機械まみれの街はロマンがいっぱいです。
「クラフティス」それは各国の職人が集まり、己の腕を磨き、競う世界有数の
工匠国家
飽き飽きするほどいつも通りな二人と一匹は、旅に必要な物を調達すべくそんな街に立ち寄っていた
「スンスン……すーっごいにおいだね」
「そこら中で金属を燃やしているからな。匂いもそりゃキツいだろうよ」
カッポカッポと露天並ぶメインストリートを闊歩する二人と一匹は、えらく機械的な街並みを眺め、進んでいた
誰が作ったのかそこら中に煙突が立ち
用途のわからない歯車が延々と回り回っている
マナ曰く、魔力を動かしているらしい
あの歯車は思ったより凄い物なのか
「って事はあの歯車作ったやつも魔力が目に見えるのか……?」
だとしたら凄い事だ。魔力なんて俺は勿論この世に存在する九割九分の人間は目に出来ないだろう。見えるのは余程選ばれた人間だけだ
マナのような……もしかしたらこの街にはそんな人間もいるのかもしれない
「おいアレフ、ここに来た理由を忘れんなよ」
「わかってる。わかってるから……」
よく見たら何やらえらく「動いている」
建物がある。何だあれは、足でも生えているのか?
(男心をくすぐる街だな……前に来た時はこんな感想得なかったんだが)
精々金目の物がたんまりありそう。辺りしか考えていなかったと思う
今思うと実に勿体無い話だ、こんなにも美麗で乙なのに
さてさて、そろそろマスターに怒られそうなので本題の買い物に戻ろう
まぁ大概は食べ物なので簡単に集めれる
「ジャガ、ポテ、イモ……なんかにてるものばっかりだね?」
「いや、全然違うぞ。ジャガは煮込み料理に強い、ポテとイモは揚げたり焼いたりすると真骨頂を発揮する」
父は芋で馬は人参、親らの野菜好きに辟易しつつ、マナは肉売り場の方をジッと見つめてアピールする
勿論アレフはそれに気付き、致し方なしとそれなりの量を購入した
と、いうわけで
「観光するぞ!」
観光する事になった。というかした
例によってマスターは厩舎にて留守番を頼み、アレフとマナは仲良く手を繋ぎ、機械仕掛けの街並みを見て回っていく
「わっ!パパ、あのおうちあしがあるよ!」
見ると本当に足がついている家があった。それも一個二個では無く、一並び全ての家だ。今は動いてないがきっと動くのだろう。ロマンだ
他にも道行くこの国の人らは顔に変なお面を付けていたり、一関節事に仰々しい機械を付けていたりと……あまりに格好良い、一々俺の琴線に触れてくる。一つ貰えないだろうか
と、アレフが1人感銘を受けていると
これまたメカメカしい形の拡声器から男性の声が響いて聞こえてきた
『小飛空艇が上空を通過します、ご注意下さい。繰り返します小飛空艇が上空を……』
(しょ、小飛空艇!?何だその格好良い名前は!?)
思わず空を見上げる。仮面を付けたこの街に住む人らからすると大して珍しい事では無いのか、気にも止めず道を行くが、アレフやマナ含め外から来た人間は物珍しいと、歩みを止めている
「きた!」
マナが指差す先に、翼の生えた茶色の塊が見える。こっちに向けて飛んできているようだ
(飛行艇……なるほどな、文字通り船に翼を付けたのか)
船、というにはあまりに小さいが
人一人が中に乗り込むには充分なサイズの鉄塊。それにこれまた鉄製の立派な双翼がついている
「か、格好良いな……」
「そー?なんかごつい……」
「む……そうか。マナはああいうの嫌いか」
まぁ仕方ない。好きを押し付けて嫌われては元も子も無い。その辺は彼女に一任するとマスターと話し合って決めたのだ
(ならここではしゃぎ過ぎてもいけないな……)
「マナ、何か小物でも見に行くか?この街特有の珍しい物があるかもしれない」
「うん!いきたい!」
アレフはマナの小さな手を引き、その場をゆっくりと歩いて離れる。名残惜しさは少しある。が顔には出さない
態度にも出さない。それがアレフの親としての「通すべき筋」だからである。
▶▶▶
小物も小物だった。機械仕掛けの人形や、荷車を模した小さな模型など様々な種類の玩具が所狭しと並んでいた
が、どれもこれもアレフのような所謂男向けの物ばかりで、マナのような小さな女の子からすれば何が良いのかちっとも分からないような代物だった
「んー……これ、もダメか」
「かわいくなーい」
どうやらこの街、クラフティスそのものがマナの肌に合わなかったらしい。
残念な事だが、別に街は他にもある
それも色も匂いも用途も全てが違う様々な街が。
(小物はまた別の街にするか……!)
仕方ないので、特別に甘い物を何個か買ってやりそれをお土産にマスターの待つ厩舎へと二人は戻った
「なんでぇ、何かシケたお土産だな?」
「文句を言うならこれは俺が食べる」
買ってきた甘味……どおなつ、と言うらしいが、それを食べようと口に近付けると、急に横からマスターが割り込んで来た
「……なんだよ」
「食べないとは言ってないだろ?」
えらく腹の立つ顔だが、致し方無い
持っていたどおなつをマスターに渡してやり、食べている間に荷台のサイズを元に戻す
「マナ、この中で座って食べろ」
「ふぁい」
口の中をモゴモゴさせたマナは、急いで荷台によじ登る。余程どおなつが気に入ったのだろうか、気に入ったのなら良かった。出来る事なら行く先々で楽しい、嬉しい思いをしてほしい
その街、その場所を「良い思い出」として一生頭の片隅に置いておけるように
▶▶▶
いつも通りの二人と一匹はいつも通り静かに街を出た。手にはどおなつを持ち、積荷には買い集めた芋や干し肉
「次の街はマナの好きそうな所にしないとな」
「パパとおうまさんがいっしょならどこでもいいよ?だって、たのしいもん」
笑顔は潰えない
この旅が終わるまでは




