たまには幕間も挟みましょう。
こんにちは皆、今回はいつもの地の文にはお休み頂き、代わりにこの俺
稀代の名馬「マスター」が務めさせていただきます……え?敬語が似合わないって?俺もそう思う。だから敬語止めるわ、こっからはいつも通りフランクにいかせてもらうな
さてさて、今俺と、その後ろにくっつけた荷台に気怠気に座るアレフ、そしてマナちゃん、地の文の言い回しを借りるなら「いつも通りの二人と一匹」は名も無い野っ原をひたすら真っ直ぐ進んでいた。
目的地?そんなもんはない、全てはアレフ……荷台に気怠気に座ってる馬鹿次第である。ムカつくがここに居る者で最も発言権があるのはこいつだ
故に行きたい場所、その決定権もこいつが握っている
そして今の所明確な目的地を示してないので、とにかく真っ直ぐ進んでいるのだ。このまま行けばいつかまた海に出るだろう
……っと、せっかく地の文に無理やり休暇を取らせて代打やってんだから普段出来ないような事しないとな。勿体ねぇよな。そうだよな……ぷぷぷっ
「あー……、アレフは急に荷台を飛び降りて前方へと駆け出しました」
「おいマスター、暇なのはわかるが急に訳の分からない事を口にするな。マナの成長に悪い影響を及ぼしかねない」
チッ。そうだった、声に出しちゃダメなんだった。ならば「ココ」アレフにもマナにも絶対手出しできない言わば絶対不可侵領域(捻りなし)で一発ギャフン!と言わしてやる
アレフは!急に!荷台を飛び降りて!前方へ駆け出しました!!!喰らえ!
「……?っと、お、おぉ!?」
アレフの体が急にピョンと跳ね上がり
荷台から無理やり降ろされる。そしてそして、アレフの足がこれまた急に高速で動き出す。瞬く間に前方へ、視界から消えるほどのスピードで駆けて行った
「わー……おうまさん、パパなんではしってっちゃったの?」
「んふふー……知ーらねー!」
俺は上機嫌だ!実に上機嫌!何だよあの野郎、行く先行く先で俺を留守番させやがって、良いじゃねぇか俺を連れて街を回れば!要はアレだろ?愛するマナちゃんを独り占めしたいんだろ?
そうは問屋が卸さねぇっつーの!
「マナちゃん、何か欲しいもんある?」
「んー、なんだろー。ふかふかがほしい、かなー」
フカフカ……俗に言うクッションか?
お易い御用ってもんだ
と、ここで突然マナちゃ……マナのすぐ後ろに真っ白でフカフカなクッションが無から現れた!……………………
てなもんでどうだ?
「……マ、マナちゃん、後ろ見てみな」
「うしろー?……わぁ!」
良かった、マナちゃんの反応的にどうやら成功したっぽい……というか今なら俺、何でも出来るんじゃね?うわ全知全能じゃん俺、マジやべー!
いや、マジやばくね?人を好きに操れて好きな物を無から生み出せるんだぜ?……あれ、これってこの星を征服する事も出来るんじゃね?
「ぐふふ……ぐふふふふ……遂に来ちまった、俺の時代がよぉぉ!!!」
なんて事だ、まさかこれ程までだとは思わなかった……さーて、何からやってやろうか。やはり先ずは魔力か?
(なら、えーと……)
マスターは己の体中に魔力が流れ、満たされていくのを感じる。それは後方でクッションをモフモフしているマナのよりも濃く、強い魔力の流れ
「ぐ、ぐふふ……キタキタ!どれ、一発試してみるかな」
狙いは前方……恐らく糞アレフが未だ駆けている方向……そうだ、せっかくだから当ててみるか
アレフは体の自由が戻る。さぁ帰ってこい、出来れば怒りも込めて来い
「お、来た来た」
見えた見えた。予想通り怒っているようだ、こちらに猛進してくる
「んー……雷、とか良いか。よし!」
魔力の流れるイメージ、それを一箇所に集める……とか前にマナちゃんが言ってたな。こんな感じか?
「マァァスゥゥタァァァァァ!!!!」
来やがったな……こっちも準備万端だぜ!
