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シワコアトル孤児院

 進められるうちに進めておこうと思いまして。内容が雑な部分もあると思いますが、そこは目を瞑ってください……。誤字脱字等がありましたら、教えていただけると嬉しいです。


6/27 改稿致しました。

 辺りを見ると、沈みかけている夕日によって建物という建物が銀朱に染まっている。その建物たちはあまり丈夫には見えないけど、人の話し声は絶えず聞こえてくる。そして私はあることに気がついた。


────私、お金とか住むところとか何も無いよ?!どうしよう!!


 私は服と、お父様と連絡をとるための道具以外何も身につけていない。


────ピンチじゃない……!


 さて、どうするか。こういうときってどうするんだろう。考えろ、自分!!


 ピ、ピ、ピ、ピーン……時間切れ~。思い浮かばない。まあ、いいや。取り敢えず歩こう。


 人の声が一際多く聞こえてくる方に向かって歩き出す。キョロキョロしていると、小さな男の子と目があった。ニコッと笑うと、ニィ~っと笑い返してくれた。可愛い。




◇◈◆◈◇◈◆




 広場のようなところに出た。真ん中に噴水がある。周りの人の頭を見て驚いた。


────髪の色、明るい!!赤にピンクにオレンジに赤茶に水色、黄緑、金髪?!す…すごい……!


 立ち止まってまたもやキョロキョロしていると、優しげな50歳位のおじさんが話しかけてきた。


「どうしたのかな。お嬢さん。もし迷っているならおじさんが案内してあげよう。」


 そう言って私の腕を掴む。


────いやいや、明らかに怪しいから。しかも腕痛いよ。


 私は無言で腕を振り払った。するとそのおじさんは驚いた。それなりの力込めていたんだろうね。でも、私ってある程度の怪力なんだよ?それでもまだ話しかけてくる。


「驚かせてしまってごめんね?別に怪し「ああ、すみません。その子親戚の子でして。お待たせしてごめんね。」


 別の声が途中でおじさん──不審者でいいや──の言葉に被せて入ってきた。振り向くと、20歳後半位のお兄さん──助けてくれたからお兄さん──が立っていた。私は話を合わせる。


「お兄ちゃん!迎えに来てくれたんだ!ありがとう!」


 すると不審者は陰険な顔して舌打ちすると去っていった。


────うん。最後まで不審者だね。




◇◈◆◈◇◈◆




「本当にありがとうございます。助かりました。なんとお礼を言ったら良いのか…。」


 私はお兄さんに頭を下げる。するとお兄さんは顔を上げてほしいと言ってきた。


「いや、構いませんよ。あれは何処からどう見ても怪しかったですから。ああ、私はエルマーと申します。孤児院で院長をやっております。」


 私はこれだ!と思った。今の私はこの世界に身内がいない。魔界にいる。なら、私は孤児じゃないか。うん。嘘はついていないよね。


「えっと、私はイリアナと申します。実は両親がいなくて、私を育ててくれた人も死んでしまって。これからどうしようかと悩んでいたところなのです。もし、ご迷惑でなければ、その孤児院に入れてくださいませんか?」


 ちょっぴり目をそらしながらそう言うと、お兄さん改めエルマーさんは目を見張った。


「それは、辛かったでしょう。御愁傷様です。これも何かの縁でしょう。我がシワコアトル孤児院へ歓迎しましょう。こちらです。」


 そうしてあっさりと私の居場所は決まった。さっきまでピンチだったのは何だったんだろ…。



◇◈◆◈◇◈◆




 エルマーさんについていくと、周りの建物より一回り大きな建物の前に着いた。中からは子供たちの声が聞こえてくる。


 エルマーさんに促されて、私は中に入る。すると、今まで騒いでいた子供たちが一斉に私の方を向いた。誰もが私より幼いみたいだ。


「皆さん、この子はイリアナさんです。今日から皆さんの仲間になりますよ。仲良くしてあげてくださいね。」


 エルマーさんが私を紹介する。私は物珍しくて周りをキョロキョロ見回す。石造りの壁も床も天井も全てが真っ白で、壁には点々と蝋燭が灯っている。蝋燭掛けは簡易的なもので、少々錆びているみたいだ。部屋の真ん中には大きな長い木でできたテーブルがあり、その周りにはこれまた木でできた椅子がある。なんとなく和む光景だ。


「紫の目、きれ~!宝石みたい!キラキラしてる~!」


「髪もだよ!青い髪の毛、光ってる!すっげ~!」


 子供たちが私を見て誉めてくる。私の目の色は元からこういう色だから、誉めてもらえると素直に嬉しい。髪の方は本来の色とは違う色だからちょっと複雑だけど、誉めてもらえるのは嬉しいな。


────でもね、皆。皆の好奇心溢れるキラキラした目もとっても素敵だと思うんだ~。


「イリアナです。仲良くしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします!」


「お願~いしま~す!」


 それから自己紹介が始まった。


「私はトゥーリよ。8歳なの。今は針子になるための縫い物の練習をしてるの!よろしくね!」 


 薄いオレンジのお下げを揺らしながら最初に自己紹介をしたのはトゥーリ。見たところこの孤児院の中で最年長だったのだろう。正義感溢れる濃いオレンジの瞳が印象的だ。


「じゃあ、次は僕。ディーン。7歳。やりたいことはまだ見つかってないから、探し中。よろしくね。」


 少し赤みの帯びた茶髪をさらりと流している。ディーンもやっぱりここでのお兄さん的存在なのだろう。そのグレーの瞳は知的な光を宿しているように見えた。


「私はフレア。ディーンと一緒で7歳だよ。私はね、お花屋さんになりたいんだ!だから、今はお庭のお花のお世話をしてるの。よろしくね~!」


 茶目っ気たっぷりの茶色い瞳が細められる。赤いふわふわとした髪の毛がフレアの明るさを表しているように思えた。


「「メリルとケイル。さて、どっちがどっちでしょ~?」」


 藤色の髪を肩より少し上で切り揃えた双子が私に聞いてくる。まるで鏡に映したかのように瓜二つの二人は見分けがつかない。声もものすごく似ているから尚更。私が悩んでいると…、


「「ざ~んね~ん!時間切れ~!答えはね~…、」」


「私がメリルで、」

 

「僕がケイルでした~!」


 悪戯が成功したときのように飴色の瞳を二人して輝かせている。正直これからも見分けられないかも…。


「あっ、私たち5歳。」


「僕が兄でメリルが妹だからね。」


「「よろしく~!」」


 最後まで息ぴったりだった。


「あのね、あのね、ボク、ダン!3歳になったんだよ!すごしでしょ~。」


 そう言ってダンは無邪気に笑う。まだ短い金髪を何だかわしゃわしゃ撫で回してやりたくなった。さっき私を見たときも赤い瞳をキラッキラさせていた。すっごく可愛い。


「それでは改めて私も。ここの院長をしています、エルマーです。私のことは『院長先生』もしくは『先生』と呼んでくださいね。ああ、一応私は30になりました。改めてよろしくお願いします。」


 実は30歳って…。エルマーさんは青みがかった銀髪で、淡黄の瞳をしている。これは見た目詐欺だ。20歳後半ぐらいだと思ってた。


────ここにいる子供は私を含めて七人みたい。楽しくなりそうだな。




◇◈◆◈◇◈◆




 そのあとは孤児院の中を案内してもらったり、皆で夕食をいただいてその食器を洗ったり、女の子だけで体を拭き合っこしたりした。とても楽しかった。あとは寝るだけだけど…。今お父様に連絡をとるのは不味いかな。寝た後がいいよね。


 共同寝室では貴族や国から寄付されたという大きなベッドに皆で潜り込む。7人になったけど狭くないねってダンが言ってくれる。実際にまだ余裕があるので驚いた。重さと年期が入っているお陰でベッドはギシギシと音を立てる。魔界で昨日まで使っていたベッドとは大違いだ。でも、こんなのも悪くないな。


 空はすでに闇に包まれ、淡い光を放つ月と自分はここにいると主張するような星々がちりばめられている。皆でお話をして楽しむ。トゥーリは自分が最年長だったから私が来たのが嬉しいらしく、私に抱きついて離れない。ディーンはベッドの上ではしゃぐダンを捕まえようとしている。メリルとケイルは明日お使いに行くそうで、フレアから色々言われてる。


 話してると、エルマー院長先生がやって来た。


「もう外は真っ暗ですよ。寝る時間です。ダン!はしゃいでいないで止まってください。」


 ああ、ダン注意されちゃったね。ダンはおとなしく止まる。そして口を開く。


「お外真っ暗じゃないよ、せんせー。お月さまとお星さまで明るいよ!だからボク、起きてる!」


────おとなしくなかったよ…!ダン、それ言っちゃ駄目だと思うよ。院長先生困るから。


 けれど、こんなダンの言葉に院長先生は慣れっこなのだろう。全く動じもせずにダンを見据えて言う。


「そんな悪い子のところには魔人族がやって来て、食べられてしまいますよ。いいんですか?」


────…………………………はい?

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