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年下騎士は今日も私に夢中です  作者: 紅花うさぎ


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10.結ばれる想い

 奥の手ってそういうことか……


 夕食後、レイモンドに呼ばれた部屋に入って納得する。そこには私の両親がいた。


 先に来ていたレイモンドは父と一緒にぶどう酒を飲んでいるようで、二人とも楽しそうだ。


 私に気づいたレイモンドが、隣の椅子をひき座らせてくれる。


「ソフィーも一緒に飲もう」


 レイモンドがぶどう酒の瓶を私に差し出したが、それを断りサラにお茶を頼んだ。


「ぶどう酒は好きじゃないんだっけ?」


「嫌いではないんだけど……」


「ソフィアは飲むと真っ赤になって寝ちゃうのよ」


 父の横でぶどう酒を飲みながら母が言った。すでに結構飲んでいるのだろう、いつもは白い母の頬が耳まで赤く染まっている。


「本当に寝ちゃうのかい?」

 レイモンドの問いにコクンと頷いた。


 本当に飲んだらすぐに気持ちよくなって寝てしまうもんだから、人前では絶対に飲まないようにしているのだ。


「へ~!!」

 何故だかレイモンドはとても嬉しそうに笑った。


「酔ったソフィーも見てみたいなぁ」


 ねっと、期待を込めた瞳で見つめられても、今日は無理だ。肝心な話はまだ始まってもいないのだから。


「今日はイザベラ王女とアルフレッドが来ていたらしいね」


 レイモンドから話を聞いた父がそう言うと、

「アルフレッドは結局他国のお姫様と結婚しなかったのよね……」

 っと、母がつまらなそうな顔をした。


「世紀の大ロマンスの予感がしたのに……」


 まったくもう、お母様ったら。

 この世の終わりかというほど暗い顔をして、はぁっと大きなため息をつく母を見ていたら苦笑いしか出てこない。


「兄はイザベラ王女をお慕いしているんです」


「ごほっ……」


 レイモンドの突然の告白に、ぶどう酒を飲んでいた父がむせた。母はというと、一瞬固まったがすぐに顔を輝かす。


「まぁ~、まぁまぁまぁ」

 母はとても興奮している。


「ソフィアったら、なぜこんな面白いことを早く教えてくれなかったの? イザベラ王女はアルフレッドの事どう思ってるのかしら?」


 母は恐ろしいほどに生き生きしている。


「イザベラ王女も兄のことを好きだと思います。ただ……」


 レイモンドは、二人がお互いにその想いを伝えあっていない現状について説明した。


 先に動いたのは母だった。

「明日王妃様にお会いできるよう連絡を……」

 執事に指示を出しながらそわそわしている。


「予定の調整を……朝一で王宮に出向けるよう……」

 負けじと父も動き出す。


 あっけにとられてポカンとしている私にレイモンドが耳打ちした。

「ねっ、立派な奥の手だろ?」


 本当に……

 両親の行動力のすごさを目の当たりにして、苦笑いに似た笑みをレイモンドに返した。


「なんて素敵なのかしら。お互いに誰にも知らせることなく想いあっているなんて!!」

 母はいまだに興奮状態が続いている。


「イザベラ王女がアルフレッドのことをねぇ……」


 少し酔っているのか、父はいつもよりテンションが高い。

「国王の反応が楽しみだよ」

 はははっと豪快に笑っている。


 大丈夫なのかしら……


 二人の盛り上がり方に不安を感じてしまう。今更ながら、余計なことをしたのではないかという気持ちがふつふつとこみ上げてきた。


「とにかく二人が幸せになってくれたらいいんだけど……」


「あら、大丈夫よソフィア。恋物語はハッピーエンドと決まってるんだから」


 世の中には悲恋だってあると思うんだけど……


 それでも自信満々の母を見ていると、なんだか大丈夫そうな気がしてきた。


 翌日は一日中雨だった。

 レイモンドは朝から出かけて不在なので、一人で本を読みながら静かな夜を過ごしていた。


 何かあったのかしら?

 部屋の外がやけに騒がしい。


「様子を見てきますね」


 サラが出て行こうとしたその時、イザベラ王女がノックもなく突入してきた。


「どうされたんです? びしょ濡れじゃないですか!?」


 雨で濡れたのだろうか? ドレスは濡れて色が変わり、髪の毛からは雫がポツポツと垂れている。


「大変。風邪をひいてしまいますよ」


 慌ててサラが持って来たタオルで、イザベラの頭を優しく拭く。


「……ソフィア……」

 かすれた声でイザベラが私の名を呼んだ。


 泣いてるのだろうか?

