昔の話
お初にお目にかかります。Neishelia と申します。人生初、小説を書かせていただきます。拙い文章で、誤字脱字も多くあり、不定期投稿になると思います。何卒、暖かい目でお見守りください。よろしくお願いいたします。
6/14 改稿致しました。
一つ昔話をしようか。それは未だに忘れられぬ話であって、とっくのとうに忘れ去られた話。私たち魔人族はおやすみ前のお話として幼い頃は聞かされるんだよ。決して忘れることなかれ、とね……。
むかーし、むかしの話。人間界と呼ばれるその世界にはいくつもの種族が共存していた。そのなかでも大半を占めていたのは、人間と魔人族。
そこは、魔法・魔術と剣が存在する世界。己の命を国のために捧げる者、はたまた、生きて行くために魔法・魔術を使い、剣を手に取る者もいた。
見た目など人間とたいして変わらない。ただ、人間よりもはるかに多くの魔力を保有し、平均寿命が300歳前後、無詠唱で基礎的なものから高度な魔法・魔術まで使え、魔力が強ければ強いほど色素が濃くなっていく。
そんな魔人族は人間界とは別の世界、魔界と呼ばれる世界にも住んでいた。基本的に温厚な種族である彼らは同族の仲間意識がとても高い。同族の者が貶されようものなら、それはそれは怒り狂った。
人間界にはとある帝国があった。この国には奴隷制が存在した。けれど、魔人族の奴隷だけは禁じられていた。奴隷にでもしようものなら、魔人族の怒りに触れて、この国どころか人間界もろとも、滅びてしまうに違いないのだから。
しかし、とある奴隷商人がそれを破った。奴隷となった魔人族は虐げられ、こき使われ、その膨大な魔力を最後の一滴まで絞り取られた後、殺された
これを知った魔人族は烈火のごとく怒り狂った。それだけだったならばその奴隷商人がその存在を消されるだけで済んだだろう。しかし、そうはいかなかった。この国を統べる皇帝までもが手を貸していたから。それが引き金となり、帝国の奴隷商人は皆、逃げる間も無く殲滅された。
この出来事は、事の経緯を知らない帝国以外の国々から見れば、一方的に魔人族が攻めて来たようにしか見えなかった。よって、他国は帝国を援護するために、魔人族と対峙することとなり、人間と魔人族の全面戦争となった。
そんな戦いの最中、皇帝の仕業にいち早く気がついた帝国の皇子が皇帝に反旗を翻した。そして実の父である皇帝を打ち、その所業を他国の王公貴族に伝え、皇帝の首を持ち、身一つで魔人族を束ねる王、魔神王のところへ参上した。
「この者が此度の全ての元凶にございます。私はこの者の息子です。今後の責は私が全て負いましょう。ですから、此度はどうぞここでご容赦を」
そう言いながら皇帝の首を差し出した。その皇子の瞳には言葉に出来ないほどの強い光が宿っていた。魔神王は今は了承できないと答えた。しかし、いつかその願いを聞き届ける魔神王が現れるかもしれない、とも。
皇子が国に帰ると、他国の王公貴族から口々に責め立てられた。なぜなら帝国の仕業のせいで、魔人族は一人残らず人間界を去ったから。魔法や魔術に関してほぼ全てを魔人族に頼っていた人間界では、それはそれは大きな痛手となった。それも皇帝や国王が死んだことなど、とるに足らないことになるぐらいの。そして帝国は他国から見放されることとなる。
皇子はそこで諦めはしなかった。自らが王となり、帝国からシェヘラザード王国へと名を変えた。それからは、国の再建に尽力を尽くした。王は帝国の過ちを二度と起こさぬようにするため、それを書物にしたためた。そして言い伝えができるようにと、自らが民に語って聞かせた。そんな一生を過ごした王が初代シェヘラザード王である。
結構な話だと思わない?魔人族からしてみれば、人間は身勝手な奴ら。人間からしてみれば魔人族はたかが身内一人で怒る短気な奴ら。でも仕方ないんだよ。違うんだから。見た目が同じでも中身が違うんだ。でもね、一つ同じことがある。この戦争でどちらも傷ついたってこと。これだけは同じ。種族は違うけれど、感じることは同じなんだ。
なのに何故だろう?人間界ではこの話を知る者は今や一人も存在しない。まだあの戦争から200年しか経っていないのに……。