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異世界旅行は愛する娘と共に  作者: 月見ヌイ
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船の中で相棒が寝取られそうです。


「おぉえぇええええぇぇぇぇ…………」


アレフは吐いていた。絶賛、船の上で

リリハラで出会ったわかりやすい海の男、名は「バーデン」というらしいが、

そのバーデンの船に揺られ数日、毎日のように胃の中の物を尽く吐き出していた


(ま、まさか俺の三半規管がこんなに弱いとは思わなかった……おぇ)


そういえばマナはどこに行った。マスターも居ないし……というか外に出てるの俺だけって……寂し、おぇ


その後、一発気持ちよく出す物出したアレフは、愛する娘を探し出すため

船の中を軽く捜索する事にした


(何気にデカいんだよな、この船……)


そう、意外とスペースがある。そして揺れる……そのせいで探すのも一苦労だ、が当てはある


ガチャ……リン、コ


「あ、パパ!」


操縦室に居た。予想通りだ

しかし操縦桿を握っているとは思わなかった。あの筋肉野郎どこ行きやがった。馬も見えない


「あ、あの人らはねー……あっち!」


マナは正しく「あっち」を指差す。なるほどあそこか……どこだ?

俺は一度操縦室から出る。別に操縦に関しては問題ないだろう、マナには悪いがこの船は恐らくオート操縦に切り替えられている。その証拠に、さっきマナが操縦桿を切ったのとは別の方向に船の舵が切られた


(流石にそこまでアホじゃないか……)


さて、バカ馬と筋肉を探し出さなくては……まるで宝でも探している時のような心境だ。見つけても一切の得がない部分はまるで違うが


とにかく、マナの指差した方向に進んでみる。いくつかのドアが見える辺り

そのどこかに居るのかもしれない

物音とか聞こえないだろうか


「んっ……!」


……え?


「あっ、そこは……」


……すぅー(現実)はぁー(理想)

辛い、聞こえちゃいけない声が聞こえた。もう引き返そうか……いや、自分の相棒がこのまま良くない道に進むのを止めなくてはいけない、相棒だしな


(この部屋か……?いや、見たくないな……いや、行くか。頑張ろう)


パチッ、一発頬を叩き気合を入れる

そもそもこの部屋かどうかもわからないし……ガチャ……リン、コ


「いやー……良い曲線美じゃあないか」


「ちょ、止めろって……そこはこそばゆいんだ」


地獄絵図。

馬の体を撫で回すパンイチの筋肉

また別ベクトルで吐き気が混み上がってきた。が、頑張って飲み込む


(と、いうかどういう状況だよ、これ)


取り敢えず現状を見守ってみよう。流石にここに突然突っ込むのには勇気が足りない。むしろ一生足りなくて良い


「毛並みも良いし、中々ちゃんと手入れしているんだな……アレフがやってんのか?」


「んー……まぁ基本的に俺自身がやるかな。アイツはたまにしかやってくれないな」


うっ……中々痛いとこを突いてくる

ていうか、ブラッシングしてほしいならそう言ってくれれば何時だってしてやるし、何ならマナにもさせてやりたいのに……


「ふーむ……不満は無いのか?あるなら俺の家に来てもらっても構わないぞ。この筋肉なら喜んで受け入れれる!」


一瞬、俺は体中に流れる血液の動きが急速に加速するのを感じる。あの野郎

俺の相棒を勧誘とはいい度胸している


と、アレフが意を決して殴り込みをかけに行こうとした瞬間


「そりゃ勘弁。不満はあるが何だかんだ今の生活が気に入っているからな」


「ちぇー……だってよアレフ」


「なんだよ……知ってたのか」


名前を呼ばれたアレフは抵抗はせず

ドアを開けきり、部屋の中に入る


「盗み聞きたぁ良い趣味してるじゃんよアレフぅ……」


「男に体を許したヤツには言われたくないな」


聞くと、マスターのブラッシングを申し出たバーデンが無理やり部屋に押し込み、同意を得る前にもうブラッシングを始めてしまったらしい。拗らせていたのはどうやら筋肉野郎の方だったらしい


「ま、つまるところ俺は悪くない。不問ってやつだ……わかったか?」


「あぁわかった。同時にこの船の主がやべぇヤツという事もよーくわかった」


その船の主はウヒヒと楽しげに笑ってる。とても怖い、思わず目を逸らしてしまった


とにかく危ない奴らを部屋から連れ出し、マナの待つ操縦室へ向かう


ガ……ッチャン、コっと

ちなみにこれはドアの開いた音ではなく、アレフの心の声。セルフ効果音だ


「ようマナ、操縦楽しんでるか?」


「うん!おーともー、ど?になってたから、せるふもーどにかえちゃったけど、これだいじょーぶ?」


マナの可愛らしい口から紡がれた言葉を聞いて、筋肉バーデンの顔が青ざめる


「っす、すまないお嬢ちゃん、一度操縦を変わってもらえないか?大変なことになる前に」


「えー、やだ!これ、たのしいもん!」


いやそういうことじゃなくてだな……とバーデンはやきもきしたように手をわちゃわちゃとする。正直諦めた方が良いと思う、マナはこれで頑固な所がある。特に気に入ったものに対してはトコトン頑固。こうなったら簡単には退かないだろう