 イザベラ王女の頬が濡れているのは雨なのか涙なのか見分けがつかない。


「ソフィア、どうしよう……?」


 不安そうな様子のイザベラ王女を抱きしめた。王女の体をはとても冷たい。


「大丈夫ですよ」


 落ちつかせるよう優しく背中を撫でる。静かな部屋に、イザベラ王女のしゃくりあげる音だけが聞こえていた。


 イザベラが泣き止むのを待ち、濡れた服を着替えさせる。


「ごめんね。急いで来たから濡れちゃった」


 っと言うイザベラは、馬車の用意を待てなくて馬で来たというから驚きだ。


「温まりますよ」


 サラがいれてくれたハーブティーを二人でゆっくりと飲む。


「何があったのかお聞きしてもいいですか?」


 アルフレッドの事だろうか?

 今朝早くから両親が王宮に行ってるので、そろそろ何か動きがあってもおかしくはない。だけどイザベラが泣いている理由が分からない。


「……今日父に呼ばれたの……」


 うん。


「それでアルフレッドと結婚したいかって聞かれて……」


 うん、うん。


「絶対嫌って答えたの」


 うん? 


「嫌なんですか?」

 驚いて、つい大きな声が出てしまった。


「アルフレッド様のことお好きなんですよね?」


 イザベラ王女の白い頬が真っ赤に染まった。返事がなくても、この顔を見れば分かる。これは絶対に好きな顔だ。


「お好きなのに、何で嫌なんて言ったんですか?」


「……何で分かったの?」

 えっ?


「私がアルフレッドのこと好きって、ソフィアはどうして分かったの?」


「それは……」

 私が分かったのではなく、レイモンドから聞いたのだと正直に話した。


「そっか……」

 イザベラがふふっと力なく笑った。


「うまく隠してたつもりなのに、あの男にはバレてたのね……」

 悔しいとイザベラは弱々しく呟いた。


「アルフレッド様と結婚したくないんですか?」


「……自分でも分からないのよ……」


 イザベラは自分の気持ちを確認するかのように、ゆっくりと言葉を選んでいく。


「確かにアルフレッドの事は……好きよ。結婚できたら嬉しいと思うの。でも……アルフレッドの気持ちは分からないから……結婚なんてできないわ」


 イザベラ王女の不安な気持ちが伝わってくる。彼女の踏み込めない気持ちは私にも理解できる。


 私なんて、レイモンドに愛情を示されても婚約に踏み切るのに時間がかかったのだ。気持ちを見せることのないアルフレッドとの婚約を、イザベラが躊躇うのも無理はない。


「アルフレッド様も、イザベラ王女のことお好きだと思いますよ」


「そんなの……分からないわよ」


 どうしたらいいのだろう?

 アルフレッドがイザベラ王女の事を好きなのは間違いないと思うんだけど……


 今私がどれだけ口で言っても無駄な気がする。イザベラの気持ちを進めさせる事ができるのは、きっとアルフレッドだけだ。


「では結論を出すのはまだ先にして、アルフレッド様と二人で過ごすことから始めてみてはいかがですか?」


 そうよ、とりあえずはデートしてから考えればいいのだ。


「二人でお話してみれば、何か変わるかもしれませんよ」


 トントントン


 来客の合図にサラがドアをあけると、レイモンドが入って来た。その後ろにはアルフレッドの姿も見える。


「先程結婚の話を聞きました」


 アルフレッドはイザベラ王女に向かって言うが、イザベラはアルフレッドの方を見ようともしない。


「イザベラ様は、私なんかでよろしいのですか?」


「えっ?」

 イザベラが驚いたような顔でアルフレッドを見た。


「……ア、アルフレッドこそどうなのよ……私と結婚する気あるの?」


 二人のやりとりを息をするのも忘れて見守る。


「私はイザベラ王女のことが好きですよ」


 照れくさそうに微笑みながらアルフレッドが言った。


「もうずっと昔から、私はあなたに恋をしてます」


 きゃーきゃーきゃー!!

 脳みそが興奮で煮えたぎっちゃいそう!!

 叫びたいのを我慢して、手で口を押さえた。


「……バカ……」

 イザベラが小さく呟く。頰に一筋の涙がキラリと光った。


 アルフレッドが跪き、イザベラ王女の手をとる。


「イザベラ様、私と結婚してくださいますか?」


「バカ……バカバカ……」


 イザベラがアルフレッドの首に腕をまわしてしがみつく。アルフレッドは子供のように泣きじゃくるイザベラを両手で受けとめた。


「本当にバカですね。あなたに想いを伝えるのに何年もかかってしまいました」


 良かった……


 レイモンドがそっと指で私の目頭をぬぐった。いつの間にか私の目にも涙が溢れていたようだ。


「二人にしてあげよう……」


 小さな声で囁いたレイモンドに微笑み、二人で静かに部屋を出た。

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