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異世界旅行は愛する娘と共に  作者: 月見ヌイ
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愛娘と見る夜空は本当に綺麗でした。

夜、いつも通りの二人と一匹は夕食も終え、外に二つの寝袋を並べていた


「今日は星が綺麗だから外で寝よう」


というアレフの思いつきが理由だ

マナも賛成し、マスターはハナから外で寝るのでどうでもいい。と言うわけで満場一致で決まった


(それにしても本当に星が綺麗だ……)


空気が澄み、冷えている所ではよく綺麗な星空が見れるが、今居る場所はそうでも無い。だがここは格別だ、唯一無二とも言える星空

マスターの牛歩による偶然なのだが、結果としてこんな星空を見せてやれるのだ。少しだけ感謝してやろう


「パパできたよー」


「あぁ、ありがとう」


アレフは消えかけの光る石を回収し

木々で起こした小さな炎を消して、就寝の準備を整える

殆どの旅人や商人、外で寝泊まりする可能性のある者達は「獣避け」と呼ばれるお香を炊いて眠りにつく。何せこの世界、どこに行けども獣が居る。危ないのだ


が、この二人と一匹は例外。何せ人語を喋れる馬と炎を噴く幼女が居るのだ。それに本当にピンチが迫ったらアレフにも「切り札」がある。抜かりは無い


「じゃあ寝るか。おいマスター、いびきかくなよ?昨日凄かったぞ」


「ぐっ……わかってらぁ。おやすみ、マナちゃん」


「おやすみー」


と、いうわけでアレフとマナは用意した寝袋の中に潜り込み、マスターはその場で寝転がる。最近知ったがマスター以外の普通の馬も寝転んで寝たりするらしい


「……オリオ、アスベラ、リットリオ」


アレフは天を見上げ、ボソッと呟く


「なにそれー、たべもの?」


「星の名前だ……見えるか?あの大きく光る三つの星だ」


アレフは指をさす。並べて寝袋を用意したので、どこを指しているのかわかるはずだ


「あ、ほんとだ。すっごいひかってる」


「あれを全てこう……繋げると三角の形になるだろう?あれを「南大陸第三角」(アレスト・リットリオ)という」


と、思う。はっきり言って覚えてない。何せそんな洒落た知識、少し齧った事があるくらいだ。ちなみに使うのは今日が初めて


「ねぇパパ?」


と、横で共に空を見上げているマナが服の端を摘んでくる。可愛らしい


「何だ?星の質問ならお手柔らかに頼むぞ」


「うん、あのね?なんでおほしさまってあんなにひかってるの?」


……アレフは答えに詰まった。それはハナから勉強してない類の知識、知る由もない類の問題だ


「あ、あー……あれだ、星は光っているからな。その光がここまで届いているんだ」


「でもおほしさまってずっとむこうにあるんでしょ?それにいろんないろがあるって……」


(な、なんて聡明な……この子知識偏り過ぎやしないか!?)


少々驚いたが、とりあえず顔には出さない。そしてすぐに落ち着かせる

さて、どうしよう。もう答えようが無い。先程のも風の噂で聞いたことがある(気がする)ものである。確証は無い


「……よし、もう寝よう。おやすみ」


「ぱーぱー、ねぇなんで?なんでー?」


体を揺すられる。この辺子供は一切躊躇無く全力でやってくる。手加減というものを知らないのだ


「マ、マナ!止めろ。止めろっての!」


「ねーパパ!パパってば!」


マナの勢い、圧はドンドン増してくる

終いには寝袋から飛び出して、両手でグイグイと突っかかって来た


「パパ!パーパー!」


「うるっせぇなー……全く、眠れやしねぇ。おいアレフ、答えてやれよ」


マスターまで起き出しやがった。全く

これでは俺の方が悪者じゃないか。無知は悪とでも言いたいのだろうか


「はぁ……空でも飛んで近くで見れば何かわかるのかもな」


アレフがそう投げやりに呟くと、マナの攻撃がピタ。と止む

と、同時にアレフはいや〜な予感を敏感に感じ取る


「そらとんだらわかる?」


「あ、あぁ。多分な……」


これは嫌な予感が当たりそうだ

その証拠にマスターが狸寝入りし出しやがった。さっき口出ししてきたくせに


「じゃあいこ!」


マナはそう言うと、自分の数倍はあろう体躯を持つ俺の体を無理やり寝袋から引っ張り出した。前からそうなのだがどうやらこの子は魔力だけでなく腕力も並外れている。俺なんかよりよっぽど力持ちだ