「飴ちゃんやるからさ……な?」


「むぅ、あめ……」


マナが涎を垂らす。そういえば最近甘い物を与えていなかった……機会があったら少し食べさせてやろう


と、アレフがそんな事をぼんやり考えていると同時に船が大きく揺れる


「う、うぉ、なんだこれ!?」


「しまった……テリトリーに入っちまったんだ……て、手遅れになっちまった」


テリトリー、海の生き物のだろうか

なんにせよこちらには「攻める」事が出来る。恐ることはないだろう


「ちょっと外出てくる。マナ、一緒に来るか?多分今は外の方が面白いぞ」


「ほんと!?じゃ、そといく!」


マナはぴょんと座っていた席から降り、こちらに駆け寄ってくる

マスターはどうしようか、置いていくのは危険な気がするが


「あ、俺の事は気にすんな。バーデンも操縦に必死だしよ」


見れば、バーデンはもう操縦桿を必死に操作し、現状を打開しようと模索している。あれならうちの相棒が寝取られる事も無いだろう


(というか人の俺には反応せず、馬に反応するって本気でヤバいな……これからはマナの視界に入れないようにしよう)


そう「本気で」固く誓ったアレフと、外に何があるのか期待しているマナの二人はドアを開け、船の外へ出た


▶▶▶


何というか、何だろう。強いていえば

巨大な魚。見るからに尋常じゃないソレは、十では効かないほどの数でこの船を囲んでいた


(んー……予想以上、か)


どうだろう、俺一人なら一匹相手にするのが限界だろう。しかし、マナなら


「マナ、あれ出せるか」


「もちろん。マナの「ひっさつわざ」だからね!」


良かった。これで出ないとか言われたら必死こいて逃げる算段を立てなければいけない所だった


「じゃあ打て、場所は―――そこだ」


アレフが指差したのは真正面の海

幾重もの魚の壁が積み重なったそこを指差す。それと同時に、アレフは自分のすぐ横でとんでもない量の魔力が稼働していくのを感じる


「パパ、ちょっとはなれといて……」


「わかった」


アレフは少し距離をとる。マナも、船の先。ギリギリいっぱいの所に移動する


「すぅーー、よし………「ふぁいあ!」」


瞬間、海が割れた。というより蒸発したのか。ともかくとんでもない火力による圧倒的暴虐が自分らのテリトリーを「犯された側」の魚らを襲う

恐らくこれでは骨も残らないだろう


(……すげぇ)


アレフはそんな桁違いな「力」を持つ娘の事を素直に感心する。実に見事だと思う。自慢の娘だ、と


「ふぅ……パパ、ほかのおさかなさんどうする?」


「放っとけ。もうすぐどこか遠くへ逃げるだろう……」


見ると、仲間らが一瞬で蒸発した事でパニックに陥った巨大魚らはあちこちに散っていった。このままどこかへ散り散りに逃げて行くのは察しがつく

それよりも


「マナ、あれを見ても驚かないんだな。てっきり少し泣くかと……」


「な、なかないもん!マナつよいもん」


マナは頬を膨らませる。少し意地悪な事を言い過ぎただろうか……お詫びに頭を撫でてやり、そのまま抱き上げてやる


「さて、キショい筋肉バーデンに伝えてやらなきゃな……マナの活躍を」


「うん!ばんごはんふんぱつしてもらおー!」


奮発だとか、そんな難しい言葉一体どこで覚えているのだが……我が子ながら成長の速さにビックリする。超愛おしい、この子は天才だ。将来は女神にでもなって世界を統治するかもしれない


人の事を言えないくらいキショい親馬鹿を包み隠さず披露したアレフと、そんな事知ったこっちゃないマナはその後、操縦室にて「もうダメだーおしまいだー!」とマスターの「尻」に抱きつくバーデンの姿を見る事になった


▶▶▶


「申し訳ない。そしてありがとうな」


バーデンの一言目はそれだった。しかしその体制がおかしい


「何でまたマスターの体にすがりついてんだ」


「いやもう俺死ぬと思ったから最後に触っておこうと思ってだな……」


尚もマスターの後ろ足にスリスリと頬を擦り寄せるバーデン。アレフはこれはマズいとマナの目を隠し、その場を離れる


「ちょ、おい待て逃げるな!置いてかないで助けてくれ!」


「自分でどうにかしてくれ、俺はこの変態をマナの記憶の一部にしたくない」


結局、船が目的の島に辿り着くまでアレフとマナは一切操縦室には行かず、外で景色を楽しんだのでした


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


ズドォォォォン……………。と途中船の中からそんな衝撃音と『操縦がオート操縦に切り替わりました』という機械的なアナウンスを聞かなかった事にして


さて、というわけで

いつも通りの二人と筋肉をぶちのめした一匹の旅が、再び始まる。

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