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異世界旅行は愛する娘と共に  作者: 月見ヌイ
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何故か目が覚めたら捕まってました。です

「ふあぁ……」


大きな欠伸一つ、アレフは冷たい床から体を起こし寝ぼけた頭のまま辺りを見た渡す。おかげで一瞬自分の置かれた状況が理解出来なかった


「…………あっ、そうだ。俺捕まったんだ」


首を捻って考えること暫し、アレフは納得するように手を打って事の一部始終を思い出した


そう、A5と共にボスを(多分)倒してその場から逃げ去った俺はあの曲がり角で何かを被せられ視界を奪われた。その上何か固い物、恐らく棍棒のような物だろう、それに体をくまなく滅多打ちにされて俺は意識を失った……


(……うわぁ、何気にこれヤバいやつか?)


見れば体中青タンまみれで、肋骨ら辺の違和感からして骨も数本やられてる様子。痛みには人一倍強いという自負はあるが、それは脳内で流れる麻薬物質が痛みを感じないよう機能に制限を掛けているに過ぎない。体は確実にダメージを受けている


(そうでなくとも出入口どころか、窓らしい物も無い。上は……天窓って言うんだろうか、これは)


四方と床は完全にコンクリートの壁で覆われているが、天井は完全にぶち抜かれていて青空がそこから覗ける。が

見るからに丈夫そうな格子が取り付けられておりそこからの脱出も望めそうにない


「んんー……キツイな。そもそも今何日だ?アレから何日経った?」


そして、果たしてアイツらは無事なのだろうか……いや、戦闘面で言えば俺より強いアイツらの事だ……心配なのはリリ、とマナくらいだろう。そんなマナも強力な炎を自由自在に操れる。

そう簡単に危険な目には会いやしないだろう…………となると、自分のやる事はただ一つ、だっしy────


「脱出は不可能ですよ」


「は?」


突如上から声が響いてきた。丁寧な口調だが、どこか聞き馴染みのあるイヤーな声だ。上を見て声の主を暴こうとしたが残念、太陽のせいで逆光の形になり相手のシルエットは分かっても顔だけはわからなかった。おかげで男という以外は誰かイマイチ分からない


「それにしてもあれ程まで完璧に引っかかるとは驚きでした。きっと躱されると思って仕掛けを五重で仕掛けていたくらいですから……」


と、まぁ上の男は長々と自慢げに騙り出した。その声があまりにも最近聞いた声なので、アレフは顔も見えないままに上の男、その正体を何となく察し

またも納得したように手を打った


「あぁ、お前フーガか。なるほどな」


「えっ今気づいたんですか?……あぁ、日光のせいで顔が見えないんですね」


「そうだ。それにそろそろ見上げて喋るのも億劫になってきた。出来れば降りて来てくれないか」


断られるのを承知でそう言うと、案の定フーガは悪っぽいイヤな笑い方をもってアレフを見下ろす。その目にはこれまた純粋な悪意が篭もっていた。アレフには見えていないが

ともかく、フーガはこの提案をにべもなく却下した。というのも


「そこに出入口なる物はありません。見たらわかるでしょう?つまりそこから出る事も、逆に入る事も出来ないんですよ」


「ほぉー……それじゃ、何で俺はここに居るんだ?入れないんだろ?」


これを聞いたフーガはまたも笑った。嘲笑とでも表すべきか、口元を手で隠し、怒りっぽい人が見れば一発でキレてしまうような、そんな笑い方だった

一頻り笑い、満足したのかフーガはゆっくりと無知な幼子に指導するかの様に言葉を紡ぎ始めた


「この格子は特注でね、特定の呪文を唱えると大きな穴が開き、すぐに閉じるという代物なんですよ……気絶した貴方をそこへ放り後は放っておけば監禁の完了。どうです?」


実に自慢げな口調、話初めから終わりまで余すこと無く自信に満ち溢れ、してやったりと最後に付け加えかねない程の勢いだった。この時になって、やっとこさアレフの目も慣れつつありフーガの面持ちを捉え始めた


「……成程なぁ。それで、道に仕掛けてた物ってのは?視界が真っ暗になった事しか覚えてないんたが」


「それは簡単な事ですよ。往来の通路の曲がり角その屋根上、そこで事前に待機しておいていざ、アレフ殿がそこを通られるってなった時に上から大布を投げ込む…といった実に簡単な物です。何せ時間も人手も無かったんでね

