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異世界旅行は愛する娘と共に  作者: 月見ヌイ
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幕間、地の文には羽根があります。

どんぶらこ〜、ど〜んぶらこ〜。と大海原に一つの船が浮いていた

時刻は夜半過ぎ、ディーゼルエンジンはそのけたたましい唸り声も鳴りを潜めて、まるで一つのオブジェクトの様になっている。


さて、船があるならそれに乗っている人も居るはず……しかし、船の上にそれらしき姿は見えない。至って無人。何故だか四足歩行の生き物の姿は見えるような気がしないでもないが、どうしよう、見なかったフリをしようか


「待て!待て待て待て、今目が合っただろうがよ!おい、逃げんじゃねぇ!」


少々騒がしさが過ぎると思うのだが。

致し方ない。諦めて少々関わるとしよう……で、貴方は誰ですか?


「何だよ、えらく他人行儀じゃーねぇか?仲良くしようぜ?俺はマスター。実はこう見えて馬なんだよ……ひっく」


うわ、酒臭っ。この馬、酒飲んでやがる!ち、近寄らないで、匂いが移る!

あーもうダメだこの馬、目ぇ据わってるし!ちょっと、貴方の持ち主はどうしたんですか!こんな馬一匹放ったらかしにして、一体どういう神経してるんです!?


「ん、あぁ?アレフか?あいつぁもう寝たよ。マナちゃんとサシャと一緒にな……丁度良いや、夜警で暇をしてたんだ。ちょっと話でもしようやぁ〜」


あぁもうウザい、完全に酔っぱらいの絡みじゃないですか……!というか何で実体のない私を視覚で捉えられるんです!?

……えぇい、もう時間の無駄です。ここに居ても酔っぱらいのウザ絡みに付き合わないといけなくなるだけです。サッサとここから離れ、元の仕事に戻るとしましょう……


「あぁ、おいこら待ちやがれ!天使野郎、飛んでくんじゃねぇ!おーい!」


……ほんと、何故見えるのか。今のマスターの発言はどうか忘れて下さい。

まぁ、私地の文の姿なんて誰も気にしないでしょうが……さて、どうせ見て記すなら可愛らしい寝顔と、後は夢の内容くらいの方が良いだろう。

と、後はこれを記しておかないと


[酔っぱらいは気をつけるべし]……と


▶▶▶


港町カナンから出航して数日。アレフは幾つか驚いていた。先ずはサシャの回復力……何と凄い遅かった。魔力の限界まで行くと、一種の体調不良の様になるようで……何日も看病を強いられた。まぁそれは良いが


次はこの船のエンジン……マリアに付けていた注文通りのディーゼル式。それは良いのだが如何せん音がえげつなかった。操縦室の真下にエンジンがあるのだが振動がえげつなさ過ぎて常時足場が安定していない。油断したらつまづくんじゃないかというレベルで振動している。音が床を揺らしているのだ……タービンエンジンより燃費が良い、点検も(のはず)だと思い注文したが失敗したと心から後悔している。


極東までの航路、その間に幾つかの街を経由するつもりなのだが、次に立ち寄る時は何よりも先ずこのエンジン音をどうにかしよう


そして、最後は「マナ」だ

彼女はカナンにて生まれて初めて友達という物が出来た。名はマリア

町の貴族、カナン夫妻の遺した一人娘だ。歳は……いや、定かでは無いから伏せておこう。歳下でも、女性の年齢を軽々しく口にするとろくな事が無い


ごほんっ……、それで、友達が出来たマナなのだが、ろくに親交を深める間もなく……結果的に、だが彼女らを引き離す形になってしまった。

だから、もっと悲しむかと思った。哀しみ、涙を流すかと思った……、だが

俺の予想は全くと言って良い程外れた


「マナ、大丈夫なのか?」


「なにがー?だいじょうぶだよ?」


顔に出していないだけなのかと、優しく声を掛けてもそうすげなく返されてしまう。もしかしたらこの愛する娘は自分が思っている以上に立派な成長をしているのかもしれない。そう思うと無性に涙が零れてくる。これが父性か


以上三つの点が船生活で驚いた所……恐らく、それなりの長旅になるであろうから更に何かしら問題点が出たり、新発見があったりするのだろう……もう「旅人」になって結構な月日が経った。おかげで行った事のある街で新しい発見をしたり、綺麗な景色を楽しむ余裕が出来たり……まぁどれもかれもがマナのおかげだろう


当初は、出会って数日で「泥棒辞めろ」だとか言い出すようなよく分からない子だったが、共に旅をし、過ごし、生きていく内に随分と家族らしくなれたと思う。自分が父らしくなったと言うよりはマナが娘っぽくなっていったような気がしないでもないが……


何にせよ、今の自分にはそういった驚きや、予想外を楽しむ余裕がある。きっとこれからもそうだろう、そうであってほしい……心から、そう願う


▶▶▶


さて、所変わって知恵の守護者 「本部」


「カナン、駄目だったようですね。」


「あァ……今朝ァ連絡が入ッた。でも全くよォ、計算外ッてェわけじャァねェ」


どちらかと言えば帰ってきた尽く、馬も人も全員が全員酒の海に溺れたのかと愚痴を言いたくなる程にベロベロな酔い方をしてた方が計算外。

まさか、カナンのご令嬢が「そういった」妨害をしてくるとは思わなかった。やって彼らを匿う程度だと思ってたのだが……


「それで、テンガロンらの処遇はいかに?業務中の飲酒は罰則案件ですが」


「ちョいと謹慎させりャ充分だろうよ。元からそんな当てにしてなかッたからなァ。怒る気にもなんねェわ」


「ボス」がそう投げやりにボヤくと、処分の方法を丁寧にフーガがメモしていく。彼もまたカナン突撃の作戦については否定的だったのでこれには同感。

あ、怒る気にもならないという部分が同感、という意味だ


「そういえば、テンガロン……彼、ボスの横に着きたいそうですが、どうです?考慮してあげては」


話題を変えようと、そう振ってみた。という口ぶりだが言外には「自分はいつでもこの席を譲るので、代わりに良い上司を用意して下さい」という重厚な怨念が篭っている。

ついでに目線にも少々鋭さでも増しておこう


「俺ァ側近に置くのは「出来る奴」ッて決めてんだわァ。だからよォ、そんな怖ェ目ェすんなよ!ガッハハハハハ!!」


だがボスは動じない。まぁ分かっていたからこそこういう事が出来るのだが、それにしてももう少し面白い反応を期待していた。後ついでにもう少しマシな上司も用意して欲しい


せめて淹れたての熱いお茶を顔面にぶちまけないような、良識のある上司を……どうか、どうか宜しくお願い致します


そんな一人の忍による切ない無言の願いは、誰に拾われる事もなく空へ昇っていった────。

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