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08「書き置きが見つかる五秒前」

「すみません、我が家の愚妹がご迷惑をお掛けしたようで。――ほら、キャシーも」

「イタタ。押さないでよ、お兄ちゃん」


 片手でキャシーの旋毛あたりをグイグイと押して頭を下げさせつつ、二人を迎えに来たラッセルがジェーンに対して謝っていると、そこへメアリーとビリーが姿を現す。


「ウィリアムくんを連れてきましたよ」

「あっ、ホントだ。お兄ちゃんも来てるや」

「どうも。――ビリー。君も、お礼を言ったほうが良い」

「はぁい。――ごちそうさまでした。クッキー、美味しかったです」


 ラッセルは、キャシーから手を放すと、向かってきたビリーを両手で受け止め、百八十度回転させてジェーンと対面させた。ビリーは、無邪気に御礼を言うと、ジェーンは形式的な返事をしたあと、ビリーのズボンのポケットを見ながら言う。


「また、いつでもお越しください。――おもちゃの銃は、どうしたのですか?」


 ビリーは、ジェーンに言われた瞬間にポケットを触り、そこに何もささっていないことに気付くと、キョロキョロと周囲の床を見つつ、心なしか青ざめながら言う。

 

「しまった! どこかに落っことしちゃったみたい。捜してくる」


 脱兎の勢いで廊下へ飛び出そうとしたビリーを、ラッセルはシャツの襟を掴んで引きとめて言う。


「待ちなさい、ビリー。テーマパーク級に広い屋敷で、闇雲に捜したって時間の無駄だ」

「えっ。だって」

「お兄ちゃんの言う通りよ、ビリー」

「そうよ、ウィリアムくん。ここは、プロに任せましょう」


 キャシーとメアリーは、噛んで含めるようにビリーに言うと、無言のままジェーンを見た。意図を悟ったジェーンは、ビリーに向かって優しく確認する。


「ここと、お庭と、お手洗い以外に、どこか立ち寄りましたか?」

「えーっとね。いろんな色の点がいっぱい描いてある絵が飾ってある部屋に行ったよ。そうそう。かっこいい甲冑もあったんだ」

「北のゲストルームを通り抜けたのですね。わかりました。しばらくお待ちください」


 ジェーンは、四人に向かって折り目正しく一礼すると、すぐに部屋をあとにした。

 

「そういえば、ジャッキーの姿を見てないな。一緒じゃなかったのか?」

「ちょっと前まで庭で一緒だったよ。ねっ、お姉ちゃん」

「えぇ。でも、急に用事を思い出したとか何とかで、出掛けるって」

「あら、そうだったの? でも、事務所には戻って来てないし、ジェーンさんも知らない様子だったわよ?」


 最後にメアリーが疑問を投げかけると、キンバリー家の三人は揃って首を傾げ、やがて、ある可能性に辿り着いたラッセルがボソリと呟く。


「……まさか、ビリーの銃を持って出掛けたわけじゃないよな?」

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