と、俺の美しいたてがみから何か一枚のメモが落ちた。あ、これ地の文に渡された奴だな、こんな所にあったのか
「喰らいやがれアレフ!えー……べ、ベクトサンダー!」
なになに?アレフはマスターの放った雷魔法を華麗に避け、体するマスターは後方から近づくマナの襲撃によって
「組み伏せられ、た……だと?」
なんて事書いてやがる。こんなの書き残して行くなんて何を……あっ
「つーかまーえたー♪」
マナちゃんに首根っこを掴まれ、そのまま横に倒される。そこら辺のしょぼい馬なら最悪死ぬ可能性もある姿勢だが、まぁ俺だし大丈夫。というかこれは不味いやつじゃねぇか……?
「おいマスター」
「うっ!?……よ、よぉアレフ元気してるか?」
「あぁ超元気だ……おいマナ、今日は馬肉にしよう」
じょ、冗談だよな?いや流石に食べはしないよな?せめて飯抜きとかそんくらいだよな。だよな?
「わーい!」
あ、駄目そう
▶▶▶
「ふぁ……あれ?」
目が覚めたらそこは夜、草原
俺の体にざっくりと部位分けの線を書き廻らした張本人らのアレフとマナはぐっすりと荷台で眠っている
(夢、だったのか?)
にしてはとても印象に残っている
というか具体的過ぎて現実と全く差異無かった……と、なると
「お前か?地の文」
……
「世界を書き換えれるのはお前だけだ……全部お前が仕組んだ事だと仮定したら筋が通る、だろ?」
……いやはや、マスターも侮れない。
正解ですよ、お見事……しかしせっかく夢オチに落ち着けようとしたのに。
「ははっ、全てはお前の手のひらの上だったかー」
当たり前じゃないですか。こんな危ない「能力」簡単に渡せませんって
「そりゃーそうだわな……なぁ、この後お前が俺に何をするか当てていいか?」
ふむ、どうぞ?
「おう、お前はこの後俺の記憶を消す
そっちの方が都合が良いだろうからな」
……いやー、まさかそこまで頭回るとは思わなかったな。流石マスター!
なら出血大サービスでちょっとだけプレゼントを残していくよ、それで今日の事は文字通り水に流して貰う
「お!気前がいいねぇ。なにくれるんだ?甘ニンジンならまだあるから居らないぞ?」
はっはっは!それは起きてからのお楽しみ、という事にしておこう……さ、目を瞑って貰えるかい?お互いの為に
「あぁ良いぜ」
マスターは静かに目を瞑った。ってね
▶▶▶
朝。圧倒的に朝。
陽は昇り鳥のさえずりも聞こえてくる
マスターが起きたのは三番目、一番最後だ
「んん……何か寝足りない気がするんだが……酒でも飲んだっけかな」
「あ、おうまさんおきた!おはよー!」
マナちゃんが朝一番の挨拶をくれる
朝からとても元気の良い事だ、これだからたまに若さを羨んでしまう
と、アレフは……飯を作っていた
「おせーぞ、早く顔洗ってこい。もう朝飯が出来上がりそうだ」
こちらに顔を少しも向けず、えらく素っ気ない口調でそう言う……何故だろう、こいつにとんでもない恐怖を覚えるのは
(夢の中で何かされたのか……?)
ぼんやりとも覚えてないが、まぁ別に良いか。さっさと用意して飯食わないとな、と
「なぁ、その荷台に乗ってるソレ、何なんだ?」
白くてフワフワしたもの……サイズは少し小さめだろうか。何か最近見た事があるような、無いような
「知らん、起きたら置いてあったんだ。なぁマナ?」
「うん。ふかふかでね!すっごいきもちいいの!」
「ほーん……ま、なんでもいいか」
そう、なんでもいい
今の俺は飯を食う事だけに全力を出す。その他の事は取り敢えず後回しだ
悩み事があるなら道を進むした時にでも考えればいい(頭ん中は暇だし)
「ま、今日も頑張んねぇとな……」
新しい日、新しい旅が始まる
いつも通りの二人と一匹は仲良く朝ご飯を食べ、いつも通り道を真っ直ぐ進む
……クッション、チョイスミスだったかなぁ?