いやはや、思い返しても驚きましたよ。天下の大泥棒ともあろうアレフ殿が滑稽にもあんな罠に引っかかり、棒で滅多打ちにされている姿を見る時が来るとは!」


「あぁ俺も驚いた。なるほどな、それも納得したよ。それで、飯はあるか?腹が減って仕方が無いんだ」


思えば朝、荷台に積んであった干し肉を少し齧って以来何も口にしていない

先程目覚めてからしきりに腹の虫が駄々をこねている。このままでは暴動を起こされかねない程には勢いづいてきた


だが、アレフの言葉に対する返答、反応はまたしてもフーガによる嘲笑だった。


「食べ物何かありませんよ。それも罪人に与える食べ物なんてある訳ないじゃないですか……ふふ、水ならありますがね。いりますか?」


口ぶりからしてどうせロクな事じゃないのは予想が着いたが、今は大人しく従った方が良いだろうと、アレフは素直に首を縦に降る

それを見たフーガはあの兄とは似ても似つかない顔に浮かべた嘲笑の色をより一層濃くして、細い指で晴天を指した


「?」


「雨水を啜っていて下さい。無いよりマシでしょう?……ぶふっ、ふくく」


うわっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはと、体を剃り返してフーガは大笑いした。きっと手中に掴んだ大手柄が嬉しくて嬉しくて堪らないのだろう。さっきから口調や、その内容が知恵の守護者らしからぬ物になりつつあった


(今なら簡単に口を滑らしそうだな)


馬鹿笑いも冷静に流したアレフはこの場を逆に利用し、情報を少しでも多く得ようと二の口を継ごうと口を開いた……が、その前に格子から新しい人影が一つ差し込み、遮られた


逆光に目が慣れているアレフはそのヤケにデカい影の主にハッとする。鼻にガーゼを貼られて間抜けな仕上がりとなったその顔は……


「ボスか、元気してるか?」


「あァ、おかげさまでなァ最近快眠だぜ……にしてもよォフーガ、てめェちョッと喋り過ぎだぜ?」


「あっ、す、すみません……嬉しくてつい、舞い上がってしまいました。」


ボスの出現はフーガにとっても多少驚きだったのか、先程までの異様なハイテンションから普段の比較的落ち着いた表情へと戻っていた。というかボスの背中から漂う仄かな怒気に萎縮すらしていた。格子一つ挟むアレフからすれば関係無い話だが


「よォアレフ、このバカタレから色々聞いたんだろォ?お前のこッた、今も脱出の手を考えてんだろうよ、だがそりャー無理な話だぜ……じゃあ、また会おうや。心配しなくても時間になりャあ飯くらい用意してやッからよ」


何せ俺らは、天下の知恵の守護者だからな。とボスは最後に付け加えその場を後にした。置いていかれまいとフーガも後を追う。最後にチラリと格子の方を振り向くと、偶然にも下のアレフと視線があった


「…っ!」


思わず、身震いした。アレフの目が、この世のものとは思えない程に醜悪で、且つ世にも恐るべき「大泥棒」の目をしていたからだ。フーガは慌ててボスの方を向き、逃げるように走り出していった


もう、振り返る事は無かった

一人残されたアレフは、ぐでっと横になり物思いに耽った。


(まず、ここは何処だろうか……空を見る限りオオエドの物に見えるが、夜空じゃあるまいし青空なんて何処でも似たような物だしな……というか俺は一体どれくらいの時間眠ってたのか。一日か二日か、はたまた三年……いや、それは無いか。何にせよアイツらは無事だろうか、俺が居なくても何とかなるだろうが……心配だ)


そんな事を考えていると、ウトウトと微睡み始めてしまった。そして事もあろうにアレフは欠伸を一つ噛み殺し、横になったそのまま瞼を閉じて明るい内の睡眠を謳歌しだしてしまった。


(大丈夫……既に、策は打った……ふぁ。それまで、きゅう…けい……。)


そうして、アレフはオオエドに来て何度目かの心地良い眠気に身を任せるのだった。続く

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