オオエドに到着したら馬鹿みたいに歓迎されました
いよいよ、いよいよだ。どれだけ待ち侘びた事だろう……やっとこさ彼らがこの街に現れる。何も知らず、ノコノコと
きっと彼らは驚くだろう。事前の準備に抜かりはない
「コーガ様、そろそろ……」
「あぁ、もう出る」
下町へ出る様の、普段着より一層煌びやかな服を見に纏い、コーガは戸を引く。さぁ出迎えに行こう、ヤツらのあほ面を気の済むまで眺める為に……
▶▶▶
やっと、やっとこさである。やっと目的の場所、その港が見えてきた
朝食のサンドイッチを口に咥え、ラストスパートと言わんばかりにエンジンを吹かしてスピードを上げていく
他のこの船に乗る人達……娘のマナとかその他諸々はと言うといつも通りデッキに居た。今日は一際、歓声が湧いて聞こえてくる。時たま「まだー!?」とか「早くー!」とか聞こえてくるがこれ以上スピードを上げると船の方が限界を迎えてしまうので、我慢してもらう
それにしても遠目に見てもわかるくらい船が停泊している。大小様々なのは昔と変わらないが数が随分増えた。いつもこうなのか今日だけ特別多いのか……だとしたら幸運極まりない
船を隠すなら船の中、人を隠すなら人の中、である。存分に活用させてもらうとしよう
一応、それからオオエドの港まで辿り着くまで幾つか小さめな出来事があったのだが敢えて伏せておく事にしよう
と、言う訳で!
「ついたー!ついたついた!つーいーたー!」
「わぁ、ここがオオエド……異世界の、大都市……?何か日本っぽいけど……」
「ニホン?ニホンって、リリの故郷の?へぇ……なるほど。にしてもやっと、やっと着いたぁーーー!!!」
お誂え向きに空いた船と船の隙間にアレフはディーゼル式の小舟をねじ込み、碇を降ろして停泊を完了させる。
オオエドへの上陸、その第一歩はマスター含めて全員で。と先程決めた所
「用意は良いか?……じゃ、行くぞ」
「「「「せー、のっ」」」」
トンッ。約一頭程「音は」違ったが全員が全員無事に着地する事が出来た。特にリリ辺りはあれで鈍臭い所があるから、サシャが心配のあまりガッチリと手を握っていたのたがどうやら無傷らしい。良かった良かった
「さて、それじゃ宿でも────」
宿でも探そう。そう言おうとしたのだが、アレフの言葉がそれ以上続く事は無かった。と言っても暴漢らに口を抑えられたとかでは無く、あくまで自意識の中で、言葉を止めた。何故なら
「「「「「いらっしゃいませぇ!!!」」」」」
貴様ら全員飯所の店員かと突っ込みたくなるが、そうでないのは見たらわかる。何せ服装、そして年齢がバラバラなのだ。ついでに性別も実に統一性が無い。というか街の人間全てが総出でお出迎えをしに来ているように見える
証拠に、この目の前にいる一個集団の他にも様々な方角。例えば無人だと思っていた横の船のデッキだったり、砂浜の方で遊んでいた子供だったり……
「なぁこれアレ?ドッキリってやつ?」
「あぁ〜、この前リリが教えてくれた奴ね。それを言えばフラッシュ、モブ?の方が近い気もするけど。ねぇアレフ」
サシャから話を振られてもアレフは無言で前を見据えていた。それに対しサシャは多少ムッとするも、まぁいつもの事なのでマナと喋る事にする、が
「…………」と、まぁマナも見事にだんまりである。そう言えば船を降りてから一言も言葉を発していない
「あー、サシャ。前見てみ、あとリリちゃんはそんなキョロキョロしちゃダメだ。かっぺがバレるぞ」
かっぺとか生まれて初めて言われた。というか意味がわからないし、煽られてるのは口調でわかるが……
まぁ今はそんな事は良いだろう。問題は「前方」アレフとマナが黙って見据えるその方向にある
(……パパ、あれだれ?)
(コーガ、このオオエドで一番面倒で関わりたくない輩だったんだが……何とまぁ、若殿自らお出迎えとはな)
「よく来たねアレフとマスター、そして旅の同行者の皆様。貴方らが来るのはカナンの一人娘から飛んできた文で知っていました。待っていましたよ!」
前方、一個集団の中で最も煌びやかな男がアレフの言うコーガなのはよく分かる。というか凄い目立ってる、紫や茶ばかりの上着の中に一人金と銀でテカテカしている。正直目が痛い
「どういう風の吹き回しだ?あんたが俺を歓迎するなんて、『黒猿』でもけしかけて暗殺でも狙ってる方がイメージに合っていると思うんだが」
「ハッハッハ!何もあんな昔の話、誰もわざわざ蒸し返したりなどしやしないさ!何せ君らはカナンの恩人なのだろう?いや、良い。君らはどうせ謙遜するだろうからな。何にせよ、カナンの恩人はオオエド、締めては極東の恩人だ。もてなす義務がある」
そんな内容の大声と共に、大仰な素振りで手を掲げたコーガ。何をする気かと身構えるアレフだったが、残念。心配には及ばなかった
コーガの合図に呼応して現れたのは二台の人力車、それと馬を乗せて移動出来る一台の手押し車……因みに全車両に人が二人ずつ付いている
「…………本当に、何のつもりだ?何か腹に一物あるなら今すぐ吐け」
「ハッハッハ!相変わらず疑り深いな君は。心配せずとも、何もしないさ。街総出で君らを歓迎し、もてなす。それだけだ。なぁ皆の者?」
「「「「おおぉぉぉぉぉぉーー!!!」」」」
かくして、アレフらのオオエド上陸その第一歩目は疑いに塗れたお祭りムードとやけに明るい「若殿」によって出迎えられるのだった
▶▶▶
「ボス、準備は宜しいですか?忘れ物があった。なんて言っても知りませんからね」
「わかッてらァ!さァ、さッさと出発しようやフーガァ!」
所変わって知恵の守護者 本部その屋上
大きく(H)と書かれた床に乗っている変な形状をした羽根の付いた球体の中に「ボス」とコーガの弟であり、ボスの部下を勤める「フーガ」が乗っていた。
球体の先頭にある操縦席に乗り込んでいるのはフーガ、ボスは後部座席で窓の外を食い入るように見つめている。まるでこれから「初めて」を卒業する子供のような目をしながら、夢中で
それを尻目にフーガは静かに、複雑な機体確認を手早く済ませ、エンジンのスイッチを「ON」に切り替える。すると先ず「羽根」が回り始めた、パタパタと羽ばたくのでは無く円を書いて羽根が回っている。ボスの視線も漠然とした「外」から、具体的な羽根へと移った。
「飛びます」
「おうッ、頼まァ!」
フーガが手元のレバーを奥に押し込むと、呼応するように球体が床からその足をゆっくりと離していった。再びボスの視線が下へと移る
「凄ェ、凄ェな!」
子供か。あんた4~50のおっさんだろう(不確か)ちょっと空飛んだくらいで騒がないで欲しい。特にいつも人を怒鳴り散らして、たまに放つ全力のグーで部下を宙にぶっ飛ばしているおっさんの口から無邪気な子供のような口調は聞きたくなかった
「……はい、というわけでこのまま真っ直ぐオオエドへ向かいます。事前に説明しましたが、目的地へ辿り着くのは明日の夜中です。それまで食事や睡眠はこのヘリの中です……繰り返しますが忘れ物等は大丈夫ですね?」
「おうッ!頼むぜフーガ機長さんよォ!寝落ちで不時着とかマジ勘弁な!」
「忍に寝落ちは有り得ませんよ。そんなミスを犯すようなら今僕はここに居ませんから……では、出発します」
というわけで、彼らは極東及びオオエドへ出発した。その多岐にわたる経緯の末に取得していたヘリの免許を懐にフーガは忙しなく機体をチェックしていく。対してボスはずっとわーわー!と、騒いでいる。心から楽しんでいるようだ
…………場所や心の中身は人それぞれでも、目指すのは己の平穏。幸せ
そんな訳で「極東編」始まり始まり〜