「あいたたた……行くっつってもどうやって行くんだ?炎を噴いても空は飛べないだろう?」


アレフは少し意地悪を言う。これで興でも冷めてくれれば……なんて思って言ったのだが


「ふふーん、マナとべるもんねー!」


どうやら逆効果だったようだ

マナに手を伸ばされ、それを受けると

そのまま半ば無理やり立ち上がらさせられ、ギュッと手を握られた。この規格外のパワーからは考えられない小さく、柔らかな手だ


「なぁマナ、もう諦め、ろぉぉっ!?」


言うか早いか、アレフの体が宙に浮いた。いや、アレフだけでは無く手を握ったマナも一緒だ。


「え、おい、マナ!?」


「ふふーん」


マナはえらく自慢気だ。いつもなら

「あら可愛い」で済むのだが今回は別だ

これはヤバい。怖くて下が見れないしまだ高度を上げている


「ど、どこまで行くんだ!?」


「んー……もっとうえ!」


ヤバい、尿意すら覚えてきた。

何せこんな高さ初めて味わっているのだ。恐怖を飛び越え、終いには虚無まで行きそう、逝きそう


「もっとはやくとぶね!」


「待てマナ!待ってくれ!」


ダメだ、聞いちゃいない。マナはドンドン速度を、高度上げていく。段々寒くなってきた。それに息がし辛い


(そ、そういえば上は酸素がとか何かの本にあったような気が……!)


あれはなんて言う本だったか……あー

「面白い人の殺し方」みたいな題名だったような……ような……よう、な?


「あぁ!?」


「ぱ、パパ!?なに、どしたの?」


マナが驚いて急停止する。一気に止まったので腹の中が全て飛びてそうになったが、辛うじて堪える


「マ、マナ……これ以上は止めておこう。死ぬかもしれない」


「なんでー?」


「酸素、今マナと俺が吸っている物が無くなるんだ。無いと死んでしまう!」


今の体制(マナに手を握られ宙ぶらりん)的にちょっとマナの顔は見られないのだが、どうやら俺の必死さは伝わったようだ。上昇を完全に止め、宙に立ち往生している


(ていうかどうやって飛んでるんだ?羽根でも生やしたのか?)


止まっているなら何とかマナの姿が見れるかもしれない、というわけでアレフはそろっと上を向く。極力体を揺らさないように……


「あ、パパこれすごいでしょー!そいえばみせたのはこれがはじめてだねー」


(い、いや……こんなの見た事ないぞ)


「背中に翼って……そんなのアリか?」


生えていた

背中に真っ赤な羽毛で作られた大きな双翼が本当に生えていた


「パパ、あたしね、そらをとべるの!すごいでしょ!」


えらく自慢気だ。いや、実際自慢して良い、それほど双翼は力強く、美しかった


「……と、とにかく!一旦下に戻ろう」


アレフの悲痛な叫びがより一層夜空が綺麗に見える上空で響いた


▶▶▶


聞き分けよく地面に降り立ったマナは

そろり、とアレフの手を離してそれから真っ赤な双翼を「消す」。煙のように


「……おいアレフ、お前初めて空飛んだだろ?どうだったよ」


マスターがだらしない姿勢はそのままに片目だけ開けて、半笑いで聞いてくる。こいつもマナの翼を見ている

やはり驚いているのだろう


「パパどしたの?あしふらふらー」


マナの言う通り足元がフラフラする

正直、今自分がしっかりと地面に足がつけているか自信が無い。まだ空に浮いている気分だ


「……マナ、空を飛べるのは俺とマスターとお前だけの秘密にしよう。誰かに自慢したり、勝手に出したりはダメだ

……わかったか?」


「わかった!」


ここで「なんで?」とか言わない辺りマナが実に聡明で、思慮深い事を表していると思う。同時にちゃんと話を聞いているのか不安にもなるが……


「なぁアレフ、感想聞かせてくれよ」


「感想?あぁ……そうだなぁ」


夜空がより綺麗に見えただとか。浮遊感に股間が縮み上がったとか色々あるのだが、そんな長々とこの馬野郎に話してやるのは癪だ。簡単に一言で終わらせてやろう


「もう、空は懲り懲りだ」


その後、結局アレフとマナは荷台の中に潜り込み、いつも通り静かに眠りについたとさ―――おわり


「……ね、眠れない……!!!」


どうやらアレフの夜はもう少しだけ続きそうだ。

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