プロローグ
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6/18 改稿致しました。
時を感じる古城──魔神王の城──。灰色の空の下、色褪せた白い壁の上には重厚感のある黒い屋根が鎮座している。庭は息を飲むほど美しい花々が咲き乱れている。
◇◈◆◈◇◈◆
「もう、あの世代の魔人はほとんど死にかけている。あのときから王位も私に継承された。と、いうわけでこの話を了承しようと思う。」
そんな古城のある一角でその話し合いは行われていた。そこに集うは、魔人族の中でも魔力が最も強い『魔神王』──クロノス・シア・ソロモン──、『四大魔神』の一族──アダルジーザ、カッサンドラ、ケルスベル、レスビート──の長達だ。
そして『この話』とは、人間が魔人族に平和協定を結んで欲しいと言ってきたこと。それを結べば魔人族はまた、人間界を行き来することができるようになる。しかし、200年前の歴史が繰り返される可能性もないことはないのだ。
「了解いたしますが、彼らは信用ならないのでは。」
魔神王の言葉に口を開いたのはケルスベルの長。払われた赤みがかった黒髪は軽く波打つ。
「その事ならば考えがございます。我が娘イリアナを人間界に送り込むことに致しましょう。そして、イリアナに情報を送らせることで、信用出来るか見極めればよいのではないでしょうか。」
そう答えたのは、アダルジーザの長。知性溢れる鋭い眼差しを魔神王へと向ける。をその言葉に魔神王は目を見開き、四大魔神達は納得の色を示す。
「イリアナ嬢はまだ10歳ながらも聡く、魔力も高い。幼いながらの視点で人間界を見てきてくれるやもしれんな。私は賛成ですな。」
無精髭を撫でながら呟いたレスビートの長の言葉に他の四大魔神も大きく頷く。一人、魔神王は少々苦々しい表情をしていた。
「いかが致しますか。魔神王。」
カッサンドラの長が魔神王の意見を仰ぐ。四大魔神の視線を一身に受けた魔神王は少しの間を置いてゆっくりと口を開く。
「………それでいいだろう。」
魔神王のその言葉により、会はお開きとなった。斯くして、イリアナを人間界へ送り込む事が確定した。
◇◈◆◈◇◈◆
「なぜあんなことを言うのだ、フィリップ。もっと他の方法があるだろう。よりによって…」
フィリップ──フィリップ・ミル・アダルジーザ──は部屋に魔神王と二人になった瞬間、そんな言葉をかけられた。目の前には先程の威厳ある姿とは打って変わり、脱力し項垂れている魔神王クロノスがいる。
「私だって大切な娘を人間界に送り込むのは辛いさ。しかし、それよりも嫌な事があるのだよ、クロノス。分かるかい?君に娘が嫁ぐなんて考えたくもない。」
フィリップは最後の方で忌々しげに言い捨てた。魔神王であるクロノスは100年少々の時を生きてきている。そのクロノスは親友であるフィリップの娘イリアナに、イリアナがまだ3歳の頃から求婚し続けているのである。
「そんな…。お前はすぐそうやって…。」
「フッ。これはもう決定事項だ。君が許可を出したのだからな。私は清々している。諦めろ。」
フィリップはハッハッハッと愉快そうに笑いながら、城をあとにした。普段はやり手の魔神王も愛しい者のこととなると、ダメダメなのであった。