのです」
「ルシファー様、夏樹様、レオナさんおまかせください」
テントの中に入るとセイントアルパカの毛布を被る。
「快適だな」
「とてもいいのだ」
『気持ちいいね~』
こうして夏樹たちはぐっすりと寝れたのだった。
◇◆◇◆◇◆
早めに目が覚めたので朝食の準備をバティンと一緒に取りかかる。
冒険者ギルド野営地区から朱莉がやってきて夏樹に声をかけてきた。
「おはよう!夏樹。また凄いのを作ったわね。それにテントの端の動物⋯⋯見たことのないのがいるけどどうしたの?」
「ああ朱莉か⋯⋯あれはセイントアルパカっていって聖獣だな。毛布のいいのができたよ。バティンが連れて帰ってきたんだ。テントは普通だと思うんだが⋯⋯」
「聖獣?それで作った毛布!?テントもすごくおっきいし見たことない形だし、ん?この生地もみたことのないわね」
セイントアルパカを見ながら中にある毛布とテントにも気になっているようだな。
「テントの生地はヒュージバァグワームの糸だからな。防水性と収縮性に優れたいい糸だぞ。」
「ヒュージバァグワームって標高が高い高所に生息して、しかも簑を作る枝もユドグラシルの枝を使ってる伝説の虫よ?ユドグラシルの枝なんて加工なんて出来ないっていわれるくらい硬度があるんだから。」
⋯⋯ヒュージバァグワームってそんなに凄い簑虫なんだな。
「ルシファー様~!」
パイモンが戻ってきたみたいだな。ニコニコしてるな。
「パイモンおはようなのだ」
「バティンに負けないようないい魔物を狩れました」
「パイモン様おはようございます。大きな魔物が狩れたみたいですね」
「ん?大きい魔物?まあ⋯⋯そうだな。大きさもあるぜ」
パイモンが少し動揺しているな。また目的が変わってしまっているみたいだな。
「さあみんな集まったようだし、冒険者ギルドに移動して成果をみようか」
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