表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

04「きょうだいコント」

「お姉ちゃんがいけないんだよ。信号無視の取り締まりを撒こうなんて考えるから」

「ぐちぐち言わないでよ、ビリー。――あぁ、駄目ね。完全に、エンストだわ」


 ビリーと呼ばれた緑と黄色のチェック柄のネルシャツを着たタヌキ耳の少年と、ポップな極彩色でカップケーキとマカロンがプリントされたスウェットを着たタヌキ耳の女が、オープンカーの上でやいのやいのと騒々しく言い争っていると、そこへ通り掛かったジャッキーが二人に話しかける。


「ねぇ、お二人さん。仲良くじゃれてるところ悪いんだけど、ここがどこか、教えてくれないかな?」

「いま、それどころじゃ……」

「あっ、ジャッキーだ!」

「えっ? あら、ホントだわ」


 ビリーが、話しかけられたのはジャッキーであることに気付くと、ワンテンポ遅れて女も気付き、そしてジャッキーも、二人と面識があることに気付いて驚く。


「あっ! 見覚えがあると思ったら、ラスティーの妹さんと弟くんか。えーっと」

「私は、キャサリン。キャシーって呼んで。こっちは、ウィリアム」

「ビリーって呼んでください。今日は、オオカミのお兄さんと一緒じゃないんですね」

「所長のこと? 今日は予防接種の帰りで、急にメアリーさんが所長に呼び出されちゃったものだから、なんとか一人で事務所に戻ろうとしてるところなの。二人は?」


 ジャッキーが何気なく問いかけると、ビリーは黙ってキャシーのほうを向いたので、キャシーがエンストして困っているという事情を説明した。

 すると、ジャッキーは何かを閃いた様子でパッと表情を明るくし、キャシーに提案する。


「ねぇ、キャシー。ちょっと電話を貸して」

「良いわよ。でも、どこへ掛けるの?」

「フォレストヒルズ四九五の八一二七番。ジェーンに相談してみようと思って」

「ジェーンさん?」

「私と同じ、ジャッカル耳のメイドのことよ、ビリー。彼女、ジェーンっていうの。――ありがとう。もしもし、ジェーン?」


 ビリーからの疑問に答えると、ジャッキーはキャシーから受話器を受け取り、周囲を憚ることなく通常のボリュームで話しはじめた。


「そうなの。あっ、迎えに来てくれるんだ。えっ、今いる場所? ――ここ、何て言うところなの?」

「私が説明したほうが早そうだから、代わって。――もしもし、キャシーです。あぁ、先日は、お世話になりました……」

 

 ジャッキーから受話器を受け取り、キャシーは現在地を説明して通話を切ると、ビリーから渡されたおもちゃの銃をサブリナパンツの前ポケットに差し込み、即興で西部劇ごっこをしてみせているジャッキーに言う。


「小一時間ほどしたら、ここに到着するそうよ、ジャッキー」

「そうなんだ。――さぁ、どうする、ビリーよ。降参するか?」

「フッ。ここで白旗を上げるようなら、最初から悪に手を染めないさ。――イテッ!」

「話を聞きなさい、ビリー」

「ハイハイ。まったく。こういうときだけ、ラスティ―兄ちゃんの真似をするんだから」


 そう言いながら、ビリーが肩を竦めて首を横に振ると、ジャッキーは、そのコミカルな動きに、思わず大笑いした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